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今朝のビッグニュース (No.2022 14/08/30)

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 今朝起きたら、とんでもないものが庭にいた。誰かが我が家を狙って子猫を捨てていったのだ。朝イチ、庭に出たイライがすぐに異変に気づいて妙な動きをしている。どこからともなく子猫の鳴き声が聞こえてきて反応したのだ。それで庭に出た妻がすぐに写真のような子猫を抱いてきた。
 大きさは体長が10㎝くらい、まだ生後一ヶ月は経っていない生まれたばかりの子猫である。こんな子猫を捨てていくなんてひどい奴がいるものだ。きっと我が家が猫好きということを知っていて、狙い定めて捨てていったのではないかと思う。
 昨晩は雨が降ったようで、体は濡れていて寒そうにふるえている。どうもペルシャ系の長毛種のようで、長い毛並みがびっしょり濡れている。これを見てしまったら放っておくわけにもいかない。まずは家の中に入れて顔や体の汚れを洗って落としてやった。
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 朝これを見つけたことで本日の我が家の予定はすべて滅茶苦茶になってしまった。まず餌とトイレの準備をしなければならない。我が家にいるイライが子猫のとき使っていた子猫用ミルクやほ乳瓶、トイレ仕付けシートなどはもう残っていない。おなかが空いているだろうと、成描用イライの餌をあげてみたが全然食べない。まだ子猫過ぎて母親のミルクで育っていたろうから、牛乳などでなければ飲めないのだろう。これらをできるだけ急いで買いそろえなければならない。
 早速近所のスーパーに走って、これらを準備。リビングの床にトイレシートを敷き、ぬるま湯で溶いた子猫用ミルクをほ乳瓶に入れて飲ませようとするだけでてんてこ舞いである。

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 一方で大慌てになったのが先住者であるイライだ。突然の子猫登場に戸惑いと不信感から、子猫のところにやってきてはおっかなびっくり様子を見ている。可愛さという点では子猫に負けるかもしれないと思っているイライは、今後自分への愛情が分散されるかもしれないと不安なのだ。
 いずれにしても、今日は突然のちん入者によって我が家全体がかき回されるような大混乱に陥ってしまった。明日以降、この二匹の猫をどうするか。とりあえずは明日の日曜日、何人かの人に「猫を飼ってくれませんか」と頼むつもりだが、ことはそんなに簡単にはいかないだろう。そうなると、これから我が家は二匹の猫を抱えることになる。これは天からの授かり物として喜んで受けなければならないのだろうか。ああ困った。どうしたらいいのか、分からない・・・。


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by Weltgeist | 2014-08-30 23:29

鄙(ひな)まれとは人の隠された良きところを認めること (No.2021 14/08/27)

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 美人と言う言葉は一般的のようであって実は一般的ではない。蓼食う虫も好き好きで、人それぞれ好みが違うからすべての人が絶対美人だと断言することは出来ない。むしろそうした個人的な好みがあるから、多くの人がそれぞれの好みに合った好きな人を見つけることができるのだ。絶対的美人が誰にも同じだったら、ほとんどの人は美人獲得競争に敗れて寂しい思いをさせられることだろう。むしろ、誰も鼻も引っかけないような人の中にも、隠された美を見いだして「美しい」と思うから人はうまく伴侶を見つけることができるのである。
 上の女性は今年の夏、四川省の奥地で出会ったチベット人である。小生はこの女性を見て「美人だ」と思った。都会の着飾った「美人」を見飽きてる人には「なんだ、こんな田舎くさい女」と思うかもしれないが、小生は「鄙(ひな)まれ」という言葉を思い出した。鄙とは沢山の人が住む都会を離れた超田舎、辺鄙な地域を意味する言葉である。そんな田舎に不釣り合いな美人に出会って小生はドキッとしたのである。
 こんなへんぴな場所にきれいな人がいたことに驚き、「これは絶対鄙まれだ」と素直に思った。小生の感性ではそれで十分なのだ。

 こうした感性の多様性のなかに人生を豊かに生きる大切な知恵が潜んでいる気がする。人を様々に評価したいことがあっても悪く見ないことである。良い面だけを取り上げ、気に入らないところは無視する。あえて悪いことは見ないよう心がけるのである。蓼食う虫も好き好きの精神で、その人の隠された良い面を見てあげるのだ。そうすれば相手からも良い反応が返ってくるだろう。不機嫌、悪意で人を見れば悪意の照り返しが返ってきて、いっそう気分が悪くなる。好循環は次の好循環を生む。悪しきスパイラルに落ち込む先は地獄の苦しみである。
 だから小生は意図的に人の良い面を見てあげるよう心がけることにしている。嫌な奴だなと思っても、そのことは見ないようにして、彼の良いところを探し出してやろうと努力するのだ。そうすれば相手から決して悪い反応は返ってこない。ぎすぎすした人間関係もこうした気持ちがあれば和らぐと思っているのである。
 ものごとを見る目は、見る人の心の反映である。心が荒み、悪しき気持ちに囚われていれば、見えてくるものごとも悪いものにしか映らない。人の良い面を見てあげるということは、実はいつも自分の心を良き状態にすることでもあるのだ。しかし、そんな風に自分を保つことは聖人でもない限り不可能である。かくを言う小生も未だにはらわたが煮えくりかえるほど嫌な奴と思う人がいて、これをぬぐい去ることができない。理想論は言うに易しく、やるはむずかしいことなのである。
 それと良いと思ったことがしばらくすると普通に見えてきて、やがては鼻についてくることがある。蓼がおいしいと思っていたが、良く味わってみたらまずかったと気がつく。そうなると「こんなはずではなかった」という事態に発展するすることもあるだろう。
 しかし、虫は欲望のままに蓼に食いついているが、人は理性で自分をコントロールすることができる。人の良い所を積極的に取り上げて認めてあげたいと常に思い、努力することで実現する。何の努力もなしに欲望のおもむくままに生きることは虫けら変わるところがない。難しく厳しい道のりであるが、人は常に己の心と他を見るまなざしを良き状態に保つ努力をするしかないのである。 


