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百年に一度の経済的危機で来年はとんでもない年になるか (No.279 08/12/13)

 昨日はドル円が、88円まで高騰した。ビッグスリー救済法案を巡る米議会の協議が決裂したことに対する警戒感だろうが、ホワイトハウスが金融安定化法に基づく支援の検討を表明したことですぐ91円まで戻った。一瞬の間の円乱高下である。しかし、一日で3円以上も為替が変動するようでは、貿易の仕事をしている人たちは気が気ではないだろう。世界のトヨタでさえ、想定為替レートは100円で、1円円高になるだけで400億円の為替損が出るという。年度末までの3ヶ月間、もし90円なら営業利益が1000億円減少することになる。これはとんでもないことである。
 何度も言うように自分は経済の専門家でないから詳しいことは分からない。しかし、今回の経済危機が百年に一度の規模だというから、これは相当心しておかないとヤバそうだ。かっての世界大恐慌は1929年10月24日、GMの株価が80セント下落したたことでスタートした。今もそのGMがまさに破産寸前の所まできているという似た状態にある。だが、大恐慌は30年代前半で吹き荒れたものである。百年となるとこれ以上のものを想定しなければならない気がする。今回のビッグスリーの危機などまだ入り口に過ぎず、もっともっと強烈なことがやってくるのではないかという不安な予感がするのだ。
 昔「日本沈没」という映画があり大反響となった。たしか、地殻変動で日本が海の底に沈んでしまう話だったと思うが、それに匹敵するくらいの激震が日本を襲ってくるかもしれない。日本は幸いと言うか、不幸というか、ドルに対して唯一高くなっている通貨のため、経済危機と言ってもまだ派遣労働者や来年度新規採用社員のカットくらいで静かである。派遣中途打ち切りで職を失った人たちを連日テレビが放送していても、何故か人ごとのように思っている人が大半だ。「首を斬られた人は気の毒だな。でも、ウチは大丈夫だ」と思っている節がある。
 しかし、百年に一度という形容詞を当てはめた場合、この後、想像を絶する大波が日本列島を襲う可能性はたいへん高いと言わざるを得ない。ウイッキペディアで調べたところ米国の大恐慌は「1932年後半から1933年春にかけてが恐慌のピークだったようで恐慌発生直前と比べて株価は80%以上下落し、工業生産は平均で1/3以上低落、1200万人に達する失業者を生み出し、失業率は25%に達した。閉鎖された銀行は1万行に及び、1933年2月にはとうとう全銀行が業務を停止、社会主義革命の発生すら懸念された」とある。
 1929年末からスタートした恐慌は、ずっと経済を下落させ続け、実に4年後にようやく底に達したのである。これが百年に一度(何度も言うようでちょっとしつっこいが)とすれば、底に達するにはもっと長期で大規模な崩落のようなものが起こりうるのではないか。自分たちの会社はもとより、銀行も全て破産状態に陥る。町には住む家もない失業者が群れ、人々の生活は疲弊の極に達する状況が起こりうるかもしれないのだ。
 無能な大統領としてその名を残した当時の米国大統領、フーバーは「株価暴落は経済の尻尾であり、ファンダメンタルズが健全で生産活動がしっかり行われている(ので大丈夫)」という馬鹿な発言で傷を深めた。今年の10月に小生がアリゾナのフーバーダムを訪れたまさにその日に、ウオール街の株価が下落し、アメリカのテレビは「マネー・メルトダウン」「エコノミー・クライシス」と騒がれていた。こんな偶然は自分には何かの因縁のように思えたのだった。
 大恐慌はルーズヴェルトのニューディール政策でようやく息を盛り返したが、実際にはその効果はたいしたことはなく、元に戻るのに10年近く掛かっている。フーバーはフーバーダムを造ったことで、大恐慌の危機を救った人と誤解されているようだが、実際の彼は恐慌を招いた方で、救済に奔走したのは後のルーズベルトである。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:US_Farm_Prices_(1928-1935).JPG
 要するに過去の大恐慌の例からみても、今年より来年、来年より再来年あたりまで経済は「メルトダウン」を続けていくのではないかと、小生は素人ながらに恐れている。もちろん現在の経済政策は世界協調が進み、大恐慌と同じ伝は踏まないとは思うが、それでも衝撃の大きさは想像を絶するかもしれないのだ。それに備える心の準備くらいはしておいた方がいいだろう。
 アジアの貧しい国を訪ねると、町中に昼間から所在なげな人が沢山いるのがどこでも目撃される。仕事のない失業者の群れである。こうした姿が日本でも普通に見られるようになるかもしれない。小生の持論だが、経済がグローバル化される以上、貧しい国の労働者の状況も日本に取り入れられ、平準化していく。安い労働力の導入で日本の労働者の賃金は下がり続け、その上に失業まで他国並みに平準化される恐れがあるのだ。恐ろしい未来がヒタヒタと足音を立てて忍び寄っている、そんな気がする。
百年に一度の経済的危機で来年はとんでもない年になるか (No.279 08/12/13)_d0151247_22162517.jpg
時の大統領フーバーの名前をとったフーバーダム。(下の写真)大恐慌さなかの1931年に着工。計画は大恐慌以前に作られたものだが、結果として大量の失業者救済の役目を果たし、36年に完成した。高さ221m、長さ379mのアーチ式ダムで、貯水量は約400億トン。日本最大の湖である琵琶湖の貯水量280億トンをはるかに越す巨大なもので、ダム湖はミード湖と呼ばれる。(上の写真)小生は82年にこの湖でストライパーと言う淡水スズキ釣りを楽しんだ経験があるが、その時のガイドの話だとダムの堰堤からバックウオーターまでは50㎞近くあると言っていたから、日本のダムなど比較にならない大きさである。
by weltgeist | 2008-12-13 22:17


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