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怒りと恨み (No.2081 15/09/25)

 若い頃の私は「瞬間湯沸かし器」とあだ名され、しばしば頭に血が上って他の人と大喧嘩をしたことがある。しかし、最近は不愉快なことがあっても、極力怒らないように心がけている。もちろん弱い人間であるからうまくことが運ばないこともある。実は先日も我が家の同居人にひどく腹を立ててしまった。このようにどんなに意識してもときどき気持ちをコントロールできない事態に直面することがあるのだ。しかし、怒ったところで結局は自分自身の不愉快さが増幅されていっそう気分が悪くなるだけなことを長い人生経験からたっぷりと学び取った。
 そうしたことの反省から、怒りは極力抑えて、平穏にやり過ごすことが最終的には一番利口な処世術だと悟るようになった。だから最初は憤り感で興奮しても、次第にそれを忘れ、もとの静かな日常に戻ることができるように心がけている。穏やかな気持ちでいれば怒りは次第に忘れ去っていくからだ。
 だが、怒りは本当に忘却の彼方に消え去ったのだろうか。フロイトに言わせると忘れたと思うのはとんだ間違いで、怒りは忘却したのではなく、無意識の領域に追いやられて抑圧されただけだという。そして、無意識に抑圧された怒りは夢の中で爆発するだけでなく、時折人の正常な精神を蝕む悪さをするという。
 どちらにしても怒るということは人の精神にあまり良いことをもたらさないのは事実である。そして忘れることができないほど強い怒りは、それを恨みに変えてしまう。理不尽な悪に直面したとき、意志の強い人は問題に全力で立ち向かい、怒りの矛を収めることができる。しかし、それができないうえに、いつまでも忘れられない弱い人の怒りは恨みとなる。恨みとはその場で解決できなかった自分の弱さの逃避場にすぎない。自分の弱さを恨みという形で他人に責任転嫁しているのである。だから、恨みはいつまでも残って人の気持ちを暗くさせる。
 人様を恨む気持ちは、ただ自分自身を強くすることでしか克服できない。どんなことがあってもビクともしない強靱な自己の確立。強い信念と自分を強めていく意識だけが恨みを克服できるのである。
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by Weltgeist | 2015-09-25 23:48


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