マダイ釣りに行ってきた。前日まで心配していた風もなく、海はベタナギだった。でも、釣れません、小生だけが・・(-_-;)
色々勉強させてもらいましたわ、ホント。人間、いや釣り師というのはどこまでも楽観的で、希望を失わないお目出た人間であることを、骨の髄まで思い知らされた。全然釣れない駄目な状況下でも、「希望は捨てるな。きっとアタリはある」と頑なに信じて、最後まで竿を出す、この頑固な楽観主義こそ釣り師の特質なのだ。しかし、そこまで頑張ったのにマダイは微笑んでくれない。それどころか、あやうく何も釣れない「坊主」になるところだったのである。 釣りに行った場所は、西伊豆、小下田の「とび島丸」である。数日前まで大きなマダイが一日に20枚、30枚と釣れ盛り、絶好調と前評判の高い場所である。そんな人気場所だから、船の予約もたいへんである。今回は船釣り、特に大物釣りの権威である田原泰文氏が主催する「舳会」の月例釣行会に割り込ませてもらった。 舳(みよし)とは船の一番先端、へさきの部分を言う。ここは揺れやすく、素人が立てる場所ではない。そんなきつい場所に好んで立つ猛者たちの集まりに混じって船に乗ると、くじ引きで引き当てた席は、船釣りで最も有利と言われる大トモ、すなわち船の最後列という最高の場所である。これで釣れなければ腕が悪い、そんな場所に座れた小生、早くもマダイの入れ食いシーンを夢見る幸せな釣り師になりきっている。そこへ、船長の鈴木健司さんがヤバイことを言って水を差す。 「実はおとといから、急に潮が変わって、タイが食わなくなった。条件が非常に厳しい」と言うのだ。出た、極めつけの言葉が。小生、今までこの言葉に何度も泣かされている。「昨日まで良かった。あんた昨日来れば最高だったのに」と言う言葉は、釣りの世界では釣れないことの予防線なのである。「一船20枚なら低く見積もっても5尾はかたい」と皮算用していた小生の期待はどんどん萎んで、あの大島から下田沖根に続く不漁路線に引き込まれるのではないかという不安の黒雲がモクモクと湧き起こる。 そして、不安は的中。全然釣れないのだ。いつもならタイは駄目でも、サバやソーダガツオのような外道がうるさく釣れるのに、今日はそれもこない。いくらやっても餌がかじられた跡さえないのだ。 田原氏の話では、とび島丸の船長は、マダイを釣らせたら日本でも指折りの名人だと言う。船長は最新の魚探を見ながら、「タナ(水深)52m」、「57m」と細かく指示を与え、「今、船の前方に3尾大きいのがきた」とか、「今度は前から船を回り込んできたが、餌を見て引き返した」などと、非常に具体的に状況を教えてくれる。客に釣らせようと一生懸命教えてくれるこんな船頭は、中々お目に掛かれない。だが、船長がいくら海底情報を教えてくれても、潮が悪ければ食わないのが海の釣りである。 釣れてなくても魚探で海底にマダイが間違いなくいるのは分かっているのだ。だから、こちらも手抜きはできない。ひたすら集中して竿の操作に徹するしかないのである。と、そのとき「また来たぞ、来たぞ、ほら食った」と魚探を見ていた船長が叫んだ。それと同時に、小生の反対側にいた桑野さんという若い人の竿が引き込まれた。最近の魚探は本当に食うところまで見えてしまうのだ。 釣れない中だから、皆の注目が一身に桑野さんに集まる。根元までひん曲がった竿を操作して、水面に上がってきたのはまぎれもない大マダイである。下の写真をご覧頂きたい。見事なまでに美しいマダイを誇らしげに持つ桑野さん。悔しいけれど、小生はカメラで獲る(撮る)ことしか出来ないのだ。ウーン、羨ましい。 しかし、厳しい終了の時刻が次第に迫ってくる。小生、このままでは何も釣れない屈辱の丸坊主となるのは目に見えている。ところが潮が変わってくるとイナダが釣れ始めた。イナダを狙うならハリスを短くすればいい。しかし、そうなるとマダイは釣りにくくなる。坊主覚悟で最後までタイを狙うか、それとも形だけでも釣れたという実績を残して、イナダに切り替えるか。 この選択は釣り師にとっては悩ましい。屈辱の可能性大でもこのまま本命を狙い続ける、それとも妥協かの重要な分かれ道となるのだ。イナダなら仕掛けを変えなければならない。それでお茶を濁すか、小生一瞬迷った。だが、坊主という重圧に負けた小生、仕掛けを短くすると、イナダ狙いに変更したのだ。そして、なんとかイナダをゲットし、形の上では坊主を免れたのである。 ところが、その直後、あくまで初志貫徹した田原氏が、タイを釣り上げたのだ。後で聞いたら彼は全部で3枚のタイを釣ったと言う。どこまでもKYな小生、失敗したと思うとがっくりである。田原氏は小生の悲惨な状況に同情して1尾タイを恵んでくれた。恐れ入りました。さすがは名人、小生は言葉も無く惨敗したのだった。 田原氏が主催する舳会のHPは http://www9.ocn.ne.jp/~miyosi-k/index.html
by weltgeist
| 2008-04-21 17:18
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