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by Weltgeist | 2014-08-27 23:58

本日の鮎釣りは超キビシかったです (No.2020 14/08/22)

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 昨日予告したように関東地方某河川に鮎釣りに行って来ました。目標はッ抜け、すなわちヒトツ、フタッツ、ミッツ・・ココノツと9尾まではツがつくが、10尾越えるとジュウと、ツがつかなくなる。これが最低の目標値、10尾以上のッ抜けは当然のことと気楽な気持ちでやって来た。
 しかし、甘かった。準備不足と久しぶりに鮎釣りをやったため、取り込みがうまくいかず、せっかく掛けた鮎をおとりもろとも逃がすへまをやり、全然数が伸びない。
 ご覧のような良い場所を攻めながら、釣れてくる反応が極めて鈍い。周囲のいる釣り人もみな苦戦しているようだ。
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 本日は朝から雲一つない晴天で、猛烈に暑い。広島では集中豪雨でたいへんな事態となっているというのに、某河川は平穏そのもの。しかし、鮎の方も平穏そのもので、小生が送り込むおとりに反応が全くない。めまいがするほどの暑さのなか頑張ったが、午後2時半、「こんなに釣れないんじゃやってられない」とギブアップ。
 昨日は絶対ツ抜けだ、と張り切っていたのが、この時点でもうやる気がなくなり、河原に座り込んでしまった。しかし、惨敗したくせになぜか笑い顔である。もう少し反省した顔をせよ、とのお言葉が飛んできそうな能天気顔をしている。
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 これが本日釣れた最大の天然鮎。本当はこんなやつをごっそり釣るつもりだったが、残念。それで、お前の釣果はいったいいくつのツがあったんだ? ですって・・・。
お恥ずかしくてとてもご質問に答えることが出来ません。

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by Weltgeist | 2014-08-22 22:24

明日は急遽鮎釣りに行くことになった (No.2019 14/08/21)

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 今のようにチョウチョ採りを始める前まで、この季節の小生はほぼ毎週のように鮎釣りに行っていた。それがチョウチョを始めてすっかり釣りに行かなくなった。釣りが面白くなくなったわけではない。それよりチョウチョ採りの方が忙しくなって、釣りにいく時間が無くなってしまったのだ。だが、明日は久しぶりに鮎釣りに行く予定をしている。
 急に鮎釣りに行くことになった理由は天然の鮎を食べたくなったからだ。「鮎なんてスーパーで1尾2~3百円で売ってるからそれでいいじゃないか」と言うのは素人の言葉。スーパーで売られている鮎は養殖魚で、天然魚ではない。養殖と天然では全然違うのだ。何が違うかって?
 ノングルメの小生にはうまく説明できないが、とにかく味が全然違う。同じ鮎の形をしていながら全く別物の魚なのだ。そして釣りで獲る魚だから普通の市場に出る量は極端に少なく、仮に出たとしたら信じられないほど高額で取引される。数年前に三越デパート地下で「天然鮎」の値段を見たら、養殖魚のほぼ10倍で売られていた。養殖と天然の食味が10倍も差があるかと言われれば首を傾げたくなるが、それでもその希少性も相まって一般人が気楽に食べられる魚でないのはやむを得ない。
 天然鮎を賞味できることは鮎釣りをする人の特権である。だから、明日は釣りに行くのだ。しかし、鮎釣りは非常に敷居の高い釣りで、用意する道具からしてたいへん。川の中に立ち込むから水に入っても平気なウエットタイツや、水中を歩くウエーディングシューズ、釣れた鮎を入れておく引き船とかタマアミなどを久しぶりに納戸から取り出したらどれもがカビだらけになっていた。小生がいかに鮎釣りご無沙汰であったか道具の方から責められている気がした。(写真参照)
 今日の午後これらのカビやホコリを払い、鮎竿も一本ずつ伸ばして、傷や不具合がないかを点検した。さらにこのあと仕掛け類も用意しなければならない。40ミクロン前後の超極細糸で作る仕掛けは自分が納得するような形に作り上げていかなければならない。これがものすごく面倒である。
 しかし、ひどく手間のかかるそうした作業も全部やり終えて、今夜はいつもよりずっと早く布団に入って寝ることにした。明日の朝は早い。小生は遠足前夜の小学生のようにわくわくしながら布団に入るのである。明日は関東の某**川に入って天然鮎を狙っていることだろう。どんな結果になるか。しばらくやっていないから勘が鈍って1尾も釣れないかもしれない。でも、最低でもツ抜け(ヒト、フタと数えるとき9尾まではツがつくが、10尾越えるとがなくなることから、10尾以上釣ることを釣り師はツ抜けと言います)はしたいと思っている。どんな結果になるか、明日は必ず報告します。
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by Weltgeist | 2014-08-21 20:49

中国幻蝶探索紀行17、最終回、さらば北京东灵山、さらば中国よ (No.2018 14/08/17)

