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ドル安、円高で円は1ドル50円を目指すのだろうか (No.1134 11/08/14)

 円が異様に高くなっている。以前、日経ビジネスで円は50円まで高くなるという予測記事を読んで、そんな馬鹿なことがあるか、と疑問を書いたことがあるが、どうやらこの予測は次第に現実味を帯びてきた観がある。円がドルに対して76円台になったとき野田財務大臣が為替介入をして、円高、ドル安阻止に動いたけれど、数日たったらまた元の76円台に戻ってしまい、じりじりと高値を狙っている様子が見て取れる。円は不気味な動きをしているのだ。
 巨大なパワーを持ち始めた為替の動きは、たとえG8が協調して為替介入しても止められるものではない。誰かが言っていたが、太平洋に目薬をさすようなもので、効果は一時的にはあっても基本的な流れを止めることはできない。
 だが、それでは基本的な流れは一体どちらに向かっているのだろうか。円高がまだ進むのか、それともドルが持ち直すのか、残念ながらそれは誰にも分からないのだ。エコノミストが様々な資料から「1ドルが50円になる」と言っても、まずこうした予測が当たったためしがない。何故なら、必ず予測の裏を読んで反対のことをやる人間がいるからだ。
 株の例でみるとそれがよく分かる。株を売る人は「今が山で売り時だ。これ以上値は上がらない」と思うから売りなのに、買う方は「今が谷で、これから値は上がっていく」と判断する。両者の接点で株価は成立しているのである。
 同じ事柄をまったく反対に解釈し、そこに資金を投じる。これは投資ではなく「投機」である。最近為替差額を狙ったFX(外国為替証拠金取引=margin Foreign eXchange trading)が流行っているが、ここに素人が虎の子を注ぎ込むのは危ない。専門家でも一寸先は闇の世界に、何も分からない一般人が為替の動向など分かる訳がない。カジノでギャンブルをするのと同じで、シコシコと小銭を稼いでいるうちに、思いもよらない暴落でつぎ込んだ全資金を失うのが関の山である。
 FXは素人が手を出すことではない。むしろ高くなった円を持って、安い海外で買い物をする方がずっと賢い。為替変動の恩恵を海外旅行でたっぷり楽しんでもらう方が安全かつ健全である。
 一方で困るのは輸出で利益を得ている会社だ。円高は海外進出を促進し国内産業の空洞化を加速させるという。一円、二円の利益を追っている会社は本当にたいへんだと思う。だが、これが富の平準化によるグローバルな動きとすれば、日本はなお世界のスタンダードへ向かう道を進まなければならない。
 富の平準化とは何か。世界には日本のように富める国もあれば、ソマリアのような極貧国も沢山ある。富める国の富は貧しい国に流れ、やがては肩を並べるようになるのが平準化だろう。果たしてそうなるかどうかは分からないが、平準化を目指す限り日本は次第に貧しくなるということである。日本の失業率が改善していかないのも世界の労働力の平準化が影響している気がしてならない。世界に溢れる失業者は、日本の労働市場を狙う潜在的なコンペティターなのだ。
 日経ビジネスが言うように、ドルがさらに値下がりして50円を目指すのかどうか、小生にはまったく分からない。ただただ世界を流れる巨大な通貨の激流に流されていくしか手がない。無責任な言い方だが、明日はどうなるか全然分からない。我々は行き先も分からずただ翻弄されてるだけではないかと思っているのだ。
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by weltgeist | 2011-08-14 23:40


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