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魚は丸ごと一尾買ってくるに限る (No.866 10/10/23)

 友達の一人に肉屋さんがいて、彼からステーキを楽しむにはTボーンステーキがいいと教えられた。TボーンというのはT字型をした骨を境にして左右で種類の違う肉がついている。片方はサーロイン、もう片方にテンダーロイン(ヒレ肉)とステーキの王道を行く豪華な肉がついているのである。だからTボーンステーキを頼めば一つでサーロインとテンダーロインの二通りの肉が楽しめるというのだ。
 サーロインもテンダーロインも知ってはいたが、それが牛のどの部分であるかまではまったく知らなかった。我々一般の人間はその程度の知識しかないのが普通である。だが、そうした無知をいいことに、焼き肉屋で腿(もも)やランプなどの赤身肉をロースと称して客に提供していることが明らかになった。本物のロースは背骨の両側から最も頭に近い部分の肉であって、それ以外はロースとは言わないと、消費者庁が全国焼肉協会などに見直しを求めている。
 焼肉店でロースを頼むと、普通のロースの他に「上ロース」というランクがある。本物のロースはこの上ロースなのだそうだ。いままでは並ロースを頼むと違ったものを食べさせられていたことになる。我々が肉を頼むとき、それが牛や豚のどの部分かまで考えないし、考えたところで知識がないから分からない。屠殺(とさつ)処理は専門家に委ねられ、解体された肉でしか接する機会がないからだ。だから出されたものが本物のロースであるかどうかは全然分からないのである。
 しかし、こと魚に関してはある程度分かる。マグロのような大きな魚でも解体ショーなどを見て、どこがトロで、どこがカマか程度の見分けは誰でもできる。ところが魚も最近はスーパーで買うのが一般的で、サンマやイワシ、アジのような小型魚を別にすれば、最初から切り身にして販売しているので、肉と似た販売形式になりつつある。魚をおろした経験のない若い奥さんが増えて、切り身になる前の魚がどんな姿をしていたのか分からない。極端な場合切り身の姿で泳いでいると思っている人がいるかもしれない。
 小生のような釣り好きはいつも活きのいいピチピチした魚の姿を見ているから、魚を見れば種類も鮮度も読めるし、得体の知れない魚を切り身にして変な名前で誤魔化していることも分かる。ウマズラをカワハギと呼ぶくらいは可愛いが、シイラを「沖ブリ」などと称して切り身で売っていると、ちょっとまずいんじゃないのと思ってしまう。
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 小生料理を作ることは苦手だし、好きではないが釣ってきた魚の下処理だけは自分でやる。「男は女房が作った料理を黙って食えばいい」が信条だが、魚を釣ってきたら刺身のさくや、煮付けがすぐ出来る切り身の段階までの下作業は小生の役割と思っているのだ。もうこれを30年以上続けているから、魚のおろし方については自信もあるし、魚の種類によってどういう風に包丁を入れたらいいのかもだいたい分かる。
 だから魚を買う場合も、巨大なものを別にすれば一尾まるまる買ってきて、自分で調理する。せっかく人間のために殺された命である。なるべく無駄のないよう全部食べてあげるべきだと思っているから、アラや頭も工夫して食べるようにしているのだ。
 今日は友人が釣ってきたマダイをおろして煮付けで食べた。マダイのようにウロコの硬い魚は、ウロコを完全にとることがコツである。上にあるウロコ引きで、おおざっぱにウロコを剥ぎとったあと、ヒレの付け根や頭の周囲の細かいウロコも出刃包丁の刃先で完全にとる。これさえやっておけば、煮付けたときマダイの皮までウロコに当たることなくおいしく食べられるのだ。
 魚のおろし方まで解説するのは、小生の守備範囲ではないからこの程度でやめておくが、もう一つだけ言っておきたいのは、包丁はおろす前に研いでおき、よく切れるようにしておくことだ。切れない包丁で切った刺身など、身がぐさぐさで食べていても気分がよろしくない。
by weltgeist | 2010-10-23 23:06


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