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フィルムからデジタルへ (No.1895 14/01/28)

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 このところずっと写真の話題で、今日もその続きである。小生がリタイアしたのは2004年、そろそろ35㎜カメラがデジタルに移行しつつあった時期だったが、まだプロの仕事としてはフイルムがほとんどだった。デジタルは階調性を欠いたコントラストの強すぎる物で、印刷原稿としてはフィルムにはかなわないと信じられていた時代である。
 とくに細密な描写が要求される商品撮影ではシノゴと言われる4X5インチフィルム版が絶対であった。昔、卒業式などで全員が集合したとき写真屋さんが黒い布をかぶって撮ったあの大きなカメラである。そんな大きなカメラだから素人は使いこなせない。プロ御用達として、これで写真を撮っていればオマンマは食えた時代である。
 ポートレートなどの人物グラビアでも中型のブローニータイプと言われるフィルムカメラが使われていた。少し前の女子専科のカメラマンは猫も杓子もハッセルブラッドというブローニータイプのフィルムカメラで撮るのが普通だった。
 ところがデジタルカメラのものすごい発達で写真そのものが急激に変わってきた。駄目と言われたデジタルでも印刷原稿として使える絵が撮れるようになって写真が誰にでも撮れる時代になってきたのである。フィルムカメラの牙城として抵抗していたブローニーまでデジタル化した。そして最後のフィルムカメラ、シノゴの世界にもデジタルの波はひたひたと押し寄せてきている。しかし、まだシノゴをデジタルで撮る人は少ない。なぜならシノゴのデジタルシステムは高価すぎて一般的な価格にまでなっていないからだ。 
 しかし、35㎜カメラで仕事をこなしてきたプロ、おもに雑誌のグラビアを撮っていたいわゆるエディトリアル系のプロたちが一斉にデジタルの荒波を受けることになる。誰にでもそこそこの写真が撮れるとなれば、わざわざ高いギャラを払ってプロに頼む必要などない。編集者自らが撮る素人写真で十分使えるからだ。プロ受難の時代が始まったのである。
 小生の後輩たちではオマンマが食えなくなったプロが続出している。何人かに聞いたところ、仕事の量が減ると同時にギャラも安くなり、生活するだけの稼ぎを得るのは容易ではないようだ。プロカメラマンが写真以外のアルバイトで食いつなぐという悲しむべき状況が増えてきているのである。
 こうやって人間が生み出した新しい技術によって古い人間が淘汰されていく。これはカメラの世界だけではなく、他の業界でも同じである。最新の機械が作られてベテランの「ワザ」がちょっと訓練すれば誰にでもできるようになったのだ。ベテランがセミプロに駆逐されていくのである。それでいてセミプロが作った物の方がはるかに優れているのだから救いようがない。
 写真の世界ではデジタルはもう避けられない時代の趨勢だろう。これに反旗を翻してフィルムをこだわる人がまだいるが、それは無駄な試みである。いさぎよくデジタルの軍門に降るしかない。
 しかし、小生のようにフィルムべったりからデジタルに移行させられたいわゆる「過渡期の人間」にはいまだに理解できないことがたくさんある。以前のフィルムで撮っていたときと同じ感覚で撮影しているのだ。それが最近、フィルムとデジタルでは撮影の仕方から後処理までが違うことをようやく理解しはじめてきている。
 古いフィルムカメラの延長で撮っていると、デジタルカメラの本性を見落とすことに気がついたのであるが、この件は長くなるので、明日(たぶん)改めて書いてみたい。

 

by Weltgeist | 2014-01-28 23:12


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