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 今日は中国を離れて帰国する日。なぜかこの日の小生はたいへん落ち着きがなく、焦り気味であった。飛行機に絶対間に合うように北京空港まで行かなければならない。そのためには东灵山をできるだけ早い時間に出発して時間的余裕を作っておいた方がいいのだ。
 まずバスの発着場がホテルからどのくらいの距離にあるのか昨晩の説明ではよく分からなかった。しかし、ホテルを出るのは9時半で間に合う、バス停までどんなにかかっても30分以内で行くとホテルの人は言っていたから時速60㎞で走っても最大で30㎞以内だろう。それでもかなりの距離だから少しでも早くバス停に着いていた方がいいと思い、9時にはチェックアウトを済ませて待っていた。しかし、焦るのは小生だけで送ってくれる側の人はそんな焦りなど毛頭持っていない。余裕綽々で約束の9時半ピッタリに車がやって来た。それも二人のヘルプの女性まで連れてである。
 運転してくれているのは品のいい女性(中央の黒いシャツの人)で、小生が推測するにどうやらホテルオーナーの娘ではないかと思う。彼女に「快点」(急いで)と書いた紙を見せると、分かったという風にうなずいて、急な山道をかなりのスピードで走ってくれた。そのかいがあって10時少し前にはバス発着所に到着したのである。

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 発着所ではバスが10時の始発に間に合わせて、少し前から乗客を乗せて準備しているものと思っていた。ノンストップの高速バスでなければ3時間で北京中心部まで行くことはできないからさぞかしスピードの出るバスと思い込んでいたのである。だが、出発時間の10時少し前なのにバスはまだいない。
 何をしてるんだ。時は金なりではないか。こちらは一分でも早く着いた方がいいのに、バスがないのだ。こんなことで本当に3時間で北京中央まで行き着けるのか。次第に焦りがつのってくるが小生の中国語能力では気持ちを伝えたくてもどうにもならない。
 バスがやって来たのは10時20分だった。「遅い、遅いぞーッ」とイライラしてバスの方に行くと、まず最初に沢山の登山者がぞろぞろと出てくる。これは北京からやって来た折り返しのバスだったのだ。到着からして20分遅れているから、北京に戻る時間はもっと遅れることになるだろう。
 そして女性に「汽车票」(バスの切符)と書くと、車掌を指さして「21」と書いてくれた。車内の車掌から買うらしいが、これはてっきり210元だと百元札を2枚取り出そうとしたら、彼女が「こんな面倒な馬鹿オヤジにかまっていられない」という態度で、いきなりそのうちの一枚を引き抜いて車掌に渡した。何と210元ではなく21元(約380円)だと言って百元でおつりを返してくれたのである。安い。安すぎる。
 だが、窓越しの彼女にお礼をいう間にすぐさまバスは出発した。そして、発車してすぐに車掌が「次は****でーす」と中国語で次の停留所を告げている。高速リムジンバスなんてとんでもない。田舎を走る普通の路線バスであることが分かったのだ。安いわけである。

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 おいおい、これで本当に北京中心部まで3時間で行くのか。昨日英語を話す青年は確かに終点が「 Central of Beijing City 」と言っていた。そこからなら空港へ行くタクシーも拾えるという話だった。だが、バスの車内はご覧のようにのどかで、誰一人急いでいる人はいない。中には車内で日傘を公然と出している人さえいる。そして次々と停留所に止まっては地元のお客を乗せていく。
 北京に行ったことのある人はご存知の通り市内の交通渋滞はすさまじい。これにはまってしまえば3時間で行き着くはずがない。だが、それでも田舎道を走っている段階では各駅停車ながら渋滞も無く順調に走っていく。そしてトイレ休憩をした12時過ぎに思い切って「北京」と書いた紙を車掌に見せて、自分の腕時計の針で到着予定時刻を示させた。するとこの車掌さん、平然と午後1時の所をさしている。周囲はまだ山のなかで北京市とはとうてい思えない場所なのに予定通り1時間後の午後1時に着くと言うのである。これは東京の例で言えば奥多摩の御岳か青梅の山の中にいて、そこから渋谷あたりまで1時間で行くと言うのと同じ感覚である。
 もうこの時点で小生は帰国便に乗れることを半ば諦めていた。あと1時間で北京中央に着けるはずがないからだ。そして時計は約束の1時を過ぎて1時半近くになってきた。もう絶対駄目だと思ったのである。
 ところがあるところでバスが止まると乗客全員が降り始めた。そして車掌が小生も降りろと手で合図した。奇跡のようなことだが、1時半に終点に着いたのだ。時間で言えば20分の遅れを除いて3時間10分で着いたことになる。しかし、周囲を見渡してもどう見ても北京中心とは思えない。かなり田舎である。
 バスは北京の西の郊外、苹果園というところに着いたのである。つまり渋滞の本場である市内中心には入らず、郊外の苹果園が終点だったから3時間でこれたのである。後で調べたらここは地下鉄もあるようだが、複雑な乗り換えなど危なくてやっていられない。道路に沢山並んでいた客待ちタクシーの運転手に「北京机场3号航站」(北京空港第三ターミナルへ)と示すと、周囲にたむろしていた運転手がいっせいに、ホーッという声を上げた。ここから空港まで行くなんてのは上客なのだろう。
 だが、そんなことよりこちらはチェックインに間に合うかどうか必死なのだ。運転手に「快点、急、急」(急げ急げ)とまた紙に書いて見せると、彼は分かったという仕草をして北京空港まで走り始めた。苹果園は西の郊外、北京空港は北東の郊外にある。渋滞の激しい北京市内に入ることなく外側を環状に走る高速をぐるっと回って2時半に第三ターミナルに着いた。料金は180元だった。このときばかりは気前よく200元渡してチェックインカウンターへ急いだのである。そして何とか無事に飛行機に乗ることができ、その日の夜遅く羽田空港に到着したのだった。

