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日本のオークションってちょっと違うかな (No.2062 15/04/13)

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 私のようにすでに人生の最盛期を過ぎたポンコツ人間になると、これまで買い込んできた「お宝」がガラクタと化して困り始めてくる。現役時代に後先考えずに買った絵など私が死んでしまえばゴミとして処分されかねない。それなら生きている間にこれらを有効活用する方がずっといい。それで我が家の絵をオークションにかけられないかという下心を持って、東京有明にある「毎日オークション」の競り風景を見学してきた。
 といってもオークションハウスに一見の客が入るのはむずかしい。しかし、今回はここで何枚も絵を買っている友人の*氏に頼んで、毎日オークションに連れて行ってもらったのである。
 オークションで競りに参加したいなら、前日まで行われたプレビュー(下見)で作品の状態を確認しておく必要がある。競りが始まるとスクリーンに写真が出るだけで現物を確認することが難しいからだ。そして、「このくらいまでなら買っても良いかな」というだいたいの落札予想価格を頭に入れて当日に臨む。しかし、偵察に来ただけで買う気のない私はプレビューもしていなければパドル(番号札)の登録もしていない。単なる友人の同伴者としての見学参加である。
 競りは11時にスタートしたが、最初はエスティメート(予想落札価格)も付けられないほど安い「成り行き」の版画から始まった。10年ほど前「米国で脚光を浴びている新進気鋭の画家だから、絶対今買っておいた方がいい」というキャッチセールスで売りまくったシルクスクリーンの「傑作? 」が、数万円で次々と落札されていいく。かって百万円近い大金を出して買わされた若者たちには気の毒なくらいの現実が展開していく。
 そして驚くのは競りのスピードだ。一点がほぼ15秒くらいで落札されていく。今回出された作品は全部で990点ある。これを11時から夕方までに競り落とさなければならないのだ。平均すると1時間に150点ほど競るのだそうで、脇の電光掲示板には、2万円、5万円と日本円の入札金額が出るのと連動して、ドル、ユーロ、韓国ウオン、中国元の金額が瞬時に出る。しかし、オークショナーが言う言葉があまりに早すぎて電光掲示板が常に遅れがちになるほどのスピードである。
 私はこれまでロンドン、アムステルダム、ニューヨーク、香港でクリスティーズやサザビーズのオークションに出ているが、こんな早さで競りを進めるのは初めてである。そもそもクリスティーズもサザビーズも一日の競りは多くてもせいぜい3百点くらいで、かなり余裕を持って進める。だから落札したいけどどうしようかな、と考える時間的な余裕があるのだが、今回はそれが全くない。あっと言う間にハンマーが落とされてしまう。買いたい作品があったら、前もって自分が出せる金額の上限を決めておき、瞬時にパドルをあげないと落とすことができないのだ。
 日本のオークションは独自の発展をしたのだろうが、私の感想を言わせてもらえば何かマグロの競りでもやっているような感じで、優れた画家たちの作品が有無を言わさず流れ作業的に処理されていくことに少しショックを受けた。銀座の画廊やデパートで売られる有名画家の作品でも「エッ、こんなに安いの」と思うほどの落札価格に、これが現実なのかもしれないと思わされた一日であった。
by Weltgeist | 2015-04-13 23:58


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