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鯉のおいしさに目からうろこが落ちた (No.1998 14/06/26)

 ノングルメで食べることにあまり興味のない小生なのに、このところ食べ物の話ばかりです。先日東北の珍味・ホヤについて話しました。今日は長野県佐久で食べてきた鯉の話です。
 渓流釣りが好きな小生にとって、鯉のような平地の池沼にいる魚はあまり釣った経験がない。イワナやヤマメがすむ山奥の渓流では鯉が外道として釣れてくることもないからだ。ところが、最近もっと下流のいわゆる本流域での大型ヤマメ釣りをやることが多くなって鯉が外道として釣れてくることがときどきあるようになった。
 本流のヤマメ釣りをやっていて鯉が掛かるととんでもないことになる。引きの強さに一瞬化け物のような大ヤマメが掛かったのかとドキドキするが、スピード感はないのに猛烈に重量感のある魚の暴れ方ですぐに鯉だと分かる。散々暴れ回った末に、水面に鯉の丸い口が見えてくるとヤマメでなくてがっくりするのである。
 小生にとって鯉はいつまでたっても釣りの対象魚にはなれない外道である。こんな奴がきたら早くハリから外れて逃げて欲しいと思う。暴れ回れば細い渓流竿などポッキリ折られる恐れがあるからだ。歓迎せざる外道は釣れてきても早く逃がすことばかり考えてしまうのである。
 ところが、いつも一緒に渓流釣りに行く釣友のTK君はなぜか鯉が大好きだ。だから、小生が鯉をハリに掛けて、そのあと逃がしてやったというと、ひどく残念そうな顔をする。彼に言わせれば鯉は最高においしい魚だから、釣れたらリリースなんてとんでもない。おいしく、おいしく食べてやるのだと言っていた。
 だがこれまで小生は鯉をおいしい魚と思ったことは一度もない。何か泥臭くて食べる気のしない魚をTK君がおいしいというのが信じられなかった。TK君の鯉好きは特別だろうと思っていたのである。
 それが先日、長野県佐久地方にドライブに行って昼食を何にしようか迷ったとき、TK君がわざわざ佐久まで鯉を食べにくるということを思いだした。彼は「**さん、鯉がおいしくないというのは間違っている。一度佐久へ行って本場の鯉を食べてみてほしい」と言っていたことを思い出したのである。
 せっかく佐久まで来たのだからそれじゃTK君が言う本場の鯉を食してみようと、小海線中込駅近くにある鯉料理専門店に入って、鯉こく、うま煮、あらいの三点セットの定食を食べたのである。
鯉のおいしさに目からうろこが落ちた (No.1998 14/06/26)_d0151247_22360131.jpg
 上の写真で右にあるのがうま煮だが、これを一口食べたとたんに「ウッ、何だ、これは」と思ってしまった。泥沼にいるくさい鯉を想像していたのに、においなど何もない。それどころかすごくうまいのだ。続いて出て来た鯉こくも信じられないほどおいしい。小生、スズキやコチなど海の魚のあらいを知っているので、こちらはそれほどとは思わなかったが、隣で食べている我が家の共同生活者(早い話が小生の奥さん)もあらいもすごくおいしいと言っているからこれも抜群なのだろう。
 ま、ノングルメの小生の舌だからあまり断定的なことは言いにくいが、鯉という魚の概念をぶちこわすほどのショックを受けたのは確かである。だが、それではいままで食べてきた他の地方の鯉は何でおいしくなかったのか。鯉の種類が違うのか、それとも料理法が違うのか。食べ終わったあと、料理人に聞いてみたら、それは佐久鯉が食用としておいしく食べられるように育てられ、それなりの料理法も研究されてきたからだ、と言われた。
 つまり、鯉が違っていたのだ。自然な池沼で泳いでいた鯉をきれいな水の中で泥を吐かせた程度ではおいしい鯉にはならない。佐久鯉は食用としておいしくなるよう220年もかけて品種改良されてきたもので、しかも千曲川の冷たい水温で普通の鯉より成長を遅らせて育てているから、くさみがなく、身が引き締まっていると言う。
 世間一般での鯉料理はソーソーであっても、佐久で食べる本場の鯉料理は味が違うというのだ。食材の違いと200年に及ぶ料理法の研究で、鯉がこれほどまでおいしい魚になることを知り、目からうろこが落ちる思いがしたのだった。

by Weltgeist | 2014-06-26 23:51


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