中国幻蝶探索紀行はこれで終わりです。長くおつきあいしていただいた方にはこの場を借りて御礼申し上げます。

 毎日が危うい、薄氷を踏むようなことの連続だったが、とにかく無事に日本に帰れてホッとしている。帰国直後、一時自分は何か燃え尽きたような気持ちになり、何をやるのもものうい気持ちになっていた。このブログも毎日書くことが苦痛で、切れ切れの掲載となってしまったことはお詫びいたします。
 中国。巨大でものすごく懐の広い国であることはたしかです。四川省で悪い人にやられた時は「もうこんな国には来ないぞ」と思ったが、北京では逆に暖かい心の皆さんから助けられた。そんなことがあって、来年、もう一度中国へ行ってもいいかなという気持ちも芽生えている。まぼろしのチベットウスバシロチョウはちょっとした判断ミスからとり逃がしてしまった。来年、あいつをもう一度追いかけて見るのは悪くないな、と思い始めているのである。


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by Weltgeist | 2014-08-18 22:28

中国幻蝶探索紀行16、第二部、北京东灵山でオオアカボシウスバシロチョウとも遭遇 (No.2017 14/08/15)

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 昨晩ホテルの人から「お前がトラブルなく帰国便に乗りたければ、本日の山登りは諦めた方が無難だ」と言われた。しかし、バスの発車時間は10時、北京中央まで3時間で行くというから、そこから空港までタクシーを飛ばせば夕方5時の飛行機には間に合うはずである。もしバスが3時間でなく5時間、6時間もかかったら飛行機に間に合わないが、3時間で行くとホテルの人が言うし、バス停まで車で送ってくれるというから明日の帰国便は間に合うと判断して、本日もチョウチョの探索を続行することにした。少々危ない選択だったが东灵山にいる二種類のパルナシウスのうちの残された一種、オオアカボシウスバシロチョウの観察は絶対外したくなかったのである。
 东灵山ではアカボシウスバシロチョウは山頂近い付近にいるのに対して、オオアカボシウスバシロチョウは1700m前後のやや低い場所にいる。ここでオオアカボシをとったことのあるTさんから教えてもらった情報によれば、リフトの東側の比較的低いところにいたという。また四川で一緒だった巨匠はリフト終点から東側に少し行ったやや高い斜面で見ていると教えてくれた。このことからオオアカボシはかなり広い範囲にいるのではないかと自分なりの判断をした。
 写真は前日リフトの上から撮ったものであるが、左側の岩の出っ張り付近が巨匠が言うポイントのようだ。一方、Tさんが言う場所はもっと下の低い森の切れたところのようだ。これらのポイントを昨日中に偵察しておくつもりだったのに、不意の雷雨で偵察できていない。今日は最初からそれを探すしかないのである。
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 ポイントの探索はリフトの東側(向かって右手)の草原を重点的に行った。オオアカボシウスバがどういう場所を好むのか、全然知識はない。気持ちのいい草原ではヒョウモンチョウがボチボチ飛んでいるが、はたしてこんな場所でいいのか分からない。しかし、四川で巨匠から教わったことはパルナシウスを見つけるなら、彼らの餌である食草の生えている場所を見つけ、そこで待つことである。ただ漠然と草原で待っていても駄目だ。まずは食草を探すことにした。

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 オオアカボシの食草はよく分からないが、草原を歩いているとき、足下にキリンソウが生えているのを見つけた。パルナシウスの典型的な食草である。きっとオオアカボシはこれを食べているのだろうと確信した。だが、キリンソウが一本や二本では駄目だ。なるべく沢山生えているところはないかと探したら、ちょっとした岩の陰にキリンソウの群落を見つけた。生えている草の数からして絶対やってくると信じるに足りる量である。小生はその場所で待ち受けることにしたのである。

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 すると昨日のアカボシと同じようにちょっと滑空気味に飛んでくる白い蝶を見つけた。狙い違わずオオアカボシウスバシロチョウが飛んできたのだ。初めて見るオオアカボシは、とても大きくて立派な姿をしていた。これまで小生が採ったことのあるパルナシウスの中でも最大級の大きさである。

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 小生が見つけたキリンソウの群落地はバッチリの場所だった。オオアカボシウスバシロチョウは大きいから遠くからでも飛んでいるのがよく見えた。それが待っているとこの群落の上を必ずと言っていいほど通過していく。なかなか止まってくれずカメラを持って走り回されだけれど、それでも止まったものをうまく撮ることができたのはこの場所が良かったからだ。羽化したばかりのような純白さで輝く白い翅、鮮血を思わせる赤い斑紋が印象的なオオアカボシウスバシロチョウのアップが撮れて昨日のアカボシ同様大満足な一日を過ごせたのである。
 かくて幸福な一日は終わった。明日は思惑通り、順調に空港までたどり着けるかが問題である。気がかりなのは行きに空港からタクシーで直行したとき4時間近く掛かったことだ。ホテルの人は北京の中心( Central of Beijing )まで3時間で行く。そこからタクシーをつかまえればいいというが、北京中央部の交通渋滞はすごい。本当にバスは3時間で北京中央まで行くのだろうか。オオアカボシウスバシロチョウの観察を終えて気分良くホテルまで戻ったが、そのことを考えると次第に心配になってきたのである。

以下続きます。


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by Weltgeist | 2014-08-15 23:51

中国幻蝶探索紀行15、第二部、东灵山で窮地に追い込まれてしまった (No.2016 14/08/14)

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 东灵山でのアカボシウスバシロチョウ観察初日はまずまずの成果を納め、獅子が待ち受けるこのホテルに気持ちよく戻ってくることができた。そしてフロントの女性に帰る日のタクシーを予約しておきたいと軽い気持ちで頼んだのである。すると、「この村にはタクシーはない」と考えてもいなかったことを言われてしまった。行きは北京空港から直接タクシーでここまで来たが、有数の観光地で人も沢山来ているからタクシーがないなど思ってもいなかったのだ。
 だが、そうだとすると観光客はどうやってここまで来ているか。自家用車もあるだろうが、バスなどの公的交通機関がなければあれだけの人数が来れるはずがない。絶対何か方法があるだろう。だから帰りのことなど心配する必要は毛頭ないと思っていたのである。

