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夏の終わり (No.1164 11/09/13)

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 土曜日に前の山を歩いていたら、道の片隅に死んだアブラゼミが落ちていた。今年の夏は例年と変わらぬほどアブラゼミは多くて、毎日うるさいくらい鳴き声がしていた。それがそろそろ夏の終わりにかかって彼らも寿命を真っ当したのだろう。注意して見ると道のあちらこちらに死骸が沢山転がっていた。中にはまだバタバタと翅を動かす虫の息のものもいる。セミの鳴き声が聞こえなくなると、季節は秋に移行していく時期を迎えるのだ。
 わが家の前の山は整備された道が森の中に何本も作られている。涼しくなるにつれてここを散歩する人達も沢山歩くから、死んだセミは無残に踏みつぶされていくことだろう。歩く人達は森の景色は見ても、足もとまで注意しない。道に転がったセミの死骸は秋が深まるにつれて粉々になり土の中に帰っていくのだ。
 アブラゼミは幼虫の期間を6年間土の中で過ごし、夏に地上にはい出てくると、2~3週間ほど生きる変わった昆虫だと昔生物の時間に習った。6年もの間、土の中でモグラのような生活をしていたなら、地上に出たときは素晴らしい解放感があったことだろう。
 ジージーとうるさい鳴き声をあげながら自由に空を飛んでいく。それは長い下積み生活を耐えに耐えぬいてついに理想郷に達したうれしい叫び声なのだ。まさに光のない闇夜から明るい光に満ちた希望の世界への脱出である。自分の生の究極の目的地に着いて、与えられた短い命の時間を精一杯生きているのだ。
 しかし、待ち焦がれた地上の生活はあっという間に終わる。アブラゼミは彼の生の頂点においてその幕を閉じるのである。わずか2-3週間しか生きない短い命。彼らは虫けらかもしれないが、それでも限られた生の時間を目一杯全力で生きて、果てる。土の中でも地上でもたった一人でけなげに生き、寂しく死んでいくアブラゼミたち。命ってなんてはかなく、悲しいのだろうか。道に横たわる名もなき虫けらの死に胸が熱くなる思いがした。
by Weltgeist | 2011-09-13 23:12


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