2013年 04月 06日 ( 1 )

ウバタマムシの春 (No.1662 13/04/06)

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 我が町の「シュバルツバルト」をいつものように散歩していたら、道ばたに目立たない色をした虫がうずくまっていた。つまみ上げて見るとタマムシのような形をしている。しかし、色が全然違う。タマムシなら緑色の金属的な光沢がある背中に赤い縦じまが入った美しい甲虫だが、こいつは地味な茶色をしている。
 子供の頃死んで固くなったタマムシをタンスの中に入れておくと虫除けやお守りになると母親に教わって、夢中でタマムシ採りをやったことがある。しかし、こんな色のタマムシを採った記憶がない。最近の小生は蝶の名前は覚えてきているが、甲虫までは不勉強でなんという虫か分からないのだ。
 それでも、もしかしたらこれは派手な緑色をしたタマムシの雌かもしれないと思い、写真を撮ってから家の図鑑で調べた。するとタマムシ(正式にはヤマトタマムシ)とは別種でウバタマムシというのだそうだ。なんでも松の木を食い荒らす「害虫」だと書いてある。
 大切な松の幹に穴を開けてしまうからこいつは害虫だ、と人間の勝手な基準で分類されているようである。木材業者、林業関係者から見たらウバタマムシは憎き害虫なのだろう。きっと彼の仲間はこれまでも殺虫剤の一斉噴霧でジェノサイドの憂き目にあってきたはずだ。でも、ウバタマムシは松を食うことでしか自らが生き延びることができない。そんな運命として生態系の一翼に生まれてきているのに、それを人間の視点から「コイツはペケ」と判断する。人間とはなんと自分勝手な存在だろうか。
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 小生が四季を通じてしばしば写真を撮って、季節の移り変わりを見ている広場ではコナラの大木から黄緑色の新芽が吹き出していた。少し前まで枯れ草で覆われた地面にも新しい草が生え、のどかな春うららの景色に変身している。このあと天気は荒れ模様になると言っていたが、まだそんな兆候も見せず草原にはヤマトシジミが飛び、今年初のツマキチョウも飛んでいるのが見えた。まさに春爛漫の季節がやって来たのである。
 おそらくこの向こう側の森ではウバタマムシを初めとする様々な「害虫」どもがうごめき始めていていることだろう。でも、害虫というのはあくまでも人間の勝手な基準での分類にすぎない。新緑の芽を食う蛾や蝶の幼虫になんの罪もないし、彼らイモムシ、ケムシは鳥たちの食料源ともなって命をまっとうする。彼ら「害虫ども」がいなくなれば鳥たちも食べる物がなくなって餓死するしかないのである。
 こうして持ちつ持たれつの生態系の連鎖が成立していく。それぞれは小さくても互いに他につながっていて、その糸が一本でも切れると、連鎖の破綻は生態系全体に及ぶ。以前、「複雑系」の話の説明で言われたように、日本で一頭の蝶が羽ばたいたとき生じた風が巡り巡ってニューヨーク・セントラルパークの木々の葉を揺らすというように、物事は複雑にからみあっていて単純ではないのだ。松を食うから害虫と簡単に決めつけられる方はたまったものではないのである。
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by Weltgeist | 2013-04-06 22:03