2008年 03月 20日 ( 1 )

大島のキンシチ(No.46 08/03/20)

 昨日まで伊豆大島の磯にメジナ釣りに行っていた。大島は関東地方の磯釣り場の中でもとくにメジナが濃い場所で、いつ行っても悪い思いをしたことのない期待の釣り場である。だが、今回はちょっと違った。全く釣れなかったのだ
 同行した某ゼネコンに勤めるTさんは磯釣りの大ベテラン。その彼をしても、全然魚の気配がないのだから釣れなくて当たり前かもしれない。水温が低すぎて魚が暖かい沖の深場に避難したのか、ハリに付けた餌がいつまでも残っていて食べられた形跡さえない。しかし、大島のメジナは昼間全然音沙汰がなくとも、夕方になると深場から出て来て、一瞬だけ餌を食べることが多い。暗くなるとアタリが出るから、夕方のチャンスを期待するのが島で釣るコツである。
 諦めてはいけない。釣れないから温泉でも行く方が賢明だ、などと考えると大島のメジナは釣れないのだ。この日我々は地元の人がジナエと呼ぶポイントで、釣れないまま夕方まで磯にへばりついていた。そして、期待の夕方がやって来ると、突然、今までの沈黙が嘘のように餌が無くなりだした。ウキに明確なアタリは出ないが、何か魚が餌をつついているのは間違いない。海面に入る光が少なくなり、魚の警戒心がゆるんで深場から出てきたのだ。チャンス到来である。
 その時、いきなり竿がひったくられるようなアタリがきた。竿を立てリールを巻こうとするが巻けない。それどころか、逆に糸がどんどん引き出されていく。普通、大島で釣れるメジナは大きくても40㎝を少し越える程度だから、リールが巻けないようなことはない。だが、ハリに掛かっている奴はとてつもない力で暴れ回る。40㎝どころか50、いや60㎝はある大物かもしれない。
 60㎝のメジナを釣るのは久しぶりだ。逃がしてなるものかと、必死に竿とリールを操作する。しかし、そうしながらも頭の端に「もしかしたら、この暴れようはメジナと違う、外道のイスズミかサンノジか」という思いが過ぎる。イスズミやサンノジの大きいのは60㎝を越えるが、食べて美味しくないから誰も相手にしない。とくにイスズミはひどい臭いがする猫マタギの魚である。
 頼む、どうかメジナであってくれと願いつつ、長いやり取りの末に薄暗い水面に上がってきた魚は、巨大なメジナのようだ。ちょっと見ただけで60㎝も越えた途方もない大型に見えた。これを慎重にタマアミですくい取る。やったーっ、と叫びながらすぐに獲物の確認に行く。もしメジナなら小生にも記録物のサイズだからだ。
 しかし、魚をよく見ると何か変だ。普通のメジナではない。エラブタが黒くオナガメジナに似ているが、頭はイスズミのように丸い。だが、普通のイスズミとも体の模様が違う。今まで見たことのない魚である。磯の魚に詳しいTさんに聞いてみるが、「イスズミに似ているがちょっと違うな」と言うだけではっきりしない。手にとって臭いを嗅いでもイスズミ独特のいやな臭いがないから別な魚のようだ。
 伊豆七島ではイスズミのことをササヨと言うが、大島には二種類のササヨ(イスズミ)がいると聞いたことがある。普通のイスズミ以外にキンシチと呼ぶ少し違ったイスズミがいて、こちらが本物のササヨでおいしい、と言うのだ。しかし、同じイスズミでおいしい魚とまずい魚がいる、なんてことは信じられないから聞き流していた。だが、小生が釣ったこの魚、じっくり見てもイスズミとは色が違うし、独特の悪臭もない。かといってメジナでもない。もしこれが噂のキンシチなら、自分自身でもその味の真偽を試してみたい。そう思ってこの魚はリリースしないでキープした。
 結局、今回大島での獲物は、このキンシチを除けばブダイや小さなメジナだけという貧果で終わってしまった。そして、先ほど、期待のキンシチを刺身と煮付けで試食してみた。結果は・・・。
 昔、八丈島で食べさせられたイスズミとは全く違った別な魚の味で、たいへんおいしかった。臭みもなく、刺身もいいが、特に煮付けは抜群な味だった。これなら大島の人が冬の味覚として珍重するのも分かる気がする。あの強烈な引きと、食味なら、今度はキンシチを狙って島に行ってもいいほどである。この後、魚類図鑑を調べたら、キンシチは、ノトイスズミという標準和名を持ったイスズミとは別な種であることが分かった。磯釣りファンの方々、大島でイスズミを釣ったら、よく確認し、キンシチならぜひその味を賞味することをお勧めする。
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初日に釣ったジナエのポイント。先端部の右と左の両方で竿を出せる。小生がキンシチを釣ったのは右側。同行したTさんも少し手前でキンシチを上げている。
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いくら頑張っても全然アタリがなく、半分諦めかけていたときに、突然、二人のダイバーが我々が釣りをしている前にやってきて、素潜り漁を始めた。何か一言でも声を掛けてくれれば許せる気持ちになるが、何の挨拶もなく、我々のポイントの前を我が物顔に泳ぎ回り、沢山のサザエ、トコブシを取って帰って行った。今回釣れなかったのは彼らのせいもあるかもしれない。
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これがイスズミに似たキンシチ。3㎏以上はある大型で、引きがすごかった。エラブタにオナガメジナと同じような黒い線があり、体色もメジナに似ているが、顔がイスズミ風。だが、食味はイスズミとは比較にならない旨さがある。特に煮付けはメジナよりうまいかもしれない。もちろん刺身もおいしかった。
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by weltgeist | 2008-03-20 20:12