もう60年以上昔のことだが、池田勇人という政治家(確か大蔵大臣だった)が「貧乏人は麦飯を食えばいい」と発言して物議をかましたことがある。彼は、舌禍人間のようで、そのあと「中小企業の五人や十人自殺してもやむを得ない」ということまで言い放った。こんな問題政治家がそのあと総理大臣にまで上り詰めたのである。そうして総理になったら「私は嘘は言いません」と以前の問題発言を逆手にとって開き直っていた。
小生が小学校に持って行ったお弁当のご飯には、平べったくて真ん中に筋が入った麦が混じっていた。全部白いお米を食べられるのはお金持ちの子供で、まさしく庶民はみんな麦を混ぜてお米を増量し、空きっ腹を満たしていたのである。しかし、それでも食べられるだけマシで、「坊やたちは幸せだよ。麦飯でも食べられるのだから」と年寄りから羨ましがられた。第二次大戦終結直後は、麦どころか食べるものがなくてヒエやアワで飢えをしのいだと大人が言っていた。全員貧乏人の時代だったのである。 だから、小学校でお弁当を食べるとき「お百姓さんの苦労を知って、ご飯粒は一粒残らず大事に食べなさい」と教えられた。貧乏人が麦入りのご飯を食べるのも普通だったのである。しかし、戦後急速に経済が立ち直った日本は、麦飯を食べることもなくなった。誰もが当たり前のように白いご飯を食べられるようになって、現在に至っているのである。 そんな苦しい時代をくぐり抜けてきたから、少々のことにはへこたれない。粗食になれているので何を食べてもおいしいと感じられるし、仮に再び食糧難の時代が再到来しても十分耐えられる自信がある。 欠乏は人を強くする。悲しいけれど、貧乏人はこの言葉で自らを慰めつつ雑草のように生きるしかない。上を見ても下を見てもきりはない。上の人を羨むことも、下の人を見下すこともしない。与えられた現状を感謝して受け入れることが自分の生き方ではないかと思い始めている。
by Weltgeist
| 2014-06-05 23:04
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