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中国幻蝶探索紀行、1、チベットウスバシロチョウ (No.2002 14/07/19)

 高嶺の花という言葉がある。手の届かないところに咲く花は、余計美しく見えるものである。しかし、それはそもそも手が届かぬ険しい山の中にあるから普通の人は諦めろという意味を含めた言葉である。ところがそんな無理なものと分かると人は余計それを手に入れたくなる。極めて入手しがたいものを手にしたいというのは人間の根源的な欲求かもしれない。
 最近小生がはまっているチョウチョの世界でも高値の花と言える珍しい種類がいる。小生がとくに好きなウスバシロチョウ=パルナシウスの仲間で、最も難易度の高いチベットウスバシロチョウというやつだ。正式な学名で書けばParnassius tibetanus =パルナシウス・チベタヌスである。このチョウチョ、中国四川省とチベット自治区の堺付近にいるらしいのだが、1896年に四川省西部で発見されて以来これまでほとんど採集されたことがないという超レアなウスバシロチョウなのだ。
 そんなものすごいまぼろし的存在を小生ごとき青二才が手にすることなどできるわけがない。最初から考えてもいなかったことである。ところが、それがもしかしたら可能かもしれないというタナボタ話が迷い込んできた。一昨年インドに一緒に行ったk巨匠が「今年はこのチベットウスバシロチョウにチャレンジするから一緒に行かないか」とお誘いしてくれたのである。
 実は巨匠は以前チベットウスバシロチョウの雌を1頭だけ採ったことがある。しかし、そのときのものは鱗粉がはがれたひどく飛び古してものだった。その写真を何人かの人に見せたら「本当にチベットウスバシロチョウ? 違うんじゃないの? 」と言われ、プライドを傷つけられたらしい。だから彼も復讐心に燃えている。汚れていない新鮮な個体を探し行くから一緒に来てもいいよと誘われたのである。
 この話を聞いて小生、チベットウスバシロチョウについて早速調べてみた。するととんでもないことが分かってきた。物の本によれば過去一世紀にわたってほとんど記録されたことがないまぼろし中のまぼろしのチョウチョだというのだ。それが巨匠と行けば見ることが出来るかもしれない。なぜなら巨匠は以前1頭観察しているから生息場所も知っているのである。まぼろしといっても現実となる可能性は抜群に高いのだ。 
 二つ返事で「行きます。ぜひつれて行ってください」と巨匠に頼み込んだのは言うまでもない。かくして2014年の海外ウスバシロチョウ探索の旅は中国と決まり、7月1日、中国に向けて出発したのである。

以下続きます。

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反町康司著「パルナシウス図鑑」によればチベットウスバシロチョウには「2亜種が知られ、いずれも四川省だけに分布するが、本種のすべての亜種は極珍で、亜種 tibetanulus を除けばいずれも一世紀以上もの間成虫が得られていない」(P.96)たいへん珍しいチョウチョと書かれている。こんなものすごい蝶と出会うことができるのだろうか・・・。
*チベットウスバシロチョウの図版も同書からコピーさせてもらいました。


by Weltgeist | 2014-07-19 23:31


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