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ホヤについて (No.1994 14/06/18)

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 ホヤという食べ物をご存知だろうか。最近は東京でもときどき売られているのを見るが、全国的にはあまり知られていない北国の珍味である。東北の太平洋岸、とくに三陸海岸を中心に盛んに食べられている。しかし、東京より西の地方ではまだなじみが薄いようだ。
 それでも東京のスーパーで最近ようやく売られるようになったものを見ると、皮をむいた身を塩水に漬けて売っているものが多い。生きたホヤは写真のように奇妙な形をしているから知らない人は皮をむいた半調理品でないと食べられないのだろう。
 一見すると海草のように見えるが、実はこれでもれっきとした動物である。幼生の頃はオタマジャクシのような格好をして泳ぎ、海底の岩などにくっつくと植物の根に似たもので固着して写真のような姿に変態する海産動物なのである。
 この変わった生き物を小生が最初に食べたのは昭和40年台前半の頃である。三陸海岸に釣りに行ってたまたま入った食堂でおばさんが食べさせてくれた。皿に乗せられたホヤを見て、得体の知れない姿に最初は一瞬たじろいだ。不気味な気持ち悪いものに見えて、おそるおそる食べたのである。そして、口の中に入れたとき何とも表現しがたい味がした。うまいともまずいとも言える段階ではない。それらを超越した不思議な味だったのだ。
 第一はホヤ独特のにおい。言葉では表現できないが、いままで食べたどんな食べ物とも似ていない不思議なにおいであった。ところが、そのにおいが妙に後を引くのだ。変なにおいだが悪くない。いや、また食べたいという思いのする魅力的なにおいに思えたのである。
 もう一つはホヤ独特の食感だ。酢の物にした身を口の中でかむと、しゃきっと切れる。それがこれまた何とも形容しがたいおいしさがある。それで、このときから小生は無類のホヤ好きになってしまったのである。
 しかし、ホヤの味は絶対マイルドではない。それどころかものすごく癖のある食べ物だから、好き嫌いがはっきり出るだろう。うまいと思う人は癖のある味に魅了されるが、駄目な人は「こんな変なにおいのするものなど食べられない」と拒否することだろう。それだけ個性の強い食べ物なのだ。
 まだ東北のマイナーな食べ物にすぎなかったころ、小生はせっせとホヤを食べた。というのもそのマイナーさが、ホヤの値段の高騰を抑えてくれていたからだ。昔は三陸の浜へ行くと、一個10~50円くらいの安さで食べられた。しかし、ホヤがいずれ全国区の食べ物になれば第二のウニのように高価な食べ物になるかもしれない。そうならない前に小生はせっせとホヤを食べるつもりである。
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ホヤはその形がランプのホヤに似ているところから付けられた名前だという。近くの魚屋では「海のパイナップル」といううまいキャッチフレーズで売っていた。
料理の仕方は表面の硬い皮をはぐと中の黄色い身が出てくる。これをホヤの中から出た海水(塩水でもいい)で洗って、キュウリと一緒の酢の物で食べるのが小生の好みである。小生、酒はたしなまないが、左党には絶好の酒の肴となることだろう。変わったところではスパゲティに入れたりして我が家では食べている。ホヤは新鮮なほどおいしく、鮮度が落ちてくると独特のにおいが強くなってくる。なるべく新鮮なうちに食べるのがお勧めだ。


by Weltgeist | 2014-06-18 23:40


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