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アルブレヒト・デューラー版画・素描展は素晴らしい (No.929 10/12/25)

d0151247_21264363.jpg 昨日、芸大の第60回チャリティコンサートで、ヘンデルのメサイアを聴く前に、上野の国立西洋美術館で、「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」を見た。西洋絵画の有名作品の日本公開というと、肝心の作品以外はくずみたいな二流品を寄せ集めた客寄せインチキ展覧会が多いが、今回はデューラーの渾身の作が157点もあり、強烈な風圧を感じるほど手応えのある展覧会であった。
 しかし、デューラーの版画はどれも長辺が30㎝未満の小さなものばかりである。一枚ずつを注意深く見ないと、単に変わった版画があるだけの印象しか受けない。だが、この小さな版画に顔をくっつけるようにして見ると、突然見える世界が違ってくる。わずか数㎝のごま粒みたいな絵に、信じられないほど繊細な線が描かれている。しかも、これが木版や銅販に切れ込みを入れて描いた版画であるというのだから驚く。
 デューラー展を見に行くに当たって十分な満足を得るためには、二つの条件を満たすことをお勧めする。第一は平日の人の少ないときに行くことだ。人が押し寄せて遠くからしか見えないと、極小の絵の中にあるデューラーの超人間的な魔力を見ることができない。とにかく前の人が見終わるまで根気よく待ち、自分が正面に立てる順番が来たら、ほとんど顔をくっつけるくらいまで近づいて細部まで徹底的に見ることをお勧めする。(但し後に待っている人のことも考えて短時間にすますこと)
 細部を見るのに役立つのはルーペだ。二番目の条件としてルーペを持っていくことをお勧めする。百円ショップで売っているもので十分だが、易者が手相を見るときに使う天眼鏡タイプがいい。昆虫観察やネガのピントを調べるタイプは見える範囲が狭すぎて使いにくいだろう。今回天眼鏡タイプで一点ずつしっかりと見た結果、以前、ロンドン大英博物館で見たときは気づかなかった「メレンコリア1」(こちらをどうぞ)でのデューラーの失敗箇所もはっきり見えた。魔方陣の「5と9」に分からないよう修整を加えている。天才デューラーも時には失敗するのだ。
 さて、デューラーの版画で絶対見落としてならないのは、上記、「メレンコリア1」や、「書斎の聖ヒエロニムス」、「騎士と死と悪魔」などだが、他のものもむろんすべて素晴らしい。
 今回の展覧会で小生が驚いた作品は作品番号101番と102番の「枢機卿、アルベルト・フォン・ブランデンブルグ」のポートレートだ。やや横を向いた顔で目の部分が、まるっきり絵の具で描いたようにリアルに見えた。なぜここまで版画で描けるのか、ルーペで見たら、何と小さな瞳の部分に1㎜にも満たない線が何本も描かれている。そして、窓ガラスの反射と思われる4個の白いアイキャッチまで描かれているではないか。
 この絵だけでも写真に撮りたいと思ったが、撮影は禁止されている。仕方がないから、この絵のために展覧会カタログを購入しようと思い、見本を見たら、印刷では目の部分が潰れていて台無しになっているではないか。
 だから、メレンコリアと共に、ブランデンブルグのポートレートも是非顔をくっつけて凝視してほしい。印刷では分からない。本物でぜひ鑑賞していただきたいのだ。
 ちなみにドイツ、マグデブルグ大主教であったアルベルト・フォン・ブランデンブルグは、ローマ教皇庁と結託して免罪符であぶく銭を稼ごうとした黒幕である。お金を払えば天国に行けると吹聴したことにマルティン・ルターが怒り、これが元で宗教改革が始まった歴史的人物である。ベルリンのブランデンブルク門の由来ともなった彼について知りたい人はこちらをクリックしてください。

展覧会は撮影禁止なので、添付した版画は小生の画集からスキャンした物である。上が「ドクロのある紋章」(1503年)、下が「尾長猿のいる聖母子」(1498年)いずれも今回の展覧会に出品されているもので、本物はこの画集より全然すごい。印刷物では分からない一本一本の細い線が、人間技とは思えない細密さで描かれている。ここまでできたデューラーはまさに天才以外の何者でもないだろう。
by weltgeist | 2010-12-25 22:19


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