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中国幻蝶探索紀行15、第二部、东灵山で窮地に追い込まれてしまった (No.2016 14/08/14)

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 东灵山でのアカボシウスバシロチョウ観察初日はまずまずの成果を納め、獅子が待ち受けるこのホテルに気持ちよく戻ってくることができた。そしてフロントの女性に帰る日のタクシーを予約しておきたいと軽い気持ちで頼んだのである。すると、「この村にはタクシーはない」と考えてもいなかったことを言われてしまった。行きは北京空港から直接タクシーでここまで来たが、有数の観光地で人も沢山来ているからタクシーがないなど思ってもいなかったのだ。
 だが、そうだとすると観光客はどうやってここまで来ているか。自家用車もあるだろうが、バスなどの公的交通機関がなければあれだけの人数が来れるはずがない。絶対何か方法があるだろう。だから帰りのことなど心配する必要は毛頭ないと思っていたのである。

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 自分としてはこの問題がそれほど深刻なものとの認識はまだなかった。それより明日のオオアカボシウスバシロチョウ観察の準備の方が忙しいのだ。ところが夕食を食べて部屋のなかで明日の準備をしていたら、誰かがドアをノックする。開けるとフロントの女性など3人の人が何かを持って立っている。見ると、一つは海草を煮付けた佃煮のような物、もう一つはパンケーキみたいな物(写真参照)が入った皿を持っていて、このホテルのオーナーから小生にプレゼントだから食べなさいというのだ。
 「エッ、何で」とあっけにとられていると、どうやら北京空港から言葉も話せない奴がいきなり来てこのホテルに泊まったことにオーナーが感激したらしい。何と明日から食事代はフリーにしてくれるというのだ。四川で雲助運転手に散々だまされたのが、ここではいきなり逆転の待遇である。
 しかし、彼女たちがこんな夜遅く小生の部屋まで来たのはもっと深刻な問題、帰りのタクシーがないからどうやってこの馬鹿な男を日本まで帰らせることができるか心配してきたのだ。小生は明日もう一度东灵山に登り、明後日の午前中にここを出て午後5時の日本行き飛行機に乗る予定にしていた。そのためには明後日の午前中に北京空港まで行ってくれる車を探したいと紙に書いたものをもう一度見せたのである。
 だが、こうした複雑な内容を全部筆談ですますことはむずかしい。彼女たちが小生の希望をどこまで理解したかはよく分からないが、とにかく东灵山ではタクシーはおろか、北京まで行ってくれる車もない。だから明後日だと帰りの飛行機に間に合わない可能性がある。お前は明日の山登りを中止してただちに北京市内まで戻って、そこで一泊する方がいいと言い出したのである。
 そうなると明日のオオアカボシウスバ探索はできないことになる。これはヤバイことになってきたぞ、と思っているところにさらに若い男の子が加わってきた。幸いなことに彼は英語を話すのだ。彼の話でだいぶ事情が分かってきた。彼が言うには空港まで行ってくれる車をここで探すのは無理だ。しかし、下の町まで降りると北京行きのバスがある。それに乗れば北京中心部まで3時間くらいで行くから、明日はそのバスで市内まで行き、翌日余裕を持って空港に行け、そうでないとビッグ・トラブル(つまり帰りの飛行機に間に合わないこと)が起こる可能性があると言う。
 そこでもう一度小生の帰国便の時間を彼に伝えた。明後日の午後5時だ。だから明後日バスが出るところまで何とか行って間に合わないかと聞いたのである。バスが出るのは10時、3時間なら午後1時には着くから、そこからタクシーに乗れば遅くても午後3時半くらいまでに空港に着いてチェックインは間に合うだろう。しかし、問題はそのバスが出る場所までどうやって行くかだ。
 最初は軽く考えていたが状況が分かるにつれて非常に困った問題であることが明らかになってきた。バス停まで行くのも問題だが、本当にバスが3時間で北京中心部まで行けるのだろうか。行きに空港からタクシーで直行したときも4時間近くかかっている。安全を考えたら明日のバスでなんとか戻るしかない。もちろんオオアカボシウスバシロチョウは諦めである。
 明日はオオアカボシとのご対面だぞと喜びに満ちていた希望の灯が、モクモクとわき起こってきた不安の黒雲で消え入りそうになる。2010年の時も天気が悪くてオオアカボシには会えなかった。それが今回も駄目かとガックリしていたら、さらにもう一人別な女性が部屋に入って来て、彼女が明後日の朝バス停まで車で送ってくれると言い出したのだ。
 何とも親切な人たちが5人も集まって小生のことを真剣に考えてくれたのである。しかし、本当にバスは北京まで3時間で行けるのだろうか。午後3時半までに空港に着かなければ日本に帰ることはできない。明日のバスに乗らないでオオアカボシウスバシロチョウを追いかけることを選んだ小生は、非常に危うい賭けの道を行くことになるのである。

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 これが馬鹿な小生のために様々な解決法を考えてくれた親切な人たち。一番後ろにいる黒いシャツの人がオーナーで、彼が小生を助けろと命じたから無事に帰ることが出来たのである。左の白いTシャツの青年が英語を話したので何とかこの窮状を脱することができた。四川で味わった中国人の悪いイメージは、この人たちの優しさですっかり洗い流されていた。素晴らしい人が中国にもいっぱいいるのだ。小生は彼らに心から感謝したい気持ちになっていたのである。

以下続きます。


by Weltgeist | 2014-08-14 23:17


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