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マンゴーの味 (No.2076 15/08/08)

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 昨日8月7日は語呂合わせで「バナナの日」だったそうである。昔、バナナはたたき売り専門の商品で、昭和40年代まで縁日の安売りで広く売られていた。しかし、それ以前には貴重品で、戦後まもなくバナナが初めて日本に輸入されたとき、父親が私のために買ってくれた。そのとき私が初めてみた外国の果物、バナナの味は忘れられないほどおいしかった。
 その後バナナはすっかり安物になりはてたが、同じ熱帯の果物でもマンゴーの地位は際だっている。宮崎や沖縄産のマンゴーは何と一個1万円もする超高級果物となっているからだ。そもそもマンゴーはインドからインドシナ半島にかけての熱帯果樹で、温帯の日本では露地栽培はむずかしい。それが栽培技術の進歩で、ビニールハウスで育てた国産マンゴーが高付加価値を付けたブランド果実として売られているらしい。
 らしい、と言ったのは私は一個1万円もする国産マンゴーなど食べたことはないからだ。ときどきテレビの旅番組でこうしたマンゴーを試食して「うまーい! 」とわめいているタレントを見て、悔しい思いをするだけである。先行き短い私は死ぬまでそんな高いマンゴーは食べられないで寂しく一生を終わるのではないかと思っている。
 しかし、本来のマンゴーはそんなに高い物ではない。以前オーストラリアで10m以上ありそうな巨木に数百個のマンゴーがたわわになっているのに誰も興味を示さないことを見て「何で? 」と思ったことがある。マレーシアでもそうだったが、こちらでは沢山とれるから安い食べ物なのだ。
 そんな安物を一個1万円にまでつり上げる日本農家の技術力、努力はたいしたものだ。TPPでこれからの日本の農業は厳しい国際競争力にさらされるだろうが、ここまで商品に付加価値を付けられるのだから日本農業はまだ大丈夫な気がする。
 しかし、南方系の安いノーブランド・マンゴーでも味は悪くない。今回は会員制倉庫型卸売小売チェーン・コストコでメキシコ産マンゴー、9個入り(二つはすでに食べてしまって写真では7個しかないが・・)一箱が1300円ちょっとで売られていたので、箱ごと買ってみた。一個に換算すれば百円強とまさにバナナ並の安さである。それでも食べて見たら、マンゴー独特のどろっとした甘さの果肉が抜群においしかった。国産ブランドマンゴーとは9000円以上の差があっても私にはこれで十分満足できている。
 そんなマンゴーだが一つだけ困ったことがある。我が家の同居人(つまり奥さん)はマンゴー大好き人間なのだが、彼女はアレルギー体質で、かぶれやすい。マンゴーは実はウルシ科の果物で、体にマンゴーの果汁がかかったりするとすぐに顔に発疹ができてかぶれてしまう。マンゴーは触ってはいけない物なのである。それなのに彼女は大好きで食べたいのだ。それで私が、果汁が口のまわりに触らないサイズまでナイフで細かくカットして食べさせている。
 ふだん私のだらしなさを厳しく叱る彼女もこのときだけはおとなしくなって、マンゴーをカットするところを遠目で見ている。そうして、長いフォークで一口サイズに切ったマンゴーを慎重に口に運んで食べている。だが、9個もあると、事故の可能性もある。以前同じようにして食べたとき、どこかでマンゴーに触れたらしく、「かぶれそう」とSOSを出したことがあるのだ。
 ひとたびかぶれが発症すればたいへんなことになる。しかし、それでも彼女はマンゴーが食べたいようだ。ノングルメの私には少しおいしい程度の果物にすぎないが、彼女にとってはかぶれる恐怖を打ち消すだけの魅力があるのだろう。いつも彼女に頭の上がらない私だが、残り7個のマンゴーの処理が終わるまでのアドバンテージは私の方にある。何しろ彼女は大好きなマンゴーを手で触ることさえできないのだから。
 
by Weltgeist | 2015-08-08 22:18


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