寒がりになったと書いたばかりの小生、昨日は雪が降るとの予報に「モモヒキ」をはいて都内に行った。モモヒキは爺さん臭いことの代名詞で、「俺は死んでもはかないぞ」と思っていたが、午後から雪になるというから背に腹は替えられない。他の人に見られたら嫌だなと思いつつも、その支度をしていたら、なんと一番見られたくない妻に見られてしまった。彼女はニヤリとしている。ウーン、まずいところを見られたものだ。
そう言えば、昔オヤジがラクダの繊維で出来たモモヒキをはいていたが、年代的には小生よりもっと若い、多分50代の頃ではなかったかと思う。その意味では66歳、よくぞここまでモモヒキを拒否して来れたと自己満足はしている。50代で白旗を揚げたオヤジに比べれば上出来ではないか。 だが、雪の寒さは嫌だ。だから昨日は冬山でも平気なくらい厚着の防寒対策をして出かけたのだが、それが裏目に出たのである。最初に行った国会図書館で汗だくになってしまったのだ。国会図書館は地下鉄丸ノ内線、国会議事堂前駅出口からわずかワンブロック歩くだけであるが、このワンブロックは国会議事堂である。図書館は地下鉄出口をはさんだ国会議事堂の丁度反対側にあり、ワンブロックの長さは1㎞近くあるのである。ここをモモヒキに厚手のオーバーとマフラーの完全武装で歩いたため、冬というのに身体が火照り、国会図書館館内に入ったとたんに暖房で汗が吹き出したのである。 国会図書館は「無い本は無い」と言われるくらい蔵書は充実していて、小生のようなひねくれ者が探す特殊な本を読むには最高の図書館である。ここで、ひとしきり大汗をかきながら、目的のロシアの最新イワナ研究論文を複写しまくる。そして、その後は珍しい蝶の資料も漁る。しかし、この夏に計画しているパミール高原の蝶を扱う「パルナシウス大図鑑」は、高価な本だけに国会図書館にも無いのだ。前回行ったとき、都内の図書館では広尾の東京都立図書館だけが所蔵していることは調べてある。今日はそれも読んでおきたいので図書館は二館をハシゴである。 午後2時頃、再び国会議事堂前駅まで歩き、霞ヶ関で日比谷線に乗り換えて広尾まで行き、そこから有栖川公園の中を歩く。都立図書館は公園の中にあり、広尾駅から徒歩8分というが、その道はゆるい登り道なので、またまた身体が暑くなり、図書館に着いた時は再び汗が止まらなくなる。必要以上の厚着をしているから少しでも歩くと暑くて汗が出るのだ。 図書館の中ではセーターも脱ぎ、シャツの袖をまくって半袖状態にしても汗が止まらず、ハンカチで顔を拭う小生を他の人たちはきっと奇異な目で見たことだろう。都立図書館は国会図書館と違って、読みたい本を自分で書棚から取りだして見る事が出来る。だから、仮にパミールの蝶に関する知らない資料があっても、同じ棚にあるから気づくことが出来る。そのため、お目当ての「パルナシウス大図鑑」以外に、目に付く蝶の本を見るのに夢中になって時間が過ぎるのを忘れてしまっていた。だが、そのうちに急にこれからの予定時間に気づいたのである。 そうだ、今日はこの後、まだ某国大使館と、ある外国地域の地形図を買い、その後午後7時から銀座ニコンサロンで昆虫写真家・海野和男氏の講演「蝶の道」を聞く予定であることを思い出したのである。しかし、すでに時刻は5時半になっている。ヤバイ。もう大使館はクローズしている時間だからこれは間に合わない。地図も専門的なものだから神保町の専門店に行かなければならないが、それに行けば講演にも間に合わないかもしれない。 小生、急いで図書館を飛び出し、広尾駅の地下鉄路線図で神保町に行くのにどれが一番早いか素早く見て、淡路町から歩くルートを撰んだ。これなら乗り換えも一度だけだから7時までに銀座に戻れると読んだのだ。だが、これがまた大失敗で、駅から地図屋までえらい距離だったのである。その頃から雨は本降りとなるが、時間を焦る小生はほとんど小走りに地図屋まで行き、急いで地形図を買うと、必死になって銀座に戻ったのだ。 銀座ニコンサロンに着いたのは7時を5分ほど過ぎていて、講演はすでに始まっていた。薄暗い会場の最後列に座り、海野氏の話を聞こうとするが、それまで走り続けていたから身体が猛烈に火照っていて、また汗が噴き出して、今度はなかなか止まらない。会場は満員で人息れがあるから余計汗が引かないのだろう。小生は、海野氏がパワーポイントを使って講演しているのを聞くより、自らの汗を拭く方が忙しいまま、講演を聞き終えたのだった。 結局、今日の自分は何んだったのだろうか。恥ずかしさを我慢してモモヒキをわざわざはいてきたのに、予報の雪は降らず、気温も高めだった。状況を読めないKYの自分に無性に腹が立ったが後の祭りである。忌々しいモモヒキを呪った一日はこうして過ぎていったのだった。
by weltgeist
| 2009-01-10 22:40
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