ワーファリン服用者の白内障手術 (No.2096 16/01/29)

 少し前から気持ちがとても揺れ動いていて、もう10日以上ブログの更新もやっていない。理由はこれまでだましだまし使っていた目がもう使い物にならないほど悪くなって、白内障の手術で大騒ぎしていたからだ。
 白内障は目のレンズに当たる水晶体が加齢で濁って物がよく見えなくなる年寄り御用達の病気である。これを治すには濁った水晶体を超音波で砕いて取り外し、人工のレンズと入れかえる手術しかない。手術は30分ほどで終わる簡単なものだと言われていた。しかし、自分の眼球をメスで切ることを想像したら、怖くてそんなことは絶対ごめんだと思っていた。それに私は心臓弁膜症で、血液をサラサラにする抗血液凝固剤・ワーファリンという薬を服用している。このため一度出血するとなかなか血が止まらない。目を切開して出血が止まらなければ失明するかもしれないという恐怖感があるのだ
 しかし、それももう限界で逃げられなくなった。細かい文字がかすんで本を読むのも苦痛になり、ついに白内障の手術をやらざるを得ないところまで追い込まれてしまったのである。でもここまで決心するにもたいへんな葛藤があった。目の中にメスを入れて水晶体を取り出すことを想像したら、ギリシャ悲劇オイディプス王のことを思い出してしまった。自分の犯した罪で死なせた母親のブローチを手に取ると、自らの目に刺して盲目の乞食となり都を追放される悲惨な物語である。オイディプス王みたいになったらどうしよう。やだ、やだ、そんな怖いことはやりたくない、とこれまで逃げ回っていたのである。
 
 それでも過酷な現実は容赦してくれない。「いやだな」と思っているうちに最初にやる右目の手術日、1月20日がやってきた。3日前から抗生剤の入った目薬を一日3回点眼して目の中の細菌を完全に殺したクリーンな状態にして当日に備えたのだが、いざとなるとものすごい恐怖感がわき起こる。私は気が小さいのだ。
 手術3時間前から3種類の目薬を5分間隔で4回繰り返し点眼して瞳孔を開く準備をし、車いすで手術室まで運ばれて手術台に乗る。仰向けにねかされると、看護師が小さな穴が開いた手術用の布を顔にかぶせる。この穴から右目だけが出ていて、ほかの部分は保護されるのだ。そして準備完了したところで先生が数回麻酔らしい薬を点眼し、いよいよ手術が始まった。
 最初に何かで眼球を固定したようで、まばたきもできなくなった。全身麻酔なら意識もないからいいのだが、局部麻酔なので目はこの間もしっかり見えている。そして三角型に尖った金属の棒が目に迫ってくるのがはっきり見えた。どうやらこれが私の目玉をくりぬくメスのようだ。
 恐怖感から全身がこわばる。しかし、痛みはない。先生はグリグリとメスを目に押しつけているようだが、目をつぶることもできずひたすらまな板の鯉状態で体を硬直させていると、20分ほどで「はい、レンズを入れ終わりましたよ」という。どうやら一番厳しい所は終わったようで、大きなガーゼを目にかぶせられて右目の手術は終了。
 ガーゼの眼帯は翌21日にとるというが、血液をサラサラにする抗血液凝固剤・ワーファリンの影響がどこまであるのか今日はまだ分からない。明日、ガーゼをとったとき、右目がウサギの目のように真っ赤に充血して血が止まらないでいたらどうしようかという不安を抱えたままに、右目手術第一日目は終わったのである。

この項続きます。
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Lucas Cranach d.Ä. / Venus mit Cupido (detail) / Kunstsammlungen, Weimar.
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by Weltgeist | 2016-01-29 23:57


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