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生活保護者と働いている一般世帯の支出 (No.1593 13/01/16)

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 生活保護を受けている家庭は昨年9月の時点で213万人と過去最高を記録したのだそうだ。今年は5年に一度の支給基準の見直し年度に当たり、厚生労働省の専門家会議がその参考資料を公表した。今夜のNHKニュースによると、20代から50代まで、全体の24%を占める単身世帯の生活保護支給額は月額78,200円、一方働いている方の平均支出額は76,900円と逆転していて、1300円生活保護者の方が多いことになるのだそうだ。
 こうした事態に田村厚生労働大臣が今年4月から一部基準額を引き下げる方向で検討するといっていた。これについては公明党も賛成のようで平成25年度予算案の編成過程で政府与党間で調整がはかられる見通しだという。
 確かに働いている人より働いていない生活保護受給者の方がお金をもらえるという制度はおかしい。「それならおれも働かないで生活保護を受ける」と言い出す人が出ても当前だろう。
 しかし、少し冷静になって考えてみると、20代から50代まで人生の最盛期にいる人たちが月額78,200円しかもらえないことの方に厳しさを感じてしまう。さらに驚くのは働いている人の平均支出が76,900円しかないことだ。これが人生の絶頂期にいる人たちに相応しい金額なのか。厳しいまでの現実を思わざるを得ない。
 こうしたプアーな状況なのに、生活保護を受けている人間は俺たちよりもらいすぎだ、といって支給額引き下げに同調する人がいる。しかし、我々は保護者のわずかな支給額を引きはがすより、むしろ自分たち一般労働者の収入を引き上げる方に力を貸すべきではないのか。下げる方向に動くのではなく、待遇を上げるのだ。
 生活保護費の総額は今年度3兆7千億円を越えそうだから、政府はこれを押さえる方向に動くのだろう。社会全体が働く人たちの労働価値を引き下げていくというトレンドの一環にこの問題も巧妙に組み込まれている。働きのない奴(保護受給者)の支給額を下げるからお前たちも今の低賃金で我慢しろという言い分が垣間見えるのである。コストダウンというスローガンで人間の価値は下げられる一方である。働いていない奴が働いている者より生活保護でいいお金をもらっていると、いきまく前に、社会に拡がる人間を軽視する風潮に乗らないことだ。
 テレビが生活保護受給者が働きもせず、パチンコばかりしているといった「怒りの実体レポート」をやって、一般労働者の怒りを煽っている。しかし、そんな一部の不心得者だけに目を向けさせることがマスコミの目指す道なのだろうか。こんなことをやっていると本当に保護を必要としている大部分の人たちの姿を間違ったイメージで伝えることになる。
 他人のわずかなお金をねたむ心の卑しさが根底にあるからこうした「怒りのレポート」ができるのである。自分の心の中に人の不幸を招くねじ曲がった気持ちがないかもういちど問うてほしい。人をねたむより、人を大事にし、社会全体を豊かに底上げするにはどうしたらいいのかに関心をもつべきだ。田村大臣、いや安倍さん、国民全体の生活を上げるためにうまくこの問題を解決してくださいよとお願いしたい。
by Weltgeist | 2013-01-16 23:36


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