人気ブログランキング | 話題のタグを見る

1億5千万円のマグロにはたまげた (No.1583 13/01/06)

1億5千万円のマグロにはたまげた (No.1583 13/01/06)_d0151247_22203015.jpg
 昨日、競争することから生じるいくつかの問題点を書いたら、今日は築地中央卸売市場5日の初競りで222㎏の大間産クロマグロが1億5千万円で競り落とされたことが報じられていた。(写真)これは1㎏あたりで70万円、寿司一貫に直せば4万円にもなるというとてつもない値段で落札されたことになる。
 といっても大間のマグロのすべてがこんな値段で落とされたわけではない。年末の競りでは、高値で㎏2万5千円程度だったし、この日も他に数尾出ていた大間マグロは常識的な値段で落とされたという。なぜこの1尾だけが突出したのか。ニュースによれば落札したすしチェーン店「すしざんまい」と、香港のグループがこのマグロに絞って競り合い合戦をしたらしい。
 落札価格も異常なら、他に同じようなマグロがあるのに目を付けた一本だけで競争していくことも異常である。だが、この異常さは買い主にとってはそれなりの思惑があってのようだ。「すしざんまい」の木村社長は「ちょっと高かったけど、いいマグロを買いたかった。たくさん食べて景気も良くなってほしい。落札価格から計算すると1貫4万円くらいになるが、すしざんまいでは通常価格の418円でお客様に提供する」と言っていた。
 これは明らかに損を承知での落札であるが、仮にすしざんまいチェーン店の広告宣伝費と考えた場合どうなのだろうか。正月でヒマな小生、すしざんまいを調べたら、「2001年(平成13年)に、築地に第1号店がオープン。以後、東京都内を中心に急成長。関東中心に49店舗展開する。東京以外では、福岡県に3店舗、神奈川県と北海道に2店舗ずつ、栃木県と大阪府に1店舗ずつがある。資本金9800万円、従業員数700名」とあった。
 このデータのあと店舗数は増えたかもしれないが、仮に現在のチェーン店が60店舗とすると、一店舗あたりで250万円となる。それほど高い広告宣伝費ではない。さらに、これからとった寿司はご祝儀価格として売れるから、もっと安い物につく。上の写真のようにすごい数のカメラマンに囲まれてテレビ、新聞でも報道されたことを見れば社長の馬鹿げた価格を競り上げ作戦は成功したと言えよう。
 なにかと暗い話題が多い日本で明るい話題を提供した打ち上げ花火としての効果はあると言う人は多いようだ。しかし、それにしてもこの値段は異常すぎる。異常なものは異常な反応を呼び込む。世界的には「日本人はマグロなら金に糸目を付けないで買う」という誤ったメッセージが伝わる恐れがある。海外では安い値段で日本人にマグロを売らないと言って、高値をふっかけてくるかもしれない。これも昨日書いた過度な競争がもたらしたものの一環だろう。このあとどのような影響が出てくるのか気がかりではある。
 現代社会は異常すぎる。一方では激安店が栄え、もう一方で目もくらむ激高を吹聴する。どちらも異常なまでに激化した競争社会が生み出したものだろう。だが、今回のことは困惑したけれど、ミーハー的には1億5千万円のマグロがどんな味なのか興味がある。相当おいしいだろうから食べてみたい気がするのだ。小生も見事に木村社長の宣伝作戦に引っかかっているのである。
by Weltgeist | 2013-01-06 23:19


<< 福袋で幸福がいっぱい (N0.... 競争がもたらす限りなき格差 (... >>