2007年6月、小生は韓国南部、ソムジンガンという川でアユ釣りをしていた。韓国の川は釣り人が少なくアユの魚影は抜群に濃い。連日信じられないほど沢山のアユが釣れて「ここは天国のような夢の釣り場だ、アユがいくらでも釣れるぞ」と喜んでいたのである。ところが、釣りを始めて3日目の午後、突然腰から足の付け根付近に強烈な痛みが来て、立っていられなくなったのだ。
それまでなんの問題もなく川に立ち込んで釣っていたのが、竿を持っていることもできないほどの痛みが突然襲ってきたのである。こうなると釣りどころではない。陸に上がって釣友が釣るのを見ているだけの病人状態になってしまった。しかし、まだこのときはそれが長い苦難の旅の始まりとは思いもしなかった。最終日は釣りができなかったとはいえ、帰国してしばらくすると痛みは消えたからあのときのことはすぐに忘れてしまったのである。ところが、それからしばらくした頃、釣りに行ってまた同じ痛みが出てくるようになった。原因は分からないが、ぎっくり腰とは少し違う痛みが腰と左足に出てくるようになったのである。 だが、それも最初は釣りに行って長く立っているときだけで、普段は何の症状も出ない。だから痛みがでたときだけ、近くの整形外科に行って電気治療をやる程度で済ませていたのである。病気がどれほどひどいものになるか、全然気づかず、ピントはずれな治療を行っていたのだ。それでも昨年の前半はまだ我慢出来るくらいのものだったから、ちょっと程度の悪いぎっくり腰で、しばらくすれば自然に治ると思っていたのである。 ただ、それでも小生には腰痛があるならそれをしっかり治しておかなければならない理由があった。7月にパミール高原に行く予定をしていたのだ。4000mの山を登るには足腰は万全でなければならない。そのためには足腰の鍛錬としてトレーニングをしておく必要がある。しかし、腰が痛いとそれが出来ないから近くの整形外科病院で強烈な痛み止め、「ボルタレン」を処方してもらい、これを飲んでトレーニングを開始したのである。それが悪夢の第二段階の始まりであった。 ボルタレンは鎮痛効果の高い薬だが、胃を荒らす副作用が強い。小生は心臓手術以後、血液に血栓が出来ないように、抗血液凝固剤のワーファリンという薬を常用している。これを飲んでいると、ちょっとした出血でも血が止まりにくくなるのだが、この病院はそんなことを考慮せずにボルタレンを処方し、それを何の疑問もなしに飲んだ小生は、たちまち胃内出血性の胃潰瘍を起こしてしまったのである。あとでこの病院が「藪医者」で評判と分かったのだが、すでに手遅れ。別な病院に即入院で一ヶ月近くを病院ベッドで過ごす騒ぎになってしまったのである。 胃潰瘍が治って退院したのが5月末、パミール出発は7月1日である。それまでに腰痛は直しておかないとパミールにも行けなくなる。長年あこがれていた神秘の秘境・パミールにはどうしても行きたい。たとえはいつくばっても行くぞと思っていた小生は、胃潰瘍から退院したその足で、ある医大の整形外科を訪ねた。腰痛では一流と評判なその病院でMRIによる検査を受けたところ、軽度の脊柱管狭窄症であるとの診断を受けた。これは、加齢によって脊柱の骨の間隔が狭くなり、そこから神経が飛び出して痛みを感じるのだという診断であった。 激痛の原因は、どうやら長年酷使してきた脊椎骨の圧迫による脊柱管狭窄症という病名であるということは分かった。だが、医大整形外科の医師が言うには「あなたの病気は年齢的なものだが、程度としてはまだ軽い。本格的な治療をするなら、脊椎に痛み止めを打つブロック注射、さらに悪化したら手術という道はあるが、まだそこまでやる必要はないだろう。まずは鎮痛剤と運動療法によって直したらどうだ」と言われ、パミール高原用に特別な痛み止めの処方箋を出してくれた。 パミールではその薬を飲んでしのいだのだが、薬が効いたのか、山を登っているときはさして痛みは感じなかった。ところが、やはり、体には無理な力が掛かっていたのだろう。帰国して痛み止めを止めたとたんに、前とはレベルが違う猛烈な痛みが再発したのである。だが、頼みの医大病院は相変わらず薬で対処するだけである。薬がすでに効かないまでになっているのに、先生は、「たいしたことはないだろう」と判断してそれ以上の治療をやってくれないのだ。 昨年の10月頃から小生の体は信じられないほどの早さで悪くなっていった。痛みは連日起こるようになり、我慢できないほどにまで悪化してきたのだ。たまらなくなった小生は、新たに評判の高い整形外科の病院を探して訪ねる「病院行脚」を開始することになる。3軒の有名病院を訪ね、その間に整体の治療にも通った。しかし、何をやっても痛みは減るどころか強くなるばかりで、腰から左足の先までしびれがくるまでになってきたのである。 小生のようにどんな病院に行っても治らない人を「腰痛難民」というのだそうだ。もはや現代医学から見放された難民は、痛さに悲痛な叫びをあげつつ、新たな救い主を求めて新病院を探し歩く。いままで受けたどの病院の処方も全く効果がなかった。しかし、「きっとどこかに治してくれるところがある」と信じて、あてどもない荒野をさ迷い歩くのである。だが、そんな所があるのだろうか。なんとか治してくれる所を見つけなければ、大好きな釣りにも、また蝶の採集にも行けなくなる。いやそれどころか、ちょっとした散歩さえ出来なくなるかもしれないのだ。 今の痛みが軽減されるならなんでもいい。小生そう思いながら先日ある友人から教えてもらったペインクリニックなる痛み専門の病院のことを思い出したのである。早速ネットで検索すると、家から車で10分くらいのところに、結構有名なペインクリニックがあるのを見つけた。そのときは藁をも掴む気持ちでそのクリニックに行ったのである。そして・・・・。 以下明日に続く
by weltgeist
| 2010-01-27 23:59
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