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ジョン・チャヌ、バイオリン演奏会 (No.1796 13/09/28)

ジョン・チャヌ、バイオリン演奏会 (No.1796 13/09/28)_d0151247_23533630.jpg 韓国国立交響楽団、東京交響楽団、韓国KBS交響楽団などの首席コンサートマスターを歴任したバイオリニスト、ジョン・チャヌさんのコンサートを聴きに行ってきた。彼の演奏を聴くのは今度で二回目である。前回は2010年10月11日で、このときの感想はNo.854に書いた。
 2001年にJR新大久保駅でホームに落ちた人を助けようとして2人の人が電車にひかれた。そのうちの一人は韓国からの留学生であった。あの事故のあと、救いを求めている人を助けようとして死んだ勇敢な人たちを追悼して新大久保でバイオリンのコンサートをやったのが在日韓国人音楽家のジョン・チャヌさんである。
 ショックの大きかったあの事件のあとジョンさんはキリスト教に回心し、洗礼をうけることで自分が大きく変わってきたという。善意で人を助けようとした人が死ぬという理不尽な出来事に悩まされていたのが、イエス・キリストを受け入れることで、心が愛に満たされていくように変わってきたというのだ。
 ところで我々が音楽家の演奏会にわざわざ行くのは、演奏家が曲をどのように解釈し、どのような音を出して演奏してくれるかに興味があるからだ。優れた演奏家なら、深い内容を秘めた演奏をしてくれると期待できる。ジョン・チャヌさんがキリスト教に回心したことで、心に愛が満たされたとなれば、彼がバイオリンから醸し出す音も愛に満ちたものとなるだろう。音符に書かれたドレミファソラシドという音は、弾く人によって様々な味付けがなされた音として出てくるのである。
 会場でもらったパンフレットによればジョンさんのバイオリンはグァルネリだという。ストラディヴァリと並ぶ18世紀イタリアの名器である。彼が最初の曲、チャイコフスキーの白鳥の湖を演奏したときから名器が奏でる音がとても柔らかくて引き込まれるような気持ちがした。弓が絃の上を走り、何とも心地よい音を奏でる。音の一つ一つにジョンさんの心が込められたすばらしい演奏だった。
 ジョンさんの演奏形式は普通のコンサートと違って、彼がそれぞれの曲について自分の思いを一曲ずつ語ってから弾いていくやり方である。クラッシックになじみの無い人でもわかりやすいように解説してくれる。この日一番印象深かった曲はスペイン・カタルーニャ地方の民謡で天才チェリスト、パブロ・カザルスが編曲・演奏した「鳥の歌」だった。
 1971年、94歳のカザルスがニューヨーク国連本部において「私の生まれ故郷カタルーニャの鳥は、ピース、ピース(Peace =平和)と鳴くのです」と語って弾いた伝説の名曲をバイオリンで弾いてくれたのである。それはまさにカザルスが言ったように「ピース、ピース」という言葉に聞こえ、心に染みいるようなすばらしい感動を与えてくれた。最後になるが、ピアノの武田香奈子さんもあるときは軽やかに、またあるときは力強くと、素晴らしい演奏をしてくれていた。こんなすてきな音楽が聴けた今日は心が洗われた気持ちになっている。
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by Weltgeist | 2013-09-28 23:58


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