上野で開かれているフェルメール展について (No.253 08/11/18)

 上野の東京都美術館でオランダの画家、フェルメール展をやっている。今回はオランダとの修好150周年記念ということで、全部で7点ものフェルメールが出品されているという。現存する彼の作品は世界中で36点しかなく、その内の3~4点は真筆か贋作か分からない。実質的には30数点の中での7点だから注目に値する展覧会で、ぜひとも見たいと思っている。
 フェルメールの作品はそんなに数が多くないので彼の全作品を見ることは、案外簡単である。このことから、世界中を旅して、全作品を見ようとする「フェルメーリアン」という人種さえいる。小生もその一人で、これまでに欧州と北米で29点のフェルメールを見ていて、全作品鑑賞にはリーチがかかっている状態である。(もっとも、1990年にボストンで「合奏」が盗まれて、行方不明だから全作品制覇は不可能だが・・)
 今回日本にやってくる7点のうちでは、「マルタとマリアの家のキリスト」は見ていない。この作品は昨日書いたヨハネ福音書11章のマリアとマルタ姉妹のシーンを描いたもので、スコットランド、エディンバラの小さな美術館にあるため、こうした特別展示でないと中々見ることができない。そのためにも12月14日の終了日までにぜひ上野に足を運びたいと思っている。d0151247_23503668.jpg
 ところで、フェルメールと言えば、「真珠の首飾りの少女」と「デルフト眺望」がとくに有名である。「真珠」はオランダ、ハーグのマウリッツハイス美術館で2度、日本でも2000年に大阪に来たのを新幹線に乗って見に行ったりして、都合4度見ている。斜め後ろに振り向いた少女のつぶらな瞳と真珠のイヤリングが見事で、「北方のモナリザ」などと呼ばれて特に人気がある。ごく普通のどうってことないポートレートだが、見れば見るほど何か引き込まれてしまう不思議な魅力がある絵だ。
 だが、分からないのはもう一つ、フェルメールの最高傑作とされる「デルフト眺望」だ。この絵のことは学生時代に読んだとてつもなく長~い小説・マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の中で初めて知った。まだ、絵画をあまり知らなかった頃で、「フェルメール」なる画家のことも、また「デルフト眺望」もこのとき知ったのが初めてである。あのうんざりするほど長い小説のストーリーについて記憶も薄れているが、パリにやってきた「デルフト眺望」を見た作家が、描かれた建物の黄色い壁の色にしきりに感激し、そのまま死んでしまうことはよく覚えている。
 しかし、人が死ぬほど大きな衝撃を与える絵とはどのようなものだろうか。よほど強烈なインパクトがあるものに違いないと思い、最初にオランダを旅した時、ハーグのマウリッツハイスで「デルフト眺望」を見ることに大いに期待していた。マウリッツハイスは想像していたよりはるかに小さな、こじんまりした美術館で、「眺望」はすぐに見つかった。小生は、最初に「真珠」を感激しながら見たあと、「眺望」に目を転じると、すぐに描かれた黄色い壁を探した。ところが、それはプルーストが言うほど大きくない、ちょっとした普通の壁にすぎなかったのだ。何故小説の中で作家・ベルゴットがあの小さな壁に感激したのかよく分からない。それでも注意して見ると、壁はフェルメール独特の絵の具を粒状にして描いていて、黄色い壁がザラザラした質感で見える。しかし、小生に見る目がないのか、それ以上のものには見えず、ましてや死んでしまうほどのショックなど全く感じられなかった。残念ながら小生には「眺望」は普通の風景画にしか見えなかったのだ。
 自分は少し他の人と違ってひねくれているのだろうか。はたまた絵画を鑑賞する能力に欠けているのだろうか。前にも書いたが、アムステルダム国立美術館にあるレンブラントの「夜警」も世間の評判のような感銘を受けなかった。恐らく、小生の審美眼が駄目なのだろうと思っている。自分はフェルメールでも「真珠」やウイーンにある「絵画芸術」、アムステルダムの「牛乳を注ぐ女」は素晴らしいと思う。しかし「眺望」はよく分からない。一人の画家の評価が自分自身の中で全然定まっていないのである。
 それなのに、お前はなぜ世界中のフェルメールを追いかけるのか、と聞かれれると答えに窮する。とりあえずは「ミーハー的好奇心です」と答えるようにしているが、皆が「フェルメールはすごい」と言っていることが、自分には半分しか分からないのだ。すごくいい絵とそうでない絵が混じっていて、自分の中で混乱している。もしかしたら小生は本当に駄目オヤジで、絵を見る資格はないのかもしれない。しかし、それだからこそ、今回も上野に行ってぜひ自分の目で現物を見て確認したいのである。何度も繰り返し見れば、他の人が素晴らしいと言っているフェルメールの良さが分かるかもしれないと思って、フェルメーリアンを続けている変なオジサン、それが今の小生の姿である。

実際に見て来たフェルメール展の感想はこちらをどうぞ。
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フェルメールの最高傑作と言われる「デルフト眺望」。マルセル・プルーストが絶賛した黄色い壁は、右側の建物にあるが、能力のない小生にはその壁の色がどうして素晴らしいのかよく分からなかった。皆さんはこの絵を見てどう思いますか。
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by weltgeist | 2008-11-18 23:45


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