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男子厨房に入るべからず (No.265 08/11/29)

 結婚したての新婚の頃は妻と二人でスーパーへ買い物に行くのが大好きだった。安月給の中から予算を考えて二人で仲良く相談しながら買い物をするのは、新しい生活を築き上げていくような気持ちがして、とても楽しく、ほほえましいことと思っていたのである。だが、今はスーパーに夫婦で買い物に行くのは好きではない。男がのこのこ女の領域に入っていくようで、女々しいと思い始めているのである。別に男尊女卑的考えに凝り固まったわけではない。ただ、男は家庭の中に関することは口出ししてはいけないという不文律に似た気持ちを持ったのだ。
 若い頃と違って小生のような年齢になると、食材などを買うのに妻にあれこれ言うことはあまりない。ほとんどが妻にお任せスタイルだから、自分が口を出す余地がないのだ。妻も小生が買い物にくっついてくるのは、あまり好んでいないようだ。というのも、肉や魚、野菜を撰ぶとき、小生が自分の好みに合うように口をはさむからだ。彼女が今日は魚が食べたいと思っているとき、小生が「このステーキ肉うまそうだ」などと言うと、これから作ろうとしていた食事の構想が狂ってしまう。男は買い物について行く時は口を出さずに黙って妻に従う、これが夫婦円満のコツであることを、34年間の結婚生活で自分は学んだのである。
 しかし、今日は妻とスーパーで買い物をすることになった。小生は図書館、彼女は銀行と買い物に行く用事があるので、二人で一緒に車で出かけて全ての用事を一気に済ませることにしたのだ。だが、スーパーでの買い物は素早く済ませた。というのもスーパーで売られている食材はどれもうまそうで、「あれも食べたい、これも食べたい」と小生が言いたい気持ちになるからだ。こんな場所はなるべく早く終えて出るのが無難である。
 スーパーからの帰りに、近くの農家の入り口にある無人野菜販売棚も見て回る。我が家の周辺にはまだ農家が何軒かあり、ここで作られた野菜を色々売っているのだ。これを買うには小生は車の中で待っていれはいいから問題はない。今日見つけたのは柿である。ビニールの袋に5個入って、一袋百円というのを見つけ、これを二袋200円で買って帰った。少し前にスーパーで買った柿は一つ300円くらいしたが、今日の柿は一つ20円という安さである。しかも、その家の庭からもいだ柿だから、新鮮さも間違いない。産地偽装などとんでもないお勧め商品である。
 その柿を家に戻って早速剥いて食べた。小さな名前も知らない種類で、種が多いが、甘くてとてもおいしかった。これで熱いお茶があれば言うことはない。あっという間に二つも食べて少し幸せな気分になれた。
 極楽極楽な気分で午後は図書館で借りてきた本に没頭する。そして、夕方のニュースを見ていたら、インド、ムンバイでテロにあった人たちが帰国してきたところと、バンコックで空港が閉鎖され、1万人もの日本人が帰国出来ずに困っているところを放送していた。小生たちは、甘い柿とお茶を飲みながらそれを見ている。実際、困難にあっている当事者はたいへんだろうが、少なくとも今の我々はそんな危ない目にも合わずに安全でいられる。平板な一日は今日も可もなく不可もなく終えていくが、こうした平安こそ幸せな瞬間なのかもしれない。そんな思いをかみしめた今日一日だった。
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by weltgeist | 2008-11-29 23:09


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