2008年 03月 31日 ( 1 )

男は黙って食え(No57. 08/03/31)

 昔、記事のネタに困った新米新聞記者は動物園に行くのが定番だったらしい。最近のテレビでネタ切れなら、グルメ番組だろう。お手軽でお金はかからない。おいしそうに食べるタレントに、「うまい」と言わせればいいから、番組制作者も楽だし、うまくいけば取材先から宣伝になったバックマージンが入って取材費の抑制にもつながる。
 だが、こう沢山のグルメ番組があると見ている方はうんざりする。どんな食べ物が出ても、「うまい」という結論は不変であり、決して「まずい」と言えない。「うまいよーっ」としか言わされないタレントも気の毒だが、「いい加減にしろ」という気分になってしまう。安易な企画しか思いつかない無能なテレビ制作者は、視聴者が飽き飽きしていることをどう考えているのだろうか。
 昔、ある高級料亭で三島由紀夫が出されたステーキを一口食べただけで、何も言わず金だけ払って帰って行ったと、本で読んだことがある。三島のような人はいつもおいしい料理を食べ慣れているから、いくら高級料亭でも、彼の味覚を満足させるのはたいへんなのだろう。シェフは恥をかかされたわけだ。だが、粗食に慣れたノングルメの小生は、幸せなことに何を食べてもおいしいと感じる。
 別に贅沢なものでなくていい。牛丼なんか最高においしいと思う。恐らく三島が席を立ったステーキを小生が食べたら、うますぎて感激したことだろう。だが、そんなもの食べなくてもいい。食べ物の味など本当はどうでもいいことである。腹が減るから食べるのであって、満腹になるなら何でもいいと思う至って低レベルな人間なのだ。三島が「食べるために生きる人」とすれば、小生は「生きるために食べる人」なのである。
 ところで、世の中には味にうるさいグルメ評論家が沢山いる。どうもこういう方たちとは馬が合わない。特に男のグルメ評論家が料理の味から作り方まであれこれ言うのが好きでない。男が食べ物にこだわることを良しと思えないのである。家庭で料理を作るのは妻の仕事であり、外は専門料理人、プロの仕事である。どちらにしても門外漢の男が口を出すべきことでないのだ。
 「男は女房が作ったものを黙って食えばいい、つべこべ女々しいことを言わず味は料理人に任せろ」と思っているのである。こんなところがグルメ番組が嫌いな理由かもしれない
 我が家で料理は妻の仕事である。退職し終日家にいるから毎日三度の食事を彼女が作らなければならない。しかし、たいへんではあるが、台所に入って手伝うことはしない。唯一やるのは釣ってきた魚をさばく時だけである。それ以外は彼女に任せているから、手抜き料理が出たとしても彼女のたいへんさを考え、文句を言わないように努力している。(といっても、時々はこれを踏み外すこともあるが・・ !(⌒-⌒)!
 妻に食事を食作ってもらう代わりに、こちらの仕事も一つ増えた。洗った皿を拭くことで多少家事を助けているのだ。食洗機が嫌いな我が家では、食器は全て手洗いする。それも環境汚染を多少でもしないために洗剤も使わず、お湯で洗う。これを布巾で拭くのが小生の役割である。
 皿を拭くのを英語で何と言うかご存じだろうか。Wipe(ワイプ)である。ワイパーのワイプだ。我が家は食事が終わってしばらくすると、「ワイプお願いします」と「ワイフ」の声がする。最初は渋々と台所に行き、自分の義務と思ってやってきた。だが、今や我が家で小生は「ワイプマン」と呼ばれ、抵抗感もすっかり無くなって定着している。生きるために毎日食べさせてもらっているのだから、仕方がない。文句など言わずにワイプを繰り返しているのである。
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パリに行ったら必ず食べるようになったレオン定番のムール貝料理「ムール・アラ・クレーム」。バケツのようなデカイ鍋に山盛りにムール貝が入っていて、黒い入れ物に食べ終えた貝殻をどんどん入れていく。このときだけは「生きるために食べる」のではなく「食べるために生きている」ことを実感する。レオン本店はベルギーにあるそうだが、知っているのはパリのリパブリック広場前と、オペラ座近くにある支店だけ。探せば他にもまだ沢山あるだろう。値段もそれほど高くはない。
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by weltgeist | 2008-03-31 23:26