シジミチョウの美しき展翅法を教わった (No.1619 13/02/11)

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 フィールドで採集してきた蝶は展翅という作業で乾燥した標本に仕上げる。しかし、この作業は簡単のようでいて実はむずかしい。ただ翅を拡げるだけでなく、蝶を美しく見せるには高い技術がいるのだ。小生、これまで美しい標本を作ろうしても「展翅」で何度も失敗して悩んでいた。ある程度の大きさは、以前Yさんから直接手ほどきを受けて、何とかまともにできるまでにはなったが、小さいシジミチョウのたぐいとなるとお手上げで、翅に傷がついた汚いものしかできない。
 それで以前からものすごくきれいに展翅した見栄えのいい標本を作る**さんのところに本日教えを乞いに行ってきた。チョウチョに興味のない人にはきっと面白くない内容なので今回はスルーしてください。しかし、蝶初心者の小生には学ぶべきことがいっぱいで、目からウロコが剥がれたような一日だった。
 以下、**さんがシルビアシジミとヒメシジミを使って展翅を見せてくれた手順である。しかし、**さんの作業が驚くほど早くて、一部写真がうまく撮れていなかったところがある。これはキャプションから参考にしてほしい。

d0151247_23541940.jpg1、採集してきた蝶はすぐに硬くなる。一旦硬くなったら、軟化といって、湿ったタッパーなどに入れて柔らかくしておく。軟化する時間は季節や標本の硬化状態で違ってくるが、最終的に胴を指でつまんで、上から軽く息を吹きかけると翅が生きていたときと同じくらい柔らかに開けば準備OK。そして、展翅する直前に頭の側から軟化液をほんの少し注射器で注入する。多く入れすぎたら必ずティッシュで出た液を拭き取っておくこと。


d0151247_23563384.jpg2、**さんは昆虫針を刺すことにこだわって時間をかけていた。上で述べた同じやり方で蝶の胴体を持って息を吹きかけて翅が開いたところで、胴体の中心からまっすぐ下に刺す。垂直に針が刺さっていないと展翅板から外した後で狂いが出る元になりやすいという。まっすぐなら後で狂いはほとんど出ないと言っていた。
d0151247_21373866.jpg3、展翅板に針を刺すときも、とにかくまっすぐに刺す。板から外したあとの狂いはこのときまっすぐになっていなかったから起きるのが原因の大半らしい。まっすぐ刺さったら、高さを調節。展翅板の縁よりほんの少し高い方がいいと教わった。
d0151247_21375376.jpg4、高さが決まったら、テープで翅を仮止めする。このときも上から息を吹きかけて翅が開いたところでテープを被せる。息をかけて翅が開かないようだと軟化が不十分である。なお、**さんはロールになったトレペをカットしてテープにしている。これの良さは、矢印で示したように板とテープの間にロールでできた隙間が出ることだという。ピッタリ密着ではなく隙間があるから微妙な作業をやりやすい。
d0151247_2154888.jpg5、翅の調整。これが展翅の一番重要なところかもしれないが、**さんは一瞬でやってしまい、早すぎてうまく撮れない。全部で3頭トライしてもらったが、結局全部核心は撮れていなかった。やり方は翅の矢印のところを針に引っかけて上に上げるだけだが、テープを心持ち上げるのがコツのようだ。彼は片方の翅だけ二枚を形良く上げるのに5秒かからない、驚くべき速さで展翅して行った。
d0151247_21382611.jpg6、触覚は前もって頭を水平にしておいてからテープの隙間に二本のピンセットではさみこんでいく。今回使ったシルビアシジミの触覚は弱いので扱いは注意する必要があるが、彼にかかると魔法のように簡単にまっすぐになる。
d0151247_21384252.jpg7、一度触覚を伸ばした時点で全体のバランスを見て、さらに翅の拡がり方や触覚の角度などをもう一度微調整する。
d0151247_21393043.jpg8、これで展翅は終了。あとは乾燥させて翅や触覚、胴体がしっかり固まるまでおいておくだけでいい。ここまで色々撮影しながらやったので時間は普段よりかかったろうが、それでも3分くらいだった。しかも、そんなにスピーディにやっても、できあがりで破綻がない。驚くべき速さに小生はただ唖然とするだけだった。でも、**さんが最後に一言「展翅は数をこなせばだれでも上手になります」と言っていた。小生でもうまくできるようになるだろうか。
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by Weltgeist | 2013-02-11 23:23


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