人気ブログランキング | 話題のタグを見る

中国のカントリーリスク (No.1767 13/08/27)

 本屋でプレジデント9月16日号を立ち読みした。例によってこの雑誌は経営者の都合の良いことばかり書くので好きではない。今回もトヨタとグーグルの経営方針についてあれこれ書いてある。しかし、こんなろくでもない記事はすっ飛ばして、パラパラと速読で読んでいたら、大前研一氏が「バブル崩壊前夜の中国とどう付き合うのか」という記事のところで目が止まった。
 先日新疆ウイグル自治区で中国の負の部分を嫌と言うほど見せつけられたばかりなので、この記事だけは真面目に読んだ。それによれば中国ではカントリーリスクの増大によって生産拠点としてのメリットが喪失して、バブル崩壊前夜の様相を呈しているという。
 大前氏によれば新疆ウイグル自治区やチベットでは共産党政権による締め付けが強化されて、その矛盾が暴動にまでなったと書いている。だが、共産党の支配は中華人民共和国成立のときからのもので、今になってその矛盾が突出してきたとはどういうことだろうか。その原因について大前氏の分析が小生には興味深かった。
 中国は日本が歴史を歪めて認識しているのはけしからんと言っているが、大前氏によれば歴史認識を歪めているのは中国の方ではないかと言う。中国共産党が日本を追い出したというが、実体は蒋介石率いる国民党が追い出したのであって、国民党は解放後3年経って毛沢東たちに追い出された。最初共産党は日本を追い出すほどの力を持ち合わせていなかったのである。そのことを共産党が国民に教えないのは、真実を語れば共産党支配が崩れてしまうからだ。彼らがこうした歴史を直視しない限り日本との関係が友好的になることはあり得ないという。
 かって日本と戦っていた毛沢東主義の共産党は農村を基盤としていた。それは発展した現代の中国とはかけ離れている。共産主義は貴族や資本家から奪った富を貧しい農民に分配することは説明できても、今の時代に富をどのように分配するかの理論が弱い。共産主義とは貧しい時代の教義だからだ。
 中国は豊かになったけれど、その富を国民に分配せずに共産党幹部や政治家に集中させている。これが今の中国の矛盾である。重慶の薄煕来が汚職で問われているのはそうした矛盾の一角に過ぎない。退任した温家宝が2000億円もの財をどうして作れたのか。共産党幹部はお題目にすぎなくなった共産主義をいまだに唱えてすさまじいばかりの富の収奪を繰り返している。これが今の中国が抱える矛盾の根本的なことなのである。
 つまりは、新疆ウイグル自治区や尖閣問題で強圧的に振る舞うのも同じ根から出たものにすぎない。近代化した中国を古い共産党政権が牛耳っているところに全ての問題があることになる。共産党の一党独裁支配こそ、諸問題の元凶なのである。そうなると気の毒なのは中国国民だ。共産党の都合のいいように世論を操られ、産み出されてきた富は共産党に横取りされる。習近平はそれを改善する気持ちはありそうだが、本気での改革はできないだろう。なぜなら、それは自らの金づるを失うことであり、改革をやれば仲間から背中を刺されかねないからだ。
中国のカントリーリスク (No.1767 13/08/27)_d0151247_20301785.jpg

by Weltgeist | 2013-08-27 21:27


<< 目がおかしいです (No.17... ジョン君はイギリスに帰っていっ... >>