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インド・ラダックへの旅6、ナミカラ峠のカルトニウス (No.1120 11/07/27)

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 昨日までまだ何の成果もない小生、今日こそはなんとしてでもパルナシウスとのご対面を果たしたい。今日の目的地は昨日行ったフォツラ峠よりもっと西にあるナミカラ峠を目指して午前7時にラマユルを出発。昨日攻めたフォツラ峠を越えると、ブートカルブという町に出る。ここは巨匠が1970年代に初めてラダックへ来たとき、カルトニウスウスバシロチョウを沢山採った場所だという。
 しかし、あまりに時間が経ちすぎているせいか、巨匠の記憶は定かではなく、町を見ても沢山採った場所を思い出せないという。彼が訪れた後にブートカルブは大きな軍隊の基地ができていて、周囲の景観がかなり代わってしまったと言っていた。道路にはご覧のとおり羊の群れがのどかに歩いていた。
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 午前8時にナミカラ峠に到着した。ここの標高は3810m、高山性のパルナシウスの場所としてはちょっと低すぎる。ストリツカヌスウスバシロチョウがいると聞いていたが、彼らがいるのは4500mより上の地帯である。ということは峠からさらに700m上まで歩かなければならない。
 あの高い岩の頂上まで登らなければならないのか。ちょっとしんどいなな、と思っていたら、巨匠は反対側の斜面を登り始めた。こちらも頂上はずっと先の方に見えている。とにかくパルナシウスという蝶は、車から降りた目の前で飛んでいるなんてことはまずない。酸素の薄い高山を歩いて歩いてようやく行く着いた場所でしか出会えないのだ。ここはきつくても歩くしかないと小生も覚悟を決めて巨匠の後を歩いて行くと、するとしばらくして「ここは駄目だ。戻ろう」と巨匠が急に言いだした。
 峠の付近は蝶がいる雰囲気ではなく、4500mの高度まで登るには山歩きの距離が長すぎる。このまま歩いてもポイントまで行き着くのは相当難しそうだ。もっと低い高度にもいるカルトニウスウスバシロチョウを狙った方が効率がいいと言うのだ。この言葉を聞いて少し安心した。遙か先に見える山を見て、鬼のように歩かなければいけないと思っていた小生は助かったという心境になっていたのである。
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 代わって巨匠が目を付けたのはこの山である。初心者の小生には分からないが、巨匠の直感では、この山にはカルトニウスウスバシロチョウがいると言う。頂上付近で多分4000mちょっと。この山の斜面を登っていくと、カルトニウスの食草であるコリダリスが出てきた。ということはカルトニウスがいる可能性があるということである。やはりこうした場所を見つける巨匠の目はただ者ではない。
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 これがコリダリス(黄色い花の草)の咲く斜面。写真では分かりにくいが傾斜は40度くらいはあり、足を滑らせると数mは滑落するくらい急である。この斜面にへばりつくようにして待っていると、上の方から白い大きな蝶が飛んで来た。カルトニウスである。巨匠の読みは見事に的中したのである。だが、相手は飛んでいるだけでなかなか止まってはくれないから写真が撮れない。たまに止まった所を見つけても、斜面が急すぎてなかなか近づくことができないのだ。そしてようやくカメラにとらえられる距離まで接近すると、人の気配を感じるのか飛び立ってしまう。
 しかし、この斜面にはかなり沢山のカルトニウスが飛んでいて、一度や二度失敗してもすぐに次の後釜がやってくる。そのつど、カメラを構えてようやく撮れたのが下のカット。本当はコリダリスに止まっているとところを撮りたかったのだが、とにかくこのカットを撮るのがやっとだった。
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 小生はただ蝶が写っているだけの写真はあまり好きではない。蝶に興味のない人に見せても、単にきれいな虫が写っているだけで、「それであなたはこの写真で何を訴えたいのか」と言われることだろう。小生は生態写真もあまり興味がない。誰が見ても感銘を与えられるような写真を撮りたいといつも心掛けているのだが、心掛けるだけで撮れるなら誰もがプロになれる。思いと技術は別物である。
 この日は残念ながらカルトニウスの美しさも表現できていないピンぼけの「生態写真」を量産し、自分の写真技術のなさをはからずもさらけ出してしまった。今日の所はあの急斜面に負けて、ただカルトニウスが写っているだけの情けないカットで終わってしまったのだ。この日の撮影条件は極めて厳しかった。ガレ場の急斜面で滑り落ちそうになりながら強風で激しく揺れる花に止まった蝶をピンとぴったり、構図もバッチリに撮るのは至難のことである。十分蝶に接近して時間をかけようにも、相手はすぐに飛んでいってしまう。高山のパルナシウスを撮影するに、今の自分にはこの程度がやっとだったのである。
 もちろん、あこがれのカルトニウスを何頭も目の前で見れたのはうれしい。しかし、それならもっと良いカットが撮れてしかるべきだろう。小生、明日こそもっときれいなパルナシウスを撮るぞとリベンジを誓いつつラマユルの宿に戻ったのである。
 ちなみに、この日、巨匠は採卵用カルトニウスの雌をつかまえたそうで、明日から採卵を試みるという。果たしてどんな方法でカルトニウスから卵を取り出すのか興味津々である。

以下明日に続く。

by weltgeist | 2011-07-27 23:43


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