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サクラマスへの挑戦 (No.330 09/02/03)

 そろそろ渓流釣りが解禁になる。渓流釣りは一般的に3月1日が解禁となるところが多いが、すでに岐阜県の一部は2月1日から解禁になっているし、長野県の一部も2月16日が解禁となる。寝ても覚めても「釣りだ釣りだ」と思っていた頃は、2月1日の解禁に合わせて岐阜県の長良川まで毎年のように出かけていた。しかし。最近はさすがに寒さが辛くて岐阜県の2月解禁はパス。それに合わせるように3月1日の関東周辺解禁日も、この数年ご無沙汰するようになってきている。
 とくに今年の3月1日は毎月一回ずつやっているH先生主催の「新渡戸稲造の武士道を読む会」と同じ日に重なるから、多分渓流解禁の方はパスすることになるだろう。昔なら、槍が降っても3月1日だけは絶対渓流釣りに行っていたのに、本当にガッツが無くなってしまった感じである。
 なぜガッツが無くなったかと言うと、以前にも書いたが、最近の渓流釣りは放流魚の釣りだから面白くなくなってきているからだ。人工的に育てられた養殖魚を解禁の少し前に放流して釣らせるなんて、マス釣り場と違わない。川で釣れても数日前まで養殖用の池で泳いでいた魚と思うと、精神的に燃えるものを感じなくなってしまうのだ。それに2月、3月ではまだ水温が冷たすぎて、瀬に出たすばしっこいヤマメ釣りの雰囲気とはほど遠い。
 むしろ、この時期ならもっと面白い魚を狙うことが出来る。それはサクラマスだ。ヤマメの稚魚が海に降りて巨大なサクラマスに成長して故郷に戻って来るのが、丁度今の時期なのだ。彼らが海から川に登ってくる時期が2月にスタートし、6月頃までで続くのである。
 このサクラマスという魚、不思議なことに川に入るとエサを食べなくなることだ。それも2月から10月の産卵期までずっと絶食を続けるのである。食い意地の張った小生など一食抜かしただけでも腹が減って動けなくなるというのに、彼らは半年以上何も食べないで過ごすのである。川の中にサクラマスが泳いでいるのを見て、その鼻ツラにエサを流しても、連中は絶対それを食べない。興味さえ示さないから釣りで狙うのはたいへん難しいのである。
 ただし、海から遡上した直後はまだエサを取っていた習性が残っているのか、時々エサを食べることがある。それがちょうど今頃で、この時だけ釣りで狙うことができるのだ。もちろん、エサを食べるといってもそれは非常にまれなことで、普通は川に入る直前から口を使わなくなるからこれを釣り上げるのは容易ではない。しかし、容易でないからこそ釣り人はチャレンジするのである。誰にも簡単に釣れる魚など釣っても面白くもないだろう。簡単に釣れないから釣り上げた時の喜びも大きいのだ。
 と言っても、それは本当に釣るのが難しい魚である。小生の例で言えば、サクラマスに挑戦して最初の1尾を釣るまで十数日掛かっている。秋田県や山形県の川をほぼ毎週通い詰めたが、毎回カスリもしない。それでいて、魚は時々水面にジャンプして、小生に「どうだ、悔しかったら釣ってみろ」という具合に挑発してくる。目の前のポイントにサクラマスがいることは間違いないのに、どん手練手管を使っても釣り上げることが出来ないのだ。頭にきた小生、最後は釣れるまで帰らないと決めて、数日間現場に居座ってようやく釣り上げることが出来た。そのくらい釣れない魚なのだ。
 ところが、分からないのは、そんな難しい魚が時々爆発したように釣れ盛ることがあるのだ。以前、秋田県の米代川で連日坊主を繰り返していたのが、ある日、不意に連続したアタリがあり、午前中だけで3尾のサクラマスを釣ったことがある。
 この日は5回フッキングさせ、2尾は逃げられての3尾だから、ほとんど爆釣に近い捕食率である。だが、何故この日に限って彼らが急に口を使ってエサを食べ出したのか、原因は分からない。普段は気まぐれで、決して釣り人に微笑みをくれる魚ではないのが、時には不可解な行動をするのだ。しかし、それだからこそ我々は釣れなくて辛い釣りであるサクラマスを追い続けるのだ。そうして、ある日自分が途方もなく難しい魚を狙って、とんでもない底なし沼にはまっていることに気づく。しかし、熱に浮かされた釣り人は、サクラマスを釣り上げるまで、絶対にそこから退かないのである。
サクラマスへの挑戦 (No.330 09/02/03)_d0151247_02384.jpg

by weltgeist | 2009-02-03 23:58


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