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 自分としてはこの問題がそれほど深刻なものとの認識はまだなかった。それより明日のオオアカボシウスバシロチョウ観察の準備の方が忙しいのだ。ところが夕食を食べて部屋のなかで明日の準備をしていたら、誰かがドアをノックする。開けるとフロントの女性など3人の人が何かを持って立っている。見ると、一つは海草を煮付けた佃煮のような物、もう一つはパンケーキみたいな物(写真参照)が入った皿を持っていて、このホテルのオーナーから小生にプレゼントだから食べなさいというのだ。
 「エッ、何で」とあっけにとられていると、どうやら北京空港から言葉も話せない奴がいきなり来てこのホテルに泊まったことにオーナーが感激したらしい。何と明日から食事代はフリーにしてくれるというのだ。四川で雲助運転手に散々だまされたのが、ここではいきなり逆転の待遇である。
 しかし、彼女たちがこんな夜遅く小生の部屋まで来たのはもっと深刻な問題、帰りのタクシーがないからどうやってこの馬鹿な男を日本まで帰らせることができるか心配してきたのだ。小生は明日もう一度东灵山に登り、明後日の午前中にここを出て午後5時の日本行き飛行機に乗る予定にしていた。そのためには明後日の午前中に北京空港まで行ってくれる車を探したいと紙に書いたものをもう一度見せたのである。
 だが、こうした複雑な内容を全部筆談ですますことはむずかしい。彼女たちが小生の希望をどこまで理解したかはよく分からないが、とにかく东灵山ではタクシーはおろか、北京まで行ってくれる車もない。だから明後日だと帰りの飛行機に間に合わない可能性がある。お前は明日の山登りを中止してただちに北京市内まで戻って、そこで一泊する方がいいと言い出したのである。
 そうなると明日のオオアカボシウスバ探索はできないことになる。これはヤバイことになってきたぞ、と思っているところにさらに若い男の子が加わってきた。幸いなことに彼は英語を話すのだ。彼の話でだいぶ事情が分かってきた。彼が言うには空港まで行ってくれる車をここで探すのは無理だ。しかし、下の町まで降りると北京行きのバスがある。それに乗れば北京中心部まで3時間くらいで行くから、明日はそのバスで市内まで行き、翌日余裕を持って空港に行け、そうでないとビッグ・トラブル(つまり帰りの飛行機に間に合わないこと)が起こる可能性があると言う。
 そこでもう一度小生の帰国便の時間を彼に伝えた。明後日の午後5時だ。だから明後日バスが出るところまで何とか行って間に合わないかと聞いたのである。バスが出るのは10時、3時間なら午後1時には着くから、そこからタクシーに乗れば遅くても午後3時半くらいまでに空港に着いてチェックインは間に合うだろう。しかし、問題はそのバスが出る場所までどうやって行くかだ。
 最初は軽く考えていたが状況が分かるにつれて非常に困った問題であることが明らかになってきた。バス停まで行くのも問題だが、本当にバスが3時間で北京中心部まで行けるのだろうか。行きに空港からタクシーで直行したときも4時間近くかかっている。安全を考えたら明日のバスでなんとか戻るしかない。もちろんオオアカボシウスバシロチョウは諦めである。
 明日はオオアカボシとのご対面だぞと喜びに満ちていた希望の灯が、モクモクとわき起こってきた不安の黒雲で消え入りそうになる。2010年の時も天気が悪くてオオアカボシには会えなかった。それが今回も駄目かとガックリしていたら、さらにもう一人別な女性が部屋に入って来て、彼女が明後日の朝バス停まで車で送ってくれると言い出したのだ。
 何とも親切な人たちが5人も集まって小生のことを真剣に考えてくれたのである。しかし、本当にバスは北京まで3時間で行けるのだろうか。午後3時半までに空港に着かなければ日本に帰ることはできない。明日のバスに乗らないでオオアカボシウスバシロチョウを追いかけることを選んだ小生は、非常に危うい賭けの道を行くことになるのである。

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 これが馬鹿な小生のために様々な解決法を考えてくれた親切な人たち。一番後ろにいる黒いシャツの人がオーナーで、彼が小生を助けろと命じたから無事に帰ることが出来たのである。左の白いTシャツの青年が英語を話したので何とかこの窮状を脱することができた。四川で味わった中国人の悪いイメージは、この人たちの優しさですっかり洗い流されていた。素晴らしい人が中国にもいっぱいいるのだ。小生は彼らに心から感謝したい気持ちになっていたのである。

以下続きます。


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by Weltgeist | 2014-08-14 23:17

中国幻蝶探索紀行14、第二部、北京灵山风景区のアカボシウスバ (No.2015 14/08/13)

