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鳥の話す言葉が分かる男(No.73 06/04/18)

 今朝は朝から強い雨のため、予定していた相模川へ鮎の遡上状況を確認しながら、漁協で年券(年鑑札)を買いに行く計画は中止した。当然ながら日課としている前の森の散歩も取りやめである。雨は想像以上の降りで、とても外出する気にはなれなかったのだ。この激しい雨で山の食べ物がなくなったのか、朝から色々な鳥が次々と庭にやって来る。スズメ、シジュウカラ、メジロなどが、取替え引替え来ては、小生がまいたごはん粒の餌を食べていく。これを新聞や本を読みながら見ていると、心が和む感じだ。
 鳥たちの動きは独特で、一瞬たりともジッとしていない。庭の木から木へ飛び移りながら、次第に小生がまいたごはん粒の方に近づいて来る。しかし、いきなりは来ない。警戒しているのである。だんだん近づいて来て、本命まで来たらパッと食べて、すぐにどこかへ行ってしまう。安全な場所に戻って落ち着いて食べ直すのかもしれない。そして、しばらくすると、また戻って来る。満腹になっていないからこれを何度も繰り返すのだ。その動きが面白く、見ているこちらも楽しい気分になるのである。鳥の話す言葉が分かる男(No.73 06/04/18)_d0151247_23292587.jpg 庭に来る鳥はたいてい二羽つがいで来るから、多分夫婦なのだろう。スズメもシジュウカラも最初に一羽が偵察にきて、安全と分かると残りがくる。恐らく最初に危険を冒して突撃してくるのは雄だろう。雄はこうした場合、いつも先兵の役割を担わされる。ヤバイことは鳥も人間も同じ「男」の仕事なのである。
 こんな鳥観察をしているが、実は小生、以前は鳥があまり好きでなかった。ヒッチコックの「鳥」という映画を見て以来、いつか鳥が人間を襲う時があるかもしれないと思っているのだ。また、釣りに行って何度か鳥にひどい目にあった経験も鳥嫌いに影響しているかもしれない。
 長崎県五島列島の南西60㎞の東シナ海に「男女群島」という無人島がある。ここは磯釣りの聖地のような場所で巨大なメジナやイシダイが良く釣れる有名な釣り場であるが、また大カラスの聖地でもある。この島には巨大なカラスが沢山いて、これが人間の食べ物を盗む技に長けているのだ。お弁当から釣りの餌まで食べられる物なら何でも食ってしまう悪食である。
 断っておくが、食べ物を外に置いてカラスに食べられるような真似をしたわけではない。きちんとバッグに入れておいても、男女群島のカラスはバッグのチャックを開けて、弁当を盗み食いするほど利口なのだ。我々は釣りに夢中になっているから、後ろに置いたバッグまで気が回らない。それをちゃんと知っていて、しかも、バッグのどのあたりに弁当があるかまでご存じなのだ。バッカンと呼ばれる磯釣り用ビニール製バッグに入れておいたら、それを食い破られて盗られたこともある。
 男女群島に生息するカラスは実に頭が良く、また攻撃的である。だから、慣れた釣り人はパチンコを用意していて、カラスが来たらこれで攻撃するらしい。そんな飛び道具を持たない我々は、カラスの攻撃のなすがままである。これが小生の鳥嫌いの大きな原因となっているのである。島に渡してくれる船頭に聞いたところ、男女群島のカラスは人間の言葉を理解するものもいるから油断するなと言われた。カラスは本当に頭のいい鳥なのだ。
 しかし、鳥が人間の言葉を理解できるように、人間でも鳥の言葉を理解出来たすごい人がいる。イタリア・アッシジの聖フランチェスコだ。アッシジにはジョットの有名なフレスコ画「小鳥に説教する聖フランチェスコ」がある。聖人となったフランチェスコは鳥とも話しができ、鳥たちも彼の説教ならおとなしく聞いていたと言う伝説があるのだ。ジョットはこのシーンを描いているのである。
 アッシジは美しい町だという。残念ながら小生、イタリアには何度も行っているのに、アッシジは行ったことがない。それで「小鳥に説教する聖フランチェスコ」を一度みたいと思っていたが、それは意外な場所で実現することができた。
鳥の話す言葉が分かる男(No.73 06/04/18)_d0151247_23295189.jpg
ジョットの絵は大部分がフレスコ(壁)画だから、彼の絵を見るにはそれが描かれた建物のある場所に行かなければならない。超有名なフレスコ画である「小鳥に説教する聖フランチェスコ」を見るにはイタリア中部、アッシジに行くしかないのだ。しかし、アッシジまで行かなくても、実はパリでも見れるのである。ルーブル美術館にあるジョットの「聖痕を受けるアッシジの聖フランチェスコ」と言う大きな絵の下側には、プレデッラと呼ばれる別枠でアッシジと似た構図の「小鳥の説教」が描かれている。しかし、小さいので気づく人が少なく、意外に知られていない。絵柄はアッシジと少し違うが、画集で比べる限り、ルーブルの方も負けず劣らずの出来である。絵はルーブル美術館、ドゥノン翼の初期イタリアルネッサンス傑作を集めた所にあるから、ルーブルに行ったら見逃さないこと。題名は Saint François d'Assise recervant les stigmates。制作1,295~1,300年。
(これは余談だが、この絵の構図、どこかで見たことがあると思ったら、4月12日に掲載したおばさんにアイスクリームをせびる合鴨の写真と似ていた)

by weltgeist | 2008-04-18 23:31


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