人気ブログランキング | 話題のタグを見る

キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)

7月3日
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_1214244.gif 昨日超えた3000mの峠を過ぎると、いよいよキルギス中央部の平原地帯に入った。この付近は土地も肥沃なのか、麦、ひまわり、トウモロコシや綿などが植えられた畑が続き、やがてキルギス第二の都市・オシュに着いた。ここで我々はセルゲイが手配したキルギス国内での蝶の採集許可証をお役人からもらうことになっている。
 丁度昼時なので許可証が届くまでの間、町のレストランに入って地元のキルギス料理を食べて待つことにした。メニューはなく、パーシャがなにやら注文するとラフマンと言う肉入りのヌードルに、ナンと呼ばれるキルギス独特の形をしたパンが出てきた。一人55ソム(約140円)と安い。しかし、下の写真のように一見するとうまそうだが、麺が何か生煮えのように固くてそれほど美味しいとも思えなかった。
 食事を済ませても何故か許可証は届かないようで、その間オシュの町にある小さな林のところで捕虫網を出したら、地元の子供が二人やってきて小生の回りをついて歩く。英語は通じないので、こちらは知っているロシア語を連発したら、ゲラゲラ笑っている。発音は悪いが、どうやら意味は通じたらしい。カメラを向けると一丁前にポーズをとってくれた。どうもキルギス人は大人も子供もとても人なつっこく、西欧の国などでしばしば感じる冷たさが全然ない。これはこの国の国民性なのかもしれない。
 2時過ぎにオシュを出ると、さらに2400mの峠をもう一つ越えて、夕方6時半過ぎにカラアルチャという場所に着いた。ここは国道から少し山に入った草原で、右手の木が一本もない山というか、丘のような所にアポロニウスウスバシロチョウがいるという。しかし、もう本日は遅いから蝶は飛ばない。蝶との出会いは明日からである。それにしても、丸二日走ってまだパミールの入り口であるアライ山脈に着かないのだ。目的地はまだまだずっと先のようである。
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_2340342.jpg
左・キルギス第二の大都市・オシュで出会った子供。とても人なつっこくかわいかった。右上・オシュのレストランから見た町並み。遊牧民の家とは違ったしっかりした町で車も多い。下・ラフマンという肉入りヌードルとナン。インドのナンと同じように釜の天上に貼り付けて焼くが、普通のパンに似ている。
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_2341150.jpg
オシュの町で食料などを買い足すパーシャとアレクセイ。店員はご覧の通り、日本人にそっくりな顔をしている。しかし、普通の市民はとてもファミリアなのに、社会主義の影響がまだ残っているのか、物を売っている人は案外ぶすっとして、ありがとうとも言わない。
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_23412446.jpg
オシュを過ぎると道路がダートになり、ときどきこのように道の中を羊や牛が群れで歩いている。


7月4日
 昨晩から降り出した雨は朝まで続いていた。蝶にとって雨は大敵である。翅が濡れるから彼らもこうした日は飛ばないのだ。このため、我々も朝はゆっくり寝ていて、天気待ち。お昼頃にようやく晴れてきたので、向かいに見える高さ500mほどの山に登る。パーシャによればこの山の斜面にアポロニウスウスバシロチョウがいるのだという。もしそれが飛んでいるとなれば、小生にとって夢にまで見た赤い斑紋のあるウスバシロチョウと初めて出会えることになるのだ。
 だが、この山、簡単そうに見えていて、いざ登り出すと意外に急峻で登りにくい。まだ息切れがするほどの標高ではないが、普段の運動不足がたたったのか、少し登ると足が痙攣して動かなくなった。急な斜面で痙攣が収まるまで待っていると、白い蝶がこちらに向かって飛んでくるではないか。夢中でネットを振ると中に赤い斑紋のある大きな蝶が入っている。
 やった。今回のキルギスで赤い斑紋のあるアポロニウスウスバシロチョウが最初の一振りで採れたのである。本来ならこの蝶は今回の予定には入っていなかった。もうシーズンが終わっているはずだったからだ。だが、今年のキルギスは異常に寒くてシーズンが遅れていて、今でも飛んでいるのだとパーシャが言っていた。半信半疑だったが、パーシャの言うとおりだとすると、アポロニウスが採れるのは嬉しいが、それで他の蝶のシーズンが早すぎて採れなくなるかもしれない。痛し痒しの困った事態ともなりうるのだ。
 この日、小生は3頭のアポロニウスを採り、その後はこの蝶の撮影に専念した。
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_2342123.jpg
7月3日から5日までキャンプしたカラアルチャの草原。右手に見える山を登って行くとアポロニウスウスバシロチョウがいるというが、どこにでもいるわけではなく、生息域は想像以上に狭い所に限定されるようだ。情報を持ったガイドに「あの山のこの付近」などと、しっかり教えてもらわないと影も形も見えないことになる。
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_23423859.jpg
これがアポロニウスウスバシロチョウ。ウスバシロチョウの仲間では大型の部類で、遠くからでも飛んでいるのが良く分かる。翅が大きい割には飛翔力は弱いようで、フワフワとゆっくり飛んでくる。
キルギス、北パミール高原の旅3、オシュから、カラアルチャ (No.454 09/07/20)_d0151247_2343779.jpg
草原でキャンプをしていると、夕方地元の遊牧民が馬に乗って遊びにきた。日本からの客人など見たこともないのだろう。しきりにロシア語で何か言ってくるが、意味は全然分からない。そのうちパーシャが「馬に乗ってみろ」というので乗せてもらう。地元の人が使うムチを振り上げると、気分は遊牧民そのものである。
by weltgeist | 2009-07-20 23:48


<< キルギス、北パミール高原の旅4... キルギス、北パミール高原の旅2... >>