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 入り口に獅子の置物を配した立派そうなホテルを、一泊200元に値切って昨晩はとりあえず過ごすことができた。難関であった北京空港から东灵山麓まで来る第一の関門は筆談で突破したのである。そうなると、あとは比較的楽である。
 翌日からは北京で一番標高の高い山である东灵山に登る予定だ。この山にいると言われる二種類のウスバシロチョウ、アカボシウスバとオオアカボシウスバを観察するだけで、別に人と接触することもないから言葉の問題は考えなくてもいいのである。
 とくに本日のターゲットは东灵山頂上付近にいるアカボシウスバだ。これは登山口から2150mのところまで一気に上がるリフトに乗って行けばポイントが近い。このことは2010年のとき見つけているからもう難しいことはないだろう。楽勝の一日になるはずなのだ。
 リフトの値段は登りが70元(約1300円)と中国にしては割高である。だが、この东灵山風景区に入場するとき公園の入園料を徴収されたが、45元のところを60歳以上の老人は半額の22.5元と言われた。だからリフトも半額と思いチケット売り場で「60岁以上半价」(半額ですか)と書いた紙を見せる。しかしリフトの割引はないという。それよりも下りは要らないのかと逆に聞いてくる。60歳以上の爺さんなら下りも歩けないとみているのだ。でも今回は下りの途中にあるオオアカボシのポイントを確認するつもりだからいらない。調べながら歩く予定なのだ。
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 リフトを使わないで歩いている人が沢山いたが、2150mの終点まできたら、さらにたいへんな数の人がいる。ここは日本で言えば高尾山みたいなところなのだろう。本格的に山を登りたい人は下から歩くが、小生のような弱っちい観光客はみんなリフトに乗っている。一気に540mの落差を登ってくれるのだからこれが楽ちんなのである。
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 リフトを降りて登り始めたらご覧のように自然の木の枝を削って作った登山用の杖をごそっと売っていた。意外なほど山道は急なのでにわか登山者になった観光客が次々と買っていく。これが帰りにみたらほとんど売り切れていたから、いかに沢山の人が来ているか分かる。とくに本日は日曜日だったから余計人も多いのだろう。とにかく驚くほどの混雑ぶりである。
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 中国語の看板は遊歩道以外は立ち入らないようにという意味だろうが、まるで新宿の雑踏を歩くような人数だから、看板の効果もあまりなさそうだった。それよりこんなに大勢の人がいるところにチョウチョが飛んでくるのだろうか。ちょっと心配になってきた。仮に飛んできても人ばかりで落ち着いて「観察」などできそうもないだろう。
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 歩き始めて30分ほどすると目の前に白い蝶がヒラヒラと飛んで来て草の上に止まった。急いで駆けつけると目指すアカボシウスバシロチョウではないか。だが、この場所でおおっぴらにチョウチョの「観察」をやるわけにはいかない。このアカボシはたいへん都合の悪いところに出てきてしまったのだ。
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 多少は落ち着いて観察できる場所はないかと左側の斜面を登って行くと、アカボシウスバの食草であるラディオラが沢山生えている場所に出た。ここで数頭のアカボシが飛んでいるのが見えたのだが、相変わらず人は多い。13億の人間を抱える中国ではどこへ行っても人がいる。人のいないところを見つける方が難しいのだ。
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 しかし人も多いがチョウチョも多い。うまい具合に手前の石にとまっていたアカボシウスバの♀を見つけいい感じでシャッターを押せた。手を伸ばせばつかめそうなほど接近しているのでつかみたい衝動に駆られる。しかし、こんな場所でチョウチョなど採っていたらぶっ飛ばされるだろう。
 「採ってません、観察してるだけです」、と言いたいが、中国語でなんというのか分からないから黙っていた。男は黙ってやり過ごすのだ。だがやり過ごそうにもひっきりなしにやってくる登山者の群れは途切れることがない。まるでお盆休みの富士山みたいに登山者の群れが次から次へとわき出してくるのである。
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 この日、手にとっての「観察」は出来なかったが、こんなカットも撮れて大満足の一日だった。ただ、晴れていた空が2時頃には急に暗くなり雷がゴロゴロ鳴り出した。あわてて下っていく途中で雨が強くなり、明日予定していたオオアカボシのポイントを下調べをすることが出来なかった。
 それでも満足してホテルに戻ると、宿の支配人らしき女性がいたので「后天9:00、叫我问出租车」(明後日9時にタクシーを呼んでください)と書いた紙を見せると、急に困ったような顔をした。彼女は「没有出租车在这里」と返事を書いた。小生はこの意味が分からなかったので部屋に戻って辞書で調べると、何と、ここにはタクシーは無いという意味ではないか。ということは行きは何とかここまで来たが、帰りの交通手段はないことになる。日本に帰る飛行機は明後日の午後5時。これに乗れなければ小生は中国に取り残されることになってしまうのだ。

以下続きます。


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by Weltgeist | 2014-08-13 23:57

中国幻蝶探索紀行13、第二部、北京东灵山・トンリンシャンへ (No.2014 14/08/12)

 長い間謎に包まれていたまぼろしのパルナシウス・チベットウスバシロチョウを追って12日間、四川省甘孜を探った旅は、紆余曲折を経て何とか出発点の成都に戻って来るところまできた。現地・甘孜に入るのも、成都に戻ることも薄氷を踏むような危うさであったが数々の幸運によって巨匠がチベットウスバを確認できたし、成都まで安全に戻ることもできた。そして、このあと巨匠はウルムチ経由でタジキスタンのパミール高原に向かうと言う。四川省であれだけ頑張ったあとさらにパミールまで行く巨匠のやる気はすごいが、そこまでついていく根性のない小生は、このあとどうしたらいいのか。
 巨匠がいなければ中国語のできない小生はそのままおとなしく日本まで帰るのが順当なところだろう。しかし、持ち前の無鉄砲さと楽天主義が小生をまだ中国に押しとどめた。巨匠はパミールへ行ってしまうが、小生は経由地である北京にとどまってもう少しチョウチョを観察しようと試みたのである。だが、言葉も話せない人間がどうやってそれをやり遂げたのか。第二部はその報告である。
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 前日16時間かけて戻ってきた成都は朝から雨だった。小生が乗る北京行き飛行機は午前10時、巨匠の乗るウルムチ行きは午後1時過ぎ。これからは別行動となるので全部自分一人でやらなければならない。
 成都空港へはバスで行くのが安くていいのだが、ホテルからバス停までタクシーで行って、そこでバスをつかまえなければならない。それがうまくいくのかちょっと自信がない。もしミスれば飛行機に乗れないことになる。多少値段が高くてもリスクを負うよりホテルから直接タクシーで行く方が安全ではないかと巨匠が最後のアドバイスをしてくれた。そしてタクシーに乗るところまで見届けてくれた巨匠に「それでは幸運を」と言って成都空港へ行く。
 小生はこれから北京まで行って东灵山(トンリンシャン)という山でアカボシウスバシロチョウやオオアカボシウスバシロチョウというチョウチョを狙うつもりなのだ。

