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我が胃潰瘍闘病日記、最終回。ワーファリン再開と退院 (No.418 09/05/29)

5月15日、入院14日目、三回目の胃カメラ
 胃潰瘍の原因というのは実ははっきりしないことが多いらしい。ストレスが原因とかピロリ菌とか言われているが、それ以外にも様々なことで簡単、かつスピーディに発症するらしい。たった一日で潰瘍が出来、それがすぐ治る人もいれば悪化してガンになる人もいる。
 小生の心臓には金属の弁が取り付けられている。いわゆる人工弁置換手術をしているので、人工弁に血栓が付かないよう、血液をサラサラにするワーファリンという薬を毎日飲んでいる。ところがこれで血液がサラサラになるから血栓は出来にくい反面、一度出血すると血が止まりにくくなる。血が固まりにくいのだ。だから、胃の内部で出血してもそれが簡単には止まらず、傷口は塞がらない。そのため、今回のような内出血が生じるとやっかいなことになるのである。テレビで時々「あなたの血液はドロドロだ。サラサラにせよ」という趣旨の放送をやっているが、血液はドロドロでいいのだ。一定以上にサラサラにする必要などないのである。
 最初の胃カメラで内出血を確認して以来、実はワーファリンの服用はK先生に中止させられている。血栓が出来る危険性は高くても、まずは血液を凝固しやすいようにして出血を止めなければならないからだ。二回目の胃カメラで内出血の箇所が増えていたのも、服用を止めたとはいえまだワーファリンの影響が残っていたからだろう。しかし、すでに15日も経過すれば血液のサラサラ度は普通の人と同じ程度になっているはずだ。それゆえ、内出血もそろそろ収まってもいいのではないかと思っていたのである。
 そんな期待を込めて、今朝も喉がグエーッとなる吐き気に堪えて、三度目の胃カメラを飲んだ。すると、何と胃の中はきれいになっている。何処にも血が滲んでいるような所は見えないのだ。代わりに、傷口を止めたクリップがまるでダーツの矢のようにあちらこちらに刺さっているのが見えた。
 「やったじゃないか」小生、胃カメラのモニター画面を見ながら心の中でそう叫んでいた。とうとう胃の中がきれいになったのだ。待ち焦がれた瞬間である。K先生も「もう大丈夫だ。傷も治っている」と言って喜んでくれた。だが、そうなると問題はワーファリンをいつ再開するかである。飲まなければ多分潰瘍の再発はないだろう。しかし、飲まないと心臓が危ない。胃潰瘍はのんびり時間を掛ければ治るかもしれないが、心臓は発症すれば命に関わるからだ。
 
5月16日、入院15日目
 胃の内出血が止まったというのにまだ普通のご飯は食べられない。ただし、今日から「五分粥」にレベルアップされる。五分というから、かなり普通のご飯に近いのかと思ったら、全然。お粥より少し水分が少ないだけの違いでしかない。ずっと食事制限をされていると、意地汚い話だが、とにかく食べ物のことがすぐに頭に浮かんできてしまう。

5月17日、入院16日目
 胃カメラの成績が良かったからだろうか。食事のレベルアップの速度が速くなった。今日から「全粥」である。といっても、それは五分粥より少し水分が少なくなっただけで、味についてはお粥とほとんど変わらない。ウーン、早く白いご飯にヒレカツでも食べたい。そんな思いをずっと抱きながら過ごす。
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5月18日、入院17日目、初めての外出とワーファリン再開
 心臓の弁置換手術を受けて以来、小生は年5~6回程度S心臓病院に行って診察を受けると共に、2ヶ月分強のワーファリンを処方してもらっている。今日はその定期検診の日であるから外出は出来る。だがT胃腸病院からS心臓病院に渡り歩くだけで、S病院の診察が終わったら直ちにT胃腸病院に戻らなければならないのだ。K先生は小生のワーファリン服用は出来たら中断したいようで、これまでの経過を書いたデータを封筒に入れて、S病院の担当医の意見を聞きたいと言われる。自分としても出来ればワーファリンは止めたい。しかし、本当に止めていいのかは、自分でも分からない。S病院の担当医がどう答えるか自分も知りたいのだ。
 T胃腸病院のベッドは、何か刑務所の独房(入ったことは無論ないが・・)のようで、息が詰まる感じだった。久しぶりに出た外の空気は自由そのもので、「アッ、世の中って、こんなにいいところだったんだ」という解放感に包まれる。
 だが、S病院の担当医の話は厳しいものだった。すでに17日間ワーファリンを飲んでいないと言うと、顔を曇らせて「それはすぐに再開した方がいい。脳梗塞にでもなったら半身不随になっちゃうよ」と言うのだ。結局、担当医はそれまで服用していた量を減らし、少し効果を薄めた薬量を処方し、出来れば今日から飲んで欲しいと言われた。夕方から心臓担当医の指示に従って、ワーファリンを3錠飲んだ。これがどのように胃に影響してくるのか、少し心配だ。

5月19日、入院18日目
 午後の回診は院長回診で、彼は昨日のS病院でのワーファリンの問題がどうなったかを聞いてきた。小生は「たいへん危険だからワーファリンを止めることはできない」と言った心臓担当医の言葉をそのまま伝える。すると、ヒゲを生やしたちょっと怖い感じの院長が「それだともう少し経過を見る必要がありますね。また出血が始まったりすると困るから」と言って、まだまだ自分が保護観察下に置かれていることを言ってきた。K先生も困ったような顔をしている。しかし、本当に困ったのは小生の方なのだが・・。

5月22日、入院21日目
 すでに食事は20日の夕食から通常のご飯に変わっている。点滴も一切なく、もうベッドに寝ていてもやることがない。昼にK先生が回診に来たので「まだ入院している必要があるのですか。今は飲み薬だけ飲んでいる状態だが、これだと自宅療養でも出来るんじゃないですか」と、思いきって聞いてみた。
 「退院したいですか」人のいいK先生は気の毒そうな顔をして小生を見つめる。「しかし、退院許可の権限は院長先生にあるんです。来週の火曜日(26日)に院長が来るからそこで判断しましょう」と言う。
 「ということは、少なくとも退院は26日以降ですね。まだ4日もある。それまでここでやることもなくジッとしているのはあまり有意義とは思えませんが」と小生が答えるとK先生はしばらく考えてから、「分かりました。それでは私の判断で退院させます。明後日24日に退院を許可します」と言ってくれた。
 物事というものは言ってみるものだ。かくして小生の退院日がついに決まったのだ。

5月24日、入院23日目、目出度く退院
 今日は病院から開放される日。昨晩は嬉しくて良く眠れなかった。午前9時半、すでに3人部屋で最古参となった小生、ようやくにして我が家に帰ることが出来たのだった。家に帰って最初にやったのはまずコンピュータを起動させ、メールとブログをチェックすることだった。アウトルックを開くとおびただしい数のメールが来ている。その数、400通を超えている。それらに返事も書かなければいけないが、ブログに無事退院した一報を書くのが先である。簡単な報告を書いてから、お風呂にゆっくり入る。自分としては退院したら5月5日に食い損なった大トロの寿司を食べることと決めていたが、トロの方は「消化が悪いから、まだ駄目」という妻の厳しい注意で諦めた。しかし、お風呂に入って23日間の長きに渡った入院生活のアカを流せた気分は最高だった。

胃潰瘍闘病記は今回が最終です。
by weltgeist | 2009-05-29 23:56


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