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昼寝の誘惑 ・ 「ゲッセマネの祈り」 (No.674 10/03/16)

 昨日は朝3時に起きて渓流釣りに行ったため、今日は眠くて仕方がなかった。睡眠不足で寝が足りていないのだ。結局、今日の昼間は2時間ほどこたつに入ったままうつらうつらと昼寝をしてしまった。気が付くと、体は汗でびっしょりである。今日のポカポカ陽気を無視して電源の入ったこたつに潜り込んでいたので、暑くなりすぎて汗をかいてしまったのだ。
 最近体の体温調節がうまく出来ていないから、寒いときは猛烈に寒く、暑いときは猛烈に暑く感じてしまう。雪の降る日でもTシャツで平気なアメリカ人学生諸君など、小生から見ればまるで宇宙人のようである。知り合いのRさんによれば、過度の寒がり、暑がりは自律神経失調症で体温をうまくコントロール出来なくなっていることが原因らしい。普通は寒ければそれなりに体表の温度を外気温に合わせてくれるのだが、その調整機能がいかれてしまっているのだ。67年も生きると、体もボロボロになってきているのかもしれない。
 そうなると小生、また新たな病気を背負ったことになる。心臓弁膜症、脊柱管狭窄症の他に自律神経失調症の三重苦ということになる。まさに、小生の体は「病気の百貨店」状態、なんでも有りますの病気のスーパーマーケットなのだ。

 昼間眠くなるのは一種のガス欠状態である。体を調子よく動かしていくためのコンディションが整わず、休ませてくれと体が要求しているのだ。車ならガソリンが切れてエンジンがストップするが、人間はこうした「休養の要請」を体が無意識的に発して、睡魔となって襲ってくるのである。
 小生はこんな時すぐさま昼寝体勢に入って、寝かせてもらうことにしている。別に重要な仕事が待っているわけではない。時間はたっぷりあるのだから、遠慮無く昼寝をすることにしている。そして、昼寝から目覚めると、睡魔がなくなって実に爽快な気分になれる。人間、眠たいときは何も考えずに即眠ることが大切なのだ。
 だが、絶対眠ってはいけない時というものがある。たとえば車を運転している時だ。ところがこうした時ほど逆に眠くなるから不思議である。小生は何故かハンドルを握るといつも眠気がしてくるのだ。助手席に座っている時は全然眠くないのに、運転を代わったとたんに眠くなってくる。多分、居眠り運転は危険だから「眠ってはいけない」と自分に強く言い聞かせることで、返って眠気を誘うのではないかと思っている。その証拠にあまりに眠いからと、交代した運転を止めて再び助手席に戻ると眠気がなくなることがしばしばあるからだ。
 このように何か重要なことがあって、昼寝など出来ない状況に追い込まれると逆に眠くなる悪い癖が、皆さんにはないだろうか。実は、今から2千年ほど前の先輩たちも肝心な時に居眠りをして大失敗をしたことがあったのである。

 マタイ福音書の26章にはイエス・キリストが12人の弟子の一人、ユダの裏切りで捕らえられる直前、自分に迫る危険を知って父なる神に祈る「ゲッセマネの祈り」という話がある。キリストは必死になって祈りを捧げているのだが、下で待っている弟子たちはこの間、だらしなく居眠りをしている。それを知ったキリストは「あなたがたは、そんなに一時間でもわたしといっしょに目をさましていることができなかったのか」(マタイ26:40)と怒るのだが、弟子たちは一度注意されたくらいでは眠気が全然とれない。何故ここまで眠くなったのか分からないが、彼らはその後3度も寝ていることを注意されているのである。
 キリストは緊張感が欠けた頼りにならない弟子たちを見て、自分が捕らえられた時お前たちは自分を見捨てるだろうと、弟子に予言する。そして、実際にキリストが捕まると、弟子たちは彼を置いて逃げてしまうのだ。ペテロなど「お前もキリストの仲間か」と尋問され、三度も「違う」と否定する。キリストの必死の祈りの時は居眠りをし、いざ捕まったらさっさと逃げてしまうどうしようもない存在が人間なのだ。聖書はここで人間の罪、不完全さと神との間にある溝の深さを比喩的に示しているのである。
 まもなくイースター(今年の復活祭は4月4日)である。この日キリストは死から復活されたとされ、キリスト教徒はお祝いをする。しかし、彼が十字架に架けられる少し前、紀元35年の丁度今頃キリストの祈りも聞かずに愚かな人間たちは何度注意されても居眠りをつづけていたのである。
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ロンドン、ナショナルギャラリーにあるアンドレア・マンテーニャの「ゲッセマネの祈り」。
Andrea Mantegna / Agony in the Garden / 1459 / London National Gallery
キリストが殺される直前、オリーブ山で祈っている傍らで眠りこける弟子たちのだらしない姿を描いた「ゲッセマネの祈り」は沢山の画家が描いているが、なかでも最も有名なのがこのマンテーニャの絵である。もしロンドンに行かれる機会があったら、以前に書いたヤン・ファン・アイクの「ジョバンニ・アーノルフィーニー夫妻の肖像」と共に、是非ナショナルギャラリーで見てきて欲しい絵の一枚である。また、「ロンドンまで行かれないよ」と言う方は、上野の「国立西洋美術館」にあるルーカス・クラナッハが描いた「ゲッセマネの祈り」を覧いただきたい。

by weltgeist | 2010-03-16 22:55


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