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 中国の飛行機は時間通りに飛ぶかどうかわからない。成都に来るときは北京で長時間足止めされたが今日のフライトが遅延すると、小生が目論んでいたこれからの計画が難しいことになる。飛行機は午前10時発。北京到着は12時25分である。そして空港から次の目的地东灵山(トンリンシャン)へ3~4時間かけて行き、山麓のホテルに泊まるつもりでいる。遅れれば北京泊になり、翌日からの日程が狂ってくるのだ。
 だが、幸いなことに飛行機は定刻に何の問題もなく離陸し、2時間後には北京の町が見えてきた。ここまでは順調である。このあとは东灵山まで行く手段だ。东灵山は北京と河北省との境にある北京で一番標高の高い山で、空港から150㎞弱くらいである。そこまでバス便などの交通手段があるか小生にはわからない。また、仮にあったとしても複雑すぎるだろうからと、空港から直接タクシーで行く予定をたてていたのである。問題は150㎞も走るとタクシーの料金がどのくらいになるかだ。
 ガイドブックによれば北京のタクシーは初乗り3㎞が13元、そのあとは1㎞について2.3元メーターで加算されるとある。単純に計算すると150㎞で350元(約6400円)ほどである。日本のタクシー代に比べたらとても安い。しかし、四川での経験からこんな値段で行ってくれるかは分からない。中国語ができない小生にそうした値段交渉ができるか不安もあるのだ。
 だが運命の神様は小生に素晴らしい助っ人を与えてくれた。成都便で隣の席に座った女性が、途中で英語で話しかけてきたので、自分は北京空港からすぐに东灵山に行くつもりだが、タクシーとうまく交渉できるか心配だ、と言ったら、空港のタクシー乗り場で彼女が助けてくれたのである。
 最初は自分一人で「东灵山索道基点、350元、OK? 」(トンリンシャンの麓まで350元でいいか)と書いた紙を運転手に見せたのだが誰も相手にしてくれない。そこに先ほどの女性が来て小生が困っているのを見て、運転手たちに中国語で何か言ったのだ。想像するに、外国からのお客様なのだから行ってあげなさいよ、と言っているのだろう。
 彼女は次々にやってくる運転手10人以上に声をかけたが思わしくない。彼女が言うには小生が行きたい东灵山は田舎で、帰りが空車になるから350元では行きたがらない。みんな1000元くらいは欲しいと言っているというのだ。1000元とは日本円で18000円である。これはちょっと予算オーバーである。
 すると彼女が思いもしない態度に出た。運転手に「もっと安く行ってあげなさいよ」(言葉は分からないが雰囲気から多分・・)と強い口調で言ってくれたのだ。その結果、650元(約11700円)で行ってもいいという運転手が出てきたのである。彼女はその運転手が途中で雲助に豹変しないよう小生のノートに「东灵山、650元」と証文を書かせ、サインまでとってくれたのである。
 四川での中国人に対するイメージはあまり良くないものだったが、この女性の行為で小生の中国人観はまったく逆転した。悪い人ばかりではない。こんな親切な人もいるのだと思ったのである。

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 実は小生、东灵山には2010年に一度中国人のガイドに連れてきてもらったことがあるのだ。ここでアカボシウスバシロチョウをとっている。だから山の周辺についてはある程度土地勘があるのだ。しかし、そこまでどう行くのかは分からなかった。多分タクシーに山の地名を見せれば運転手が連れていってくれるだろう。そして現地に着いたら適当なホテルを探す、そう単純に考えていたのである。
 北京空港から乗ったタクシーの運転手も东灵山に行くのは初めてのようで、小生が渡した地図を何度も何度も確かめながら走っていく。そして、空港を出て2時間もするとご覧のような岩山が沢山出て来た。だが、それはまだ序の口でさらにそれから2時間ほど掛かってようやく东灵山の登山用リフトの基点に着いた。

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 さて何とか东灵山の麓までは着いた。次にやることはホテルを見つけることだ。前回来たときは登山口から少し離れた旅館街に泊まったが、あのときはガイドの車があったから良かったが、今回は歩きだから登山口まですぐに行ける近場が望ましい。しかし、登山口の直下にあるホテルは立派な構えで、泊まるにしても高そうだ。
 この門構えからしてすごそうなホテルに今夜泊まれるか聞いてみることにした。筆談でどこまで通じるか、あまり自信はなかったが、やるしかない。まずは運転手に「我來尋找飯店」(ホテルを探してくる)とノートに書いて待たせておいてから、中にいた人に「多少銭一夜」(一晩いくらですか)と聞く。すると、一泊300元(約5400円)だという。うーん、ちょっと高い。以前なら相手の言いなりだったが、四川でもまれてきた小生は「让我更便宜、因为三夜」(三泊するから安くしてくれ)と書いて値切りにかかる。すると運転手まで出て来て「安くしろ」(言葉は分からないが雰囲気から多分? )と言って小生に応援してくれた。その効果があって一晩200元にディスカウントしてくれたのである。
 おーっ、不安だった即席一夜漬けの中国語でもここまで出来た。日本と中国は同じ漢字国家、日中は心を開けば人々は理解できるのだとまずは安心したのである。だが、このあとでとんでもなくヤバイ事態に直面することになるのだが、このときはまだ知るよしも無かった。

以下続きます。


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by Weltgeist | 2014-08-12 23:53

中国幻蝶探索紀行12、前半戦終了 (No.2013 14/08/10)

