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不機嫌な人 (No.1378 12/04/28)

 今日は午後から急に気温が上がって初夏のような感じになった。この暖かさで沢山の蝶が飛び出すだろうと前の山にカメラを持って出かけた。狙いはばっちりで、いつもの場所でツマキチョウが飛び交っていた。ところがその少し先の方で似たようなカメラを構えてベニシジミを撮っていた人に「向こうにツマキチョウがたくさんいましたよ」と声をかけたのが不愉快な事件の発端となった。
 同じように蝶の写真を撮っていたこの御仁、何か気に入らないことでもあったのか「うるせえなぁ」と言ったのである。先日、人に挨拶しても応えないと怒り出すのは「人は挨拶すべきと決めつけた負の感情を持っているからだ、そう思う人は幸福にはなれない」と書いたばかりである。しかし、それにも関わらずあまりの無礼な反応に血が頭に逆流し、「何だ、コイツは」と思ってしまったのである。
 この場所にツマキチョウが飛んでいることなど彼も知っていることかもしれない。それを小生がわざわざ「教えた」ことで彼の自尊心を傷つけたのだろうか。小生は親切の押し売りをやりすぎたのか。あるいは「ツマキチョウ」と特定な蝶の名前を言ったことで「同じ蝶を撮影しているライバル」と小生を見て敵愾心を燃やしたのかもしれない。
 しかし、相手の言い方に小生は痛く傷ついた。親切心で言ったのに「うるせえ」はないだろう。もっと相手を思いやる言い方がなかったのかと思い、非常に気分を害したのである。不機嫌な気持ちは容易に相手に伝染するのだ。 
 そんなことがあって午後は少し沈んだ気分になってしまった。人間は理性でコントロールしきれないドロドロしたものが心の中にあって、これが鋭敏に反応する。こうなると理性的なだけでは気分は良くならないのである。
 人間存在には気分=Stimming というものが根本的に備わっていると言ったのはハイデガーである。気分は世界の中に投げ出された現存在=世界内存在にとって本質的なものである。それは死に向かってしか生きられない現存在に「実存」を開示してくれるものだからだ。現存在、すなわち人間には気分が備わっているから世界の中に意味も無く投げ出されていることを知らせられ、了解することができるのだ。気分がなければ人間は実存することもできないのである。
 ハイデガーの実存哲学では人間にとって気分は非常に根源的なことになる。少しも理性的ではないのだ。それどころかドロドロとした何ともつかみどころのない気分的存在が人間だということになる。小生の言葉に「うるせえ」と反応した人も気分なら、頭に来た小生も気分なのである。
 だが、そうであっても気持ちの良い気分もある。そうした気分を引き出すことはある程度努力することで可能である。ムカッとしても、ぐっと抑えて笑顔で返す。そうすれば普通の人間はこちらの笑顔を「了解」し、笑顔で応えてくれる。ただし、これも確たるものではない。世の中にはいつも不機嫌をまき散らすことで周囲の人の気分を害する迷惑な奴がいる。こういう人に出会ったら、触らぬ神にたたり無しで、できるだけ彼と接しないようするしかない。何しろ悪い気分は理性で説得することは難しいからだ。
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人間は「気分的な存在」だが、猫にはそうした気分はない、いやもしかしたらあるかもしれないが、小生は無いと信じてイライに「お節介な親切の押し売り」をやり続けている。彼が嫌がろうが、抵抗しようがお構いなし。のべつ幕無しに「可愛い、可愛い」と言いながらなでたり抱き上げたりしている。親切の押し売りで気分を害するのは人間だけ、猫は大丈夫と信じているのである。
by Weltgeist | 2012-04-28 22:55


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