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理想はPPK (NO.694 10/04/05)

 友人のM君が会いたいと言ってきた。待ち合わせ場所に行くと心持ち青い顔をしている。これは深刻な話になりそうかなと思っていたら、小生の心臓の病状を教えて欲しいと言う。小生より少し若い彼は最近胸の動悸が激しく、自分は心臓病ではないかと疑っているらしい。病気のスーパーマーケットを自認する小生、心臓弁膜症の手術を2度も受けていて人工弁まで付いている体だから、心臓病に関してはちょっとベテランの境地に達している。しかし、話を聞いて安心した。単に動悸がする程度でびくびくしていたら、体がいくつあっても足りなくなる。動悸など自分にとっては日常茶飯事で、たいしたことではないからだ。
 生まれてから一度も休むことなく働き続ける心臓も、長年酷使していると次第に弱ってくる。動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、心室細動など様々なことが起こっても不思議でない年代だから、これは専門医に一度診てもらってとりあえず原因をはっきり解明しておくことを勧めた。
 しかし、別れしなに「大丈夫。そんなこと気にしなくてもいいじんゃないの。人間 PPKだよ」と言ったら、「何、そのPPKって? 」と聞き直された。PPK、すなわち「ピン・ピン・コロリ」である。細かいことは気にしないで気楽に生きて、パッと終わってしまうのが一番だ、という意味で言ったのだが、小生が彼の動悸をあまり問題視しなかったことにどうも納得しなかったようだ。まじめな性格の彼は小生のようにチャランポランには生きられないのだ。
 小生の父親は92歳、母親は94歳で亡くなった。二人とも明治の生まれで、昔の人はろくに医者に行かなくても長生き出来る強靱な体を持っているのだと思った。しかし、二人とも亡くなる数年前からアルツ状態で、最後はただベッドで生きているだけの半植物人間状態で亡くなった。長く生きることは素晴らしいことではあるが、ここまでして生きていることに少し疑問を感じている。父親はまだ意識が少しあったとき「私は長く生きすぎた」と言った言葉が印象に残っている。小生はそれが彼の辞世の言葉と思っている。
 だから、小生の理想はPPKである。昨日まで元気だったのが、突然他界する。残された者はたいへんだが、人間の死に様としては悪いものではないだろう。自分的にはそうした覚悟はある程度出来ているつもりだからPPKで明日死んでも悔いは残らない。もちろん長く生きたいけれど、それは運命の神が決めることである。神様のお迎えがきたら率直に受け入れるつもりである。
 心臓の悪い人は突然の心臓停止などでPPKになる可能性が高い。小生、いつまでもだらだら生き抜いて、最後はヨイヨイになって他人のお世話になりたくはない。みんなに迷惑かけずにあっと言う間にPPKすることは悪くはないと考えているのだ。
 縁起でもない話をするんじゃない、と言われるかもしれないが、自分の人生を常に総括していつお迎えがきてもいいように準備をしておくことは重要だと思う。そうすればその前に自分なりにやり残したことのないような充実した人生が送れるだろう。人生の価値は生きた時間の長さではない。そこにどれだけの質的充実感を詰め込んだかではないだろうか。
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生まれた、生きた、死んだ。たらいから、たらいに移る、ちんぷんかん(一茶)。何も分からずこの世に生み出され、怒濤のような荒波を泳ぎきって、最後はまた何も分からない世界に帰って行く。その意味って何なんだろうか。分からない、分からない、分からない。
by weltgeist | 2010-04-05 21:36


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