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D300を買いました(No.12 08/02/04)

 日本のカメラの優秀さが世界に認められたのは60年代、ニコンFがベトナム戦争で使われた頃からだろう。しかし、学生時代ニコンFは高すぎて手が出ない高嶺の花だった。諦めてキャノンフレックス(多分そんな名前?)というカメラで妥協したが満足できず、結局はバイトで頑張って、翌年欲しかったFを手にした。長い道のりを歩いて最高の一眼レフが自分の物になった時は天にも昇る気持ちだった。以来、ずっとニコンのFシリーズ銀塩カメラを何台、いや少なくとも10数台は使い続けている。
 そんな銀塩カメラにどっぷり浸かってきた小生は、今のデジカメに何か馴染めない違和感のようなものを感じていた。ゼロと1という2進数でこの多様な現実を捉えることができるのか。全てをゼロか1に押しつけることは出来ないだろう。ゼロから1までの間に無限の拡がりを持たせるアナログ銀塩フィルムは、使いにくくても無理なく現実を写し撮れると思ったのである。
 だから、皆が「デジタルはいいよ」とか「便利だ」と言う言葉に背を向けて、銀塩を使い続けていた。しかし、時代の趨勢に逆らうことはできないと、3年前に初めてニコンのデジタル一眼・D70を買い、その1年半後にさらにD200を買い増して、デジタルも少しずつ使い始めた。
 デジタルではホワイトバランスやISO感度をある程度変えることができ、フィルムにない便利さがある。撮った直後に絵が確認できるのもありがたい。しかし、写真にとって重要な階調という部分がいただけない。コントラストが強すぎて、中間の滑らかなグラデーションがうまく表現できないのだ。白すぎる部分は真っ白な「白飛び」を起こし、黒は真っ黒な「黒つぶれ」が起こる。白でも薄いグレーが掛かった白とか、黒でもわずかに白み掛かった微妙な色が再現できないのだ。色の階調が大雑把で、丁度、今小生がこのブログで掲載しているgif画像のように、色の連続性がとぎれた深みが感じられない写真になってしまうのである。だから、まだ銀塩フィルムには勝てない、そう思っていたのである。
 そんな中で、昨年の末にあえて新製品のD300を購入した。D300が今までのデジタルの限界を突き崩す可能性を秘めたカメラと聞いたからだ。購入してまだあまり使っていないため断定的な評価は避けるが、少なくともD200とは別物の完成度があると感じた。白飛びも黒つぶれも皆無ではないが、十分鑑賞に耐える段階になっていて、ここまで改良されたデジタル技術の進歩の早さには驚かされた。最早銀塩にしがみつく時代は終わったという認識を新たにさせられたのである。
 しかし、D300が実現した進化の速さからみれば、最先端のD300が陳腐化するのも数年以内だろう。ある製品が最高という冠を被っていられる期間はあっと言う間なのだ。家にあるF3が作られたのは20年も前のことである。それでもまだ現役の役目を果たすことができる。それなのに、デジタルは次々に旧製品をお蔵入りにしていく。我々は機械の進歩にせっつかれるようにして、きっと3年ほど後には新たに出たデジカメを買わされる、いや買わなければならないだろう。買わなければ時代に置いて行かれるからだ。それがデジタルの宿命である。
 ところで、最近のコンパクトデジカメ、いわゆるコンデジの画素数競争はちょっと異常である。数年前5百万画素と言われて驚いていたら、今や千4百万画素の物まである。これは大きなCCD、またはCMOSを使う一眼デジをも越える画素数である。そんなものがコンデジで必要なのだろうか。コンデジの小さなCCDの中に受光センサーをぎっしり詰めた極端に狭い画素ピッチで、良いことがどこまであるだろうか。デジカメの性能差を画素数だけで判断する誤った考えに、ユーザーはいい加減目を覚ましてもらいたいものだ。
 コンデジの良さはポケットに入る小さなサイズで気楽に撮影ができることである。小生も当ブログの写真の多くは6百万画素のコンデジで撮っている。実際のところ、ブログに使ったり、2Lサイズくらいのプリントならこれで十分なのだ。1千万画素を越えたコンデジのデータなどかえって大きすぎて使いにくいのである。こういうことを知らずに、今日も多くの人が高性能=高画素を信じてコンデジを購入しているのを見るとかわいそうな気がする。
D300を買いました(No.12 08/02/04)_d0151247_2284027.gif
今回ニコンが満を持して発売したD300。噂通り、なかなかいい写真が撮れる。ただし、ここまでカメラの性能が上がってくると、付けるレンズもそれなりの高性能でなければならない。解像度の低いレンズを付けると、D300は見事なまでレンズの欠点をさらけ出してくれる。カメラはあくまでボディとレンズが一体化して初めて正しい性能を発揮するのである。

*ここでアップしているgifの写真は、デジタルは階調が飛びやすいという特徴を良く表している。カメラの下側の影や、バック(ホリゾント)の茶色が、きれいなグラデーションではなく、色が飛んでいることが分かる。通常皆さんが使っている写真はjpgファイルなので、こんな事にはならないが、ここに載せたD300を撮ったgifの写真はデジタルの特性を知る悪しきサンプルとなった。もちろん、普通にjpgで撮ればD300はこんなひどい絵にはならない。素晴らしい写りをすることは間違いないから誤解しないようにしていただきたい。
by weltgeist | 2008-02-04 22:17


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