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本を読まない人は猿か (No.1479 12/09/13)

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 以前、宝島社が「日本の犬と、アメリカの犬は、会話できるのか。」という不思議なキャッチコピーの全面見開き広告をやっていたことを書いたが、今日の朝日新聞朝刊に上の写真のような宝島社の見開き全面広告がまた掲載されていた。「ヒトは、本を読まなければ、サルである。」というコピー以外に宝島社の名前があるだけのイメージ広告のようである。
 どこかの猿山で裸の人間たちが猿のようにバナナを取り合いしている写真を全面に打ち出している。これが本を読まない「ヒト」の真の姿だ、だから本を読めということだろう。ヒトは猿から進化してきたというから、本を読まないと退化して猿に戻ってしまうと言いたいのだろう。
 ネットが今のように盛んになると、アナログの紙媒体はひたすら萎んでいくだけである。出版文化の廃退に危機感を感じている小生にとっても、本を読まない「ヒト」の増加は心配である。ネットで調べれば何でも分かると思うのは大間違いで、タダが当たり前のネットの知は広く浅く、かつ信頼性のないものが大半である。こうしたイージーなネットに頼りすぎると確かにヒトは猿のようになる恐れがある。真に知的なことは依然としてまだアナログ、すなわち本の方にあるから、「本を読まないヒトはサル」という意見には賛成である。
 しかし、今回の広告の写真、どう見ても Photoshop を使ったデジタル合成であるところが引っかかった。アナログの牙城である本を読めと勧める肝心の広告主がデジタルで合成した写真を全面的に使うようでは最初から負け戦をしているようなものではないか。しかも合成写真の質が低く、わざとらしい裸の人間が群れている写真にインパクトを感じない。前回の「犬」のような素朴な訴求力のある思いが伝わってこないのだ。
 広告はみんなに注目してもらわなければならない。多分この広告は大手広告代理店が制作したものであろうが、制作者はクライアントの一番コアな思いを理解していないで、ただ目立てばいい、注目されれば成功という考えだけでこの広告を制作したのだろう。
 もちろん小生も注目したくらいだから今回も十分話題を呼ぶことはできたろう。しかし、広告はただ目立てばいいというものではない。広告主のイメージを高め、自社製品の購買につながるものでなければならない。宝島社の本を買って読んで欲しいというのがこの広告の真意である。広告が成功したかどうかは最終的には宝島社の出版物が売れたかどうかである。
 前回の「日本の犬とアメリカの犬・・」の広告を見た後も小生は宝島社の本は一冊も買っていない。結局興味の対象となるような本がなかったことが原因である。広告で宣伝することは重要だが、それに食いついてきた人のニーズを満たすような優れた商品を用意しているかは広告する側の責任である。
 アナログ文化を担う出版社はデジタルに負けつつある厳しい産業である。起死回生の手を打つなら対抗者であるデジタル、ネットに負けないしっかりした内容の本を出し続けて欲しい。短期的には売れなくても良い本は長く読まれ、生き残っていくと小生は信じている。
by Weltgeist | 2012-09-13 23:16


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