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 今日一日が甘孜でチベットウスバを探索できる最後の日。明日は丸一日かけて成都まで戻り、翌日の北京行き飛行機に乗らなければならない。だから明日の成都行きバスの切符を買ってからでないと安心して出かけられないのだ。切符の発売開始は前日の午前9時からなので、8時半に切符売り場に行くとすでに沢山の人が並んでいる。ちょっと人が多いのが気がかりであったが、まさかここで問題が起こるとは思ってもいなかった。ところが我々の順番がきたとき明日の席はすでに満席、売り切れになっていたのである。
 切符が買えなければ明日中に成都へ戻ることはできない。そうなるとその翌日の飛行機も間に合わなくなる。これは非常にヤバイ状況である。しかし、生来の馬鹿者である小生、こんな非常時になっても切符を手に入れるよりチベットウスバを探すことを優先して出かけてしまったのだ。貴重な最終日を無駄に過ごしたくはない。切符など何とかなるだろうと楽天的に考えていたのである。
 巨匠が昨日チベットウスバをとった場所はもう分かってきている。小生が粘っていた場所より150mも標高の高い3650m付近に行けばまぼろしは現実になるのだ。だが、3650mといってもどのあたりでとったのか、実際の場所を知るべく巨匠のあとをついて斜面を登っていく。巨匠はうるさい奴が金魚のウンコみたいにくっついてきたなと思っているようだが、昨日はインペラトールの誘惑に負けて失敗した。今日は絶対巨匠から離れまいと思っていたのである。すると周囲の雰囲気が少し変わって草原から石の多いガレ場になってきた。なんとなくパルナシウスの生息環境を思わせる場所である。
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 小生はチベットウスバは3500m付近にいると思い込んでいた。ところがそれよりもっと上の3600mを越える付近でチベットウスバの食草であるまんねん草が出て来た。見るとインペラトールの食草であるコリダリスよりずっと小さな草である。こんなに小さいと思っていなかったから昨日は見つけられなかったのだ。だが、さすがの巨匠は気がついてこの場所で本命をとったのである。
 今日はポイントも間違いない。まんねん草も沢山あるからチベットウスバだっていればそのうち飛び出すだろう。そう思っていたのだが、天候は小生に味方してくれなかった。雨は上がったが太陽が出ない。冷たい風が吹いていて条件は最悪である。チベットウスバを狙えるのは今日一日しか残っていないのに、天気が悪くてチョウチョが全然飛ばないのである。午後になれば少しはマシになるかなと思っていたが、逆に雨が再び降り始めてもはや万事は窮した。小生より50mほど上で頑張っていた巨匠も諦めて山を下りるしかなかったのである。これで甘孜周辺でのチベットウスバシロチョウ探索はお終りとなってしまった。

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 明日中には成都に戻って、その翌日に巨匠はウルムチ経由でタジキスタンに、小生は北京までの飛行機に乗らなければならない。だが、明日の成都行きバスの切符が買えない。どうしたらいいのだろうか。解決策はまた乗り合いの白タクを見つけることしかない。
 しかし、今回は成都まで車を出す運転手をパーヤが知っていると聞き、夕方ホテルで待っていると、左手に入れ墨をした怖そうな人がやってきた。甘孜から成都まで料金は一番前の助手席が450元、真ん中は3人掛けで400元、一番後ろは350元だという。小生は足を伸ばして座れる助手席を望んだが、ここはすでに予約が入っているという。一番後ろの席は荷物室みたいなところなので、真ん中の400元(約7200円)の席を頼んだ。成都まで16時間も掛かるので出発はできるだけ朝早く出るという。
 甘孜を出たのは翌朝午前4時だった。車は三菱のパジェロで真ん中の席に三人掛けで座るが、走り出してもほとんど休憩無しなのでしばらくするとお尻が痛くなってきた。しかし、それでも成都まで戻れるのだから文句は言えない。
 写真は雨の甘孜を出て泥だらけになった車をいったん洗っているところ。8時間ほど走ってようやく休憩・食事タイムに撮ったときのものである。これ以外はずっとノンストップで外の景色を写真に撮る余裕もなかった。
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 16時間、ほとんど休み無く車で走り続けるということは非常につらい。お尻が痛くなることはしばらくは我慢していたが、10時間を過ぎる頃から体を動かしたい欲求が出て、これが押さえがたくなってきた。しかし、身動きできるスペースはほんのわずかしかない。それよりかわいそうなのは隣に座った女の人だ。甘孜を出てまもなくからずっと車に酔っていてゲーゲーと嘔吐し続けているのだ。それでも車を止めてくれるわけではない。さらに我々の後ろには一人350元と50元安く払った家族連れがいてこちらもものすごく窮屈そうである。彼らのことを思えば、小生が体を動かせないくらいは贅沢、我慢すべきなのだろう。
 そして長い山間部の走行が終わった14時間後の午後6時、ついに高速に入った。いよいよ成都は近いのかと思われたが、さらにこれから高速を2時間も走って、午後8時にようやく成都に着いたのである。中国はとてつもなくデカイ国であるのだ。
 16時間ぶりに狭い車内から解放されて、ホテルに着いたときは本当にホッとした。汚れた体をシャワーで洗い流し、PCを立ち上げるとネットにつながった。スカイプを立ち上げて久しぶりに妻の声を聞く。「今まで何の連絡もなかったけど生きていたの」とのおしかりの言葉に、ネットにつなげなかったこちらの通信事情を話すが、10日以上音信不通であったことをだいぶ咎められてしまった。だが、怒られてもすぐに日本には帰れない。このあともまだ別な所に行く予定があるのだ。

これで幻蝶探索紀行前半は終わりです。この後は北京郊外で別なチョウチョを狙う後半編に続きます。


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by Weltgeist | 2014-08-10 22:50