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サッチャー元首相の死について (No.1665 13/04/09)

 英国の元首相、マーガレット・サッチャーが亡くなった。87歳だったというからほぼ人生を満額で生き抜いたと言えよう。鉄の女と言われながら、自分の政治信念を曲げることを拒否し、しばしば英国民を苦境に立たせた。しかし、「ゆりかごから墓場まで」と言われた手厚い保証制度ですっかり汗して働く意欲を失った人々を滅多切りして追放し、英国病と言われて疲弊しきった国を建て直した。活気を取り戻した今の英国を見ると彼女の政治的手腕は優れたものであったと言わざるを得ない。
 しかし、今日のニュースで英国民はサッチャーについて様々な評価を下していた。「偉大な政治家」という人と、「Evil Woman 悪女」という人がいるし、中には「 Rejoice 慶祝」と書いた太鼓を打ち鳴らして喜んでいる人まで様々であった。
 小生が一番印象に残っているのは、1982年にアルゼンチンとの間で起こったフォークランド(アルゼンチ名、マルビナス諸島)紛争だ。南大西洋にある英領フォークランド諸島にアルゼンチンが侵略したことに、激怒したサッチャーが英国軍を派遣し3ヶ月に及ぶ激しい戦争の後アルゼンチンを降伏させた。最後の勝利の時、サッチャーはフォークランドの中心都市「ポート・スタンレーにはユニオンジャックがはためいている」と勝利宣言を勝ち誇った顔でしたことを覚えている。
 英国本土から数千㎞も離れた島は、アルゼンチンの目の前にある。旧宗主国が植民地として強奪したもので、島の所有権は自分たちにあると思うアルゼンチン軍が島に駐留する英国軍を襲撃し蹴散らしたのが紛争の発端である。当時のフォークランドは、今の尖閣と同じように領有権でもめていて、米国大統領・レーガンはサッチャーに話し合いによる解決を促していた。しかし、鉄の女はそれを断固拒否した。彼女は自ら戦争の火ぶたを切って、英国の「領土」を奪還したのである。そのあと戦争に負けたアルゼンチン人の少女が涙しながら「マルビナスはアルゼンチンのものだ」と言って悔しがっていた姿を覚えている。
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 今日の英国ザ・タイムス紙電子版を見たら、
The ceremonial funeral of Baroness Thatcher will be held next Wednesday at St Paul’s Cathedral with the Queen and the Duke of Edinburgh in attendance.
と書いた写真が掲載されいた。次の水曜日にセントポール寺院で、エリザベス女王、エジンバラ公が列席して葬儀が行われるという。英国君主が元首相の葬儀に参加するのは1965年のチャーチル首相の死以来というから彼女の存在がどれだけ大きかったかが分かる。知らなかったけれど、上のキャプションを見てサッチャーは"Baroness Thatcher"と呼ばれていることが分かった。つまり「 Baroness 女男爵」という称号をもらっていたのだ。最後は認知症で自らが誰であるかも分からなくなったというが、鉄の女としては相応しい呼び名だろう。
 一方で、下の写真のように「魔女は死んだ」というプラカードを持って喜んでいる写真もタイムスは同時に掲載していた。
 遠い外国のことだからサッチャーをどう評価したらいいのか小生には決めかねているところがある。しかし、少なくとも死んだ人間を魔女と呼び、喜ぶのはいきすぎだろう。死者への唾棄は人間の尊厳に対する侮蔑であり、こうした思いやりのない行為は巡り巡って批難する人そのものの心を蝕んでいくだろう。
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上の写真のキャプションは In Brixton, south London, a core of 150 people celebrated into the night.
by Weltgeist | 2013-04-09 22:38


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