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たまには竿を持たずに桜の花見(No.66 08/04/10)

 昨日は渓流釣りに行く予定をしていたが、このところの大雨で、川の状況が悪化したため、急遽桜の花見に変更した。行ったのは埼玉県秩父市の清雲寺と山梨県甲州市の恵林寺だ。両方とも桜は今が満開で、丁度いい花見ができた。
 最初に行った清雲寺はしだれ桜が有名な所である。秩父市内から少し奥に入った所で車を停め、細い路地を歩いて行くと、左手に清雲寺が見えてくる。桜は主に寺の山門の前の広場にあり、かなりの人で混雑していた。まさに満開の時期にピッタリ当たっていて、花の見頃である。だが、狭い場所に沢山の観光客がいるため落ち着いて桜を見る気分になれなかったのが少し残念だった。ま、上野公園のように花の下にシートを敷いて花見酒をする人はさすがにここではいないから、その点はいいのだが。
 桜を見ている皆さんは、それぞれが手持ちデジカメや携帯カメラで写真を撮りまくっている。また、三脚を付けて本格的に撮影している専門的な人もかなりの人数いた。ここは桜の絶好撮影ポイントとして有名なのかもしれない。小生もD300を出して、ちょっと桜の写真を撮ってみるが、うまくいかない。これまで何度も桜の写真は撮ったが、うまく撮れた試しがないのだ。桜の花は木全体を覆うように咲いている。それのどこにピントを合わせるかがはっきり決められない。一カ所に合わせても、他がアウトフォーカスになってしまう。かといって、花の部分をアップで撮ったのでは桜の面白さも出ない。
 近接と遠景が瞬時に切り替えられる人間の生きた眼で見るから桜は花はきれいなのだと小生は思う。ある画角で固定される写真では、なかなかその美しさを撮ることは難しいだろう。やはり野に置け、山野草、写真より現物を生で見るのが一番と、小生は早々に桜の撮影は諦めた。
 しかし、境内には沢山のカメラ愛好家が夢中で桜を撮っているのが目撃された。こんな状況下で良い写真を撮れた人はいたのだろうか。桜のように白っぽい物を撮る時は晴天で光りがたっぷりないと、コントラストのない眠い写真となってしまう。当日は曇り空でこちらも期待できない条件なのだ。もし一枚の写真の中に見事に桜の美しさを捉えたいと思ったら、人が誰もいない朝早くに、4X5インチの大型カメラで、レンズの絞りを最大まで絞って撮るというような方法をしない限り、ただ桜が写っているだけの記念写真的なものしか撮れないだろう。
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清雲寺はこの細い道を通って行く。秩父きっての名所だけあって、入り口には露店が並び、人がびっしりいる。奥の方にお寺の桜が見える。
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桜はすべてしだれ桜で、白とピンクの二種類があり、至る所でみんなが写真を撮っていた。この人たちがお互いに邪魔になるのだが、そんなこと気にしていたらここでは一枚も撮ることは出来ないだろう。桜は夜になるとライトアップされるという。
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どの角度から撮っても人ばかりで面白みがない。一瞬、人が切れた瞬間を狙って撮ったが、やはり桜の写真は難しく、この程度しか撮れなかった。

 もう一つが、秩父山塊を長いトンネルで山梨県側に抜けた所にある甲州市の恵林寺(えりんじ)だ。この寺は武田信玄の菩提寺で、1573年、53歳で亡くなった武田信玄の墓もある。また、1582年、逃亡する武田の残党が寺に逃げ込んだ所を織田信長が焼き討ちした。だが、時の和尚、快川は信長に逆らって武田残党をかくまい、「心頭を滅却すれば、火もおのずから涼し」と言う有名な言葉を言って焼き殺された歴史的な所でもある。
 この寺の開祖は臨済宗の有名な禅僧・夢窓国師だ。寺そのものは600年以上の歴史があるが、本堂と庫裡は明治38年に失火により焼失したため、築100年しかたっていない。しかし、国の重要文化財に指定されている四脚門は残っている。これは慶長11年(1606年)時の将軍・徳川家康の寄進を受け焼き討ちの後再建築されたものだという。
 そういった歴史的な場所なのに我々が行った時は意外なほど人は少なく、清雲寺と違って落ち着いて見学することができた。桜の木の数は清雲寺に比べると全然少ない。しかし、夢想国師の築庭と呼ばれるだけあって、見た感じはこちらの方がずっと素晴らしい。少ない数の桜と松が、池を囲むように植えられていて、松の緑と桜の薄いピンクがきれいにマッチしていた。それに建物がとても重厚で、本当に歴史を感じさせる場所だった。
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こちらは武田信玄の菩提寺である甲州市恵林寺の桜。庭は夢窓国師が築いたのだそうで、国の名勝指定を受けている。築670年余りを経た古寺である。
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入り口三門の左側にはあの「減却心頭火自涼」(心頭を滅却すれば、火もおのずから涼し)の文字が書かれている。織田信長に焼き殺されても、熱いどころか、涼しいと言った快川和尚の精神状態はどんなものだったのだろうか。とても常人に出来ることではない。門の間から奥に本殿が見える。
たまには竿を持たずに桜の花見(No.66 08/04/10)_d0151247_23255520.jpg

こちらは上の写真の三門から入って本殿の前から三門の方を撮ったもの。左右は白い石が敷き詰められていて、禅寺の庭を思わせる。この写真では分かりにくいが、三門の間から参道沿いに桜の花が見えるようになっていた。
by weltgeist | 2008-04-10 23:26


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