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歯医者の守護神、聖アポロニア (No.1941 14/04/01)

歯医者の守護神、聖アポロニア (No.1941 14/04/01)_d0151247_23330925.jpg 歳をとってくると体のあちらこちらに不具合が生じてくる。目は老眼、耳は遠くなり、歯は入れ歯になるのが年寄りの定番コースである。しかし、小生、目は老眼と白内障が進み、耳も聞こえにくくなっているが、歯だけは丈夫で、虫歯もほとんどない。小生より若い友人の中に入れ歯でステーキのような固い物が食べられないと嘆く人がいるが、小生は全然大丈夫。手羽焼きに付いている軟骨など平気でかみ砕いて食べる丈夫な歯を持っていた。
 ところが自慢だった小生の歯がついに年貢の納め時がきたようだ。先週から突然左の奥歯が痛くなってきた。軟骨どころか少し固い物でもかむと歯がひどく痛み、歯医者に行かないとヤバイ状況になってきたのである。心臓を初めとして各種の持病をたくさん持つ自称、「病気の百貨店」を自認する小生だが、これまで歯だけは大丈夫と高をくくっていた。それがどうやら最後の橋頭堡も落城したようである。
 歯科医院の先生は小生が痛いと感じている歯茎の部分をちらっと見て、「ハハーッ」と言ってから鏡を使って小生にもその状況を見せてくれた。確かに左奥歯の歯茎ひどく腫れている。先生はしばらく歯のあたりをドリルで研磨したあと、腫れた歯茎に穴を開けて膿をとってくれた。今日の治療はここまでで、歯茎に入ったばい菌を殺すための抗生物質をくれてお終い。今後、腫れが収まったところで本格的な治療を行うと言う。このあとどうなるか。まさか定番老人コースの究極、入れ歯まで進まないとは思うが、ちょっと心配ではある。

 ところで、左の絵は、スペインの画家、フランシスコ・デ・スルバランが1630年に描いた「聖アポロニア」(ルーブル美術館所蔵)である。何でこんな絵を突然持ち出したかというと、アポロニアは西欧では歯科医師の守護神となっているからである。
 アレキサンドリア(現在のエジプト)に住んでいたアポロニアは、AD244-249年頃起きた異教徒の暴動でキリスト教信仰を捨てるよう強要されたが抵抗する。すると怒った異教徒たちは彼女の歯を一本ずつ抜く拷問をする。しかし、それでも信仰心を捨てなかった彼女は燃えさかる火の中に自ら飛び込んで殉教したと言われている。以来、カトリックの聖人としてこの処女は歯科医師の守護神となったのである。カトリック教会は2月9日を聖アポロニア祝宴の日としている。
 小生がルーブルで撮影したスルバランの絵は少し暗くてわかりにくいが、彼女が右手に持つのはやっとこで、先には抜いた歯をはさんでいる。こんなことから聖アポロニアは歯医者の守護神と見られるようになったのだろう。昔の人は麻酔もなしにやっとこで強引に虫歯を抜かれていたのだ。歯科医院は痛い思いをさせる怖い場所であった。しかし、スルバランの描くこんな優しそうな女性の絵が歯科医院に飾られていたら、嫌がる子供たちも多少は安心したことだろう。
 ちなみにアポロニアが左手に持つのはシュロの葉で、これはキリスト教徒の象徴。まもなく今年のイースター4月20日を迎えるが、イエス・キリストがエルサレムに入城するとき、人々は道にシュロの葉で作った絨毯を敷いたとされる。その日を祝う「シュロの日曜日、パームサンデー」はイースターの一週間前だから、今年は4月13日である。


by Weltgeist | 2014-04-01 23:58


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