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おじいさんの古包丁とウナギ (No.1825 13/11/01)

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 パソコンに続いて、我が家で使っている包丁の柄が腐ってだめになってきたのでこれの修理にチャレンジしてみた。以前、ハンドメイドナイフを作っていたことのある小生、包丁の柄など簡単に付け替えられると軽く考えていたのである。だが、すでにナイフ作りをやめて20年以上たっていて道具もない。案の定、アメリカ人のBさんからドリルなどを借りてハンドル作りの作業に取りかかったら意外に手こずってうまくいかない。
 しばらくやった末に「これは専門のお店に修理に出した方が早い」と判断して、都下にある金物屋さんに持って行ったら、一本900円で新しい木の柄をつけてくれるという。
 なんだ、これなら自分でやらないで最初からお店に出した方が良かったのである。ただし、写真にある一番長い刺身包丁は、柄の付け根がさびで折れて無いから修理不能と宣告された。この包丁は明治生まれの小生のおじいさんが使っていた物でこれまでずっと研いで使い続けてきたので残念だ。
 凝り性だったおじいさんの趣味は小生と同じ魚釣り。アユや黒鯛をさばくため出刃包丁はいずれも切れ味のいい逸物をそろえていた。彼が亡くなったとき遺品として小生がもらい受けたもので、これ以外にウナギをさばくウナギ包丁や、日本刀と同じ鍛造はがねで作った鉈などももらっている。
 しかし、先端が角形になっていて、切っ先で骨切りをしながらうまくウナギを開けるように作られたウナギ包丁というのはなかなか出番のない包丁である。たまに釣り上げたウナギや穴子にチャレンジしたことはあるが、うまく切れたためしがなく、使うことができずにしまいっぱなしにしていた。
 ただ、このウナギ包丁では忘れられない思い出がある。実はとんでもない場所でウナギを捕まえて蒲焼きに挑戦したことがあるのだ。はっきりした日時は覚えていないが、昔住んでいた田園調布の道路で「泳いでいた」ウナギをみつけたのである。家は多摩川からは離れた高台にあったからウナギが陸を上って来たとは思えない。たまたまこの日は台風の襲来で、道路の一部が冠水した。そこにウナギが泳いでいたのである。
 最初はどこかのウナギ屋のいけすが壊れて逃げ出したと思っていたのだが、近くにウナギ屋も魚屋もない。もしかしたら変な人が庭の池にウナギを飼っていて、これが逃げ出したのかもしれない。とにかく普通の住宅地の路上でウナギを捕まえるという希有な体験をしたのである。
 そして、捕まえたウナギを蒲焼きにしようとウナギ屋さんの包丁さばきを思い出しながら、生きたウナギに目釘を刺して、背開きに取りかかった。だが、ウナギは蛇のように目釘に巻き付いて、うまく開くことができない。結局ぶつ切りにして食べた思い出が残っている。以来この包丁はほとんどお蔵入りして使っていない。
 ウナギ屋さんの見事なまでの包丁さばきは、小生のような素人にはとうていできないとあきらめているのだ。たまたま、今夜放送していたNHKの「キッチンが行く」という番組で、浜名湖のウナギを和食の名人が取り上げていたが、彼もウナギをさばくことはできないようで、ぶつ切りにしていた。また、一昨年、ロンドンのタワーブリッジ近くのウナギ料理屋、「マンゼ」でイギリス風ウナギ料理を食べたが、このときもウナギはぶつ切りだった。
 ロンドンではウナギ包丁など無いからぶつ切りは致し方がないだろう。最近はウナギは絶滅危惧種に認定されそうなくらい数が少なく、ウナギ料理もすごく高いものになっている。こんな時こそたまにはウナギを釣って、例の包丁でもう一度さばきに挑戦したいのだが、どうだろうか。うまく釣れて上手にさばければ最高なのだが・・・。
by Weltgeist | 2013-11-01 22:55


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