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2013年 04月 10日 ( 1 )

人間の価値は下がる一方だ (No.1666 13/04/10)

 本日駅前にあった本屋さんに行って愕然とした。少し前まで店舗を構えていた書店のシャッターが閉じていて「閉店のお知らせ」という紙が貼ってある。駅前の一等地で場所は最高なのにどうして店を閉じるのか。恐らくは火の車の赤字状態で店をやっていて、ついに支えられなくなったのだろう。
 日本では商売を辞めて店を閉めるシャッター商店街が以前から問題になっている。我が町の書店もついにそのお仲間入りをしたようである。きっとインターネットの普及で本を買うお客が減ったから続けられなくなったのだろう。iPadやスマホといったI・T機器が本の存在理由を狭め、書店の経営を圧迫したと想像できる。
 同様なことは本屋さんだけでない。商売を続けていくことのできない店や会社が増えていて、そこに働く人たちの生活も圧迫される一方である。こうしたことの原因はデフレだと今は言われている。しかし、本当にデフレだけなのだろうか。社会全体のパラダイムが変わりつつあるところに原因があり、このまま行くとやがて人間はたいへんな事態に直面すると小生は考えているのだ。
 「より便利で、より快適で、より安い」ことを合い言葉にした技術革新によって人間の価値をますます小さくする社会へパラダイムシフトとしているのだ。たとえば、以前コンピュータの登場で沢山の人が職を失ったことを書いた。便利な機械の導入が職場から余剰な人員をあぶり出していく。人ができる仕事を機械がやってくれるから、働く人の価値が相対的に下がってしまうのである。
 かっては長い経験で培われた匠の技が、I・T技術のコピー&ペーストで簡単な訓練をしただけの人でもできるようになった。匠は職場を追われ、アルバイトに毛が生えた程度の「新進技術者」が匠と同程度、いやそれ以上の物をあっと言う間に大量に生産してしまう時代になりつつあるのだ。
 少ない人員でもっと多くの製品ができる。そうなれば熟練した正社員などいらない。アルバイトでもできる職場が増え、求人需要は小さくなる一方である。「代わりはいくらでもいる」という悲しい状況が技術革新で生み出され、その傾向が時代とともに強まっているのである。
 こんなとき経営者は給料を上げることなどしないだろう。これからの労働市場で生き残る者は非常に少ない数の頭脳労働者、いわゆる真の意味でのホワイトカラーと、人間の手を借りなければできない肉体労働の分野で働くブルーカラーに大きく別れ、格差のギャップは埋めがたいほど深まるだろう。機械でできることが増え、匠のような優れた技を持つ人が関与する領域は少なくなる一方である。そうやって人間は自らの価値を下落させていくのである。
 同じ理由で個人商店の商売もパラダイムシフトの荒波を受けている。大量生産大量販売が郊外大規模スーパーを生み出し、駅前商店街の存在理由を消滅させた。最近はネット通販が新たに加わって、スーパーをもけちらしつつある。なぜなら、「より安く、より便利」こそ時代の合い言葉だからだ。
 人はこの世をより良く住みやすいものにしようと頑張ってきた。皮肉なことにそれで人の価値が益々下がってしまうことになるのである。だから、アベノミクスで株が上がったと喜ぶのは早い。ミニバブルで生じた資金は投機に回り、働く人の所には降りてこないと小生は悲観的な予測をしているのである。
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社会は激しく変化しているというのに、庭のシャクナゲが今年も変わらず花を咲かせた。シャクナゲの花言葉は「警戒」と「危険」である。華やかな花なのに予告する将来は、はなはだ暗い。 
by Weltgeist | 2013-04-10 23:56