2008年 03月 13日 ( 1 )

漁師シモンの大漁(No41. 08/03/13)

 パリに行かれた方なら誰もが絶対外さない超有名観光スポット・ノートルダム大聖堂。この中に釣り好きの小生にはとても興味深い彫刻がある。ファサードと呼ばれる西正面の入り口から一番奥の祭壇がある後陣の部分に行くと、丸い祭壇の周囲、内陣裏の周歩廊に半分埃を被った一連の彫刻がそれだ。これをパリに行かれた皆さんはしっかりご覧になってきただろうか。新約聖書でイエス・キリストが生まれる時から受難までを連続した物語風に表現した比較的小さな彫刻だから、注意しないと気が付かないかもしれない。壮大なカテドラルや、窓にあるステンドグラスに目を奪われ、意外に注意している人は少ないが、良く見るとすごくドラマティックな場面が続く彫刻である。
 ヨーロッパの教会によくある彫刻、ステンドグラスはキリスト教の教えを人々に教えるために作られたと言われている。中世時代、文字を読める人は限られていて、読めない人にもキリスト教の教えを伝えるために様々な方法が考えられた。ノートルダム大聖堂の彫刻も新約聖書のイエス・キリストの生涯をその誕生から受難まで順序だてて置かれたものである。これによって信者はキリストの教えを理解したのだという。
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ヨーロッパの聖堂は普通、十字架の形をしていて、最も重要な部分である祭壇のある後陣と呼ばれる場所が聖地・エルサレムの方向(東)を向くように作られている。だから、ヨーロッパの街で方位が分からなくなったら、聖堂の向きを見ればいい。入り口である正面(ファサードと言う)はその反対方向、つまり西にあり、中央より少し祭壇寄りに南北の広い場所が十字状にクロスする。この部分を交差廊(トランセプト)と言う。しかし、残念ながらノートルダム大聖堂はこの例から少し外れて南東方向に後陣がある。これは大聖堂がセーヌ川の中洲にあるシテ島という特殊な土地にあることに由来するのかもしれない。川の中州は洪水の度に州の形が変わる。安全な場所を選ぶために、ある程度の方向は犠牲にしたのかもしれない。この写真では正面が後陣、途中にちょっとへこみのように見える所が交差廊。イエスの生涯の彫刻は左右の交差廊から後陣の横に回り込んだ所に、後陣を半円形に取り囲むようにある。(大聖堂の外観についてはNo33. 3月5日記述の写真を参照してください)
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写真左はイエスを身ごもったマリアがヨハネの母親エリザベスを訪問するところ。右はベツレヘムの馬小屋でマリアがイエスを産んだところ。右上の揺りかごに幼子イエスが入れられ、それを馬と牛が見ている。イエス・キリストが生まれたのは馬小屋の中とされるが、ルネッサンスの画家、例えばベノッツオ・ゴッツオリとかロベール・カンパンは牛小屋を書いているから、要するに馬、牛のいた粗末な所で生まれたということだろう。神の子であるイエス・キリストが豪華な宮殿のような場所でなく、粗末な馬小屋で生まれた、そのことにキリスト教における神の概念がある。神は人間と同じ姿をしたイエス・キリストを送り出したのだ。
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これはガリラヤ湖でイエスが飢えた5千人の人に魚を食べさせた奇跡の話を表している。
イエスは「シモンに、沖へこぎ出して網を降ろして漁をして見なさい、と言われた。シモンは答えて、先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も獲れませんでした。しかし、お言葉ですから網をおろしてみましょう。そして、そのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れが入って、網が破れそうになった。そこでもう一艘の船にいた仲間に、加勢に来るよう合図したので、彼らがきて魚を両方の船いっぱいに入れた。そのため、船は沈みそうになった。」(ルカ福音書5-4~7)
キリストの弟子、シモン・ペテロは漁師である。この彫刻で網が破れそうなくらいの大漁にシモンたちの喜ぶ顔を見て小生もすごくにこやかな気持ちになった。使徒たちの顔がまさに大漁を喜ぶ我ら釣り人と同じ顔をしていたからだ。
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最後の晩餐の場面。ここでは12使徒がそれぞれ頭の後ろに光る光背を持っているが、一人中央で下を向いている男にこれがない。彼がイエスを裏切ったユダなのだろう。注意して見るとユダの後ろにいる人物の光背だけ十字架がある。これで彼がイエス・キリストだと分かる。
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ノートルダム大聖堂西広場はいつも観光客で溢れている。しかし、ここにいるのは観光客だけではない。ハトとスズメが沢山いて、鳥が人間に非常に慣れている。スズメが人間の手から餌をとっていくのだ。男の人が手の上にパンくずみたいな物を乗せたら、たちまちスズメが来て食べていた。
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by weltgeist | 2008-03-13 23:06