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韓国ミネルバ事件の困った影響 (No.342 09/02/15)

 小生のブログのタイトル「ミネルバのフクロウ」は、ギリシャ、ローマ神話で知恵の神とされたミネルバから取ったものである。ギリシャのパルテノン神殿に手下のフクロウと住み、夕方になるとそのフクロウをアテネの町に飛ばして情報を集めては、自分の知恵をふくらませていった伝説の女神だ。以前、ミネルバについては詳しく書いたことがあるが、今回はそのミネルバが困ったことで名前を使われたらしい。
 昨年の夏頃から韓国で「ミネルバ」というハンドルネームを使って韓国第二の巨大ポータルサイトに世界経済の先行きについて書き込みをした男がいる。彼は「韓国の通貨ウオンは1ドル=1400ウオン(約90円)に急落する」「リーマン・ブラザースは破綻する」(2月10日、朝日新聞朝刊)と言った予言を書き込んだが、その内容がことごとく当たったため、ネット社会は驚嘆し、「経済大統領」と呼ばれるまでの影響力を持つ人物となったのである。
 ミネルバの確度の高い予想にネットだけでなく、マスコミも注目。一日「10万のページビュー、千件以上の書き込みがあるほど彼の投稿文は絶大な人気を誇る」(アン・ヨンヒの韓国レポート)までになり、国民の間では「ミネルバを捜して経済閣僚に起用しよう」などと言う意見も出たらしい。当然ながら皆はミネルバの正体を追い始めた。そして誰もが、彼は優秀な経済学者であろうと思いこんだのだ。
 ところころが、ミネルバは自分の力を過信したのだろうか。彼が「政府が主要な金融機関や企業にドル買いを禁じる公文を送った」と書いたことで、「ネットによる虚偽事実に当たる」として逮捕されてしまったのだ。そして逮捕してみたら、ミネルバの経歴はデタラメで、しがない引きこもり男が自宅のパソコンからシコシコ書いていたことが判明したのである。
 その少し前までマスコミは驚くべき正確さで韓国経済の先行きを予言するミネルバを賞賛し「インターネット経済大統領」と持ち上げていた。マスコミのあおりで、彼の知名度はさらに高められ、予言者のような扱いを受けていたのである。それが、逮捕され、経済学を専門に学んだ経験もない「短大卒の引きこもり男」と分かったとたんに、今度は掌を返したように彼を攻撃をし始めた。自分のあおり行為は触れずに「正義の執行者」として、ミネルバをボロクソに言い始めたのである。
 小生がここから連想するのはオウム真理教松本サリン事件の被害者河野義行さんの件だ。警察からマスコミまで全員で河野義行さんを犯人扱いし、その後真犯人が麻原であることが分かり、皆が沈黙した。この忌まわしい誤解の原因は不確かなことをさも真実のように信じて、先走ってしまったことだ。
 ネットの書き込みは、誰もが自由に書くことが出来る。その中には玉もあれば石もある。真実もあれば、人を陥れるためのひどい嘘の書き込みさえまかり通る何でもOKの世界である。それも書き手の姿を一切明らかにすること無しに行われる。人はそれに簡単に騙されるのだ。
 今回の韓国での逮捕は、こうした事が過激化することへの政府の警告でもあろうが、それが民主主義への干渉として反発をも招いている。干渉は自由への危険な侵害ともなりうるからだ。しかし、匿名を隠れ蓑に、事実と異なる嘘や悪意に満ちた書き込みをすることまで許すべきでないだろう。
 小生のブログのようなものも含めて、ネットに書き込みをしている人間は、その記事に対する責任だけは持たねばならない。正しいこと、真実に裏付けられたことを書くなら、それを政府が干渉するなどとんでもないことだが、嘘の情報によって他の人が間違った道へ進む恐れのある書き込みは取り締まられて当然ではないかと思うのだ。
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by weltgeist | 2009-02-15 23:11


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