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ゴルゴとサムスンの油断と失敗 (No.1464 12/08/29)

ゴルゴとサムスンの油断と失敗 (No.1464 12/08/29)_d0151247_20224574.jpg ビッグ・コミックに掲載されたさいとう・たかおの人気漫画、「ゴルゴ13」(ゴルゴサーティーン)は小生が姉妹紙ビッグ・オリジナルにコラムを書いていたころからの愛読漫画で、一時は単行本を全巻集めているほど好きな作品だった。しかし、途中で知り合いにそれを貸したら、返してもらえず収集は中断している。漫画は現在も継続中で、相変わらずゴルゴは歳をとることもなくクールに人を殺し続けているようだ。
 ゴルゴは異常なまでに警戒心が強く、自分の背後に人が立つと有無を言わさず殴り倒した。背後から狙われることを恐れているのだ。だが、そうなら彼は常に360度、周囲に注意を配らなければならない。人間の眼は後ろにはない。背後を気にするなら、ひっきりなしに後ろを振り返る必要がある。劇画では異常に神経が研ぎ澄まされたゴルゴは、自分を襲う人間が背後に接近すれば気配で察知できた。
 しかし、いくら注意力があるといっても気配を感じる距離は知れている。50m以上離れた所から狙撃するスナイパーの気配を感じることはできないだろう。そして、ゴルゴのような人間は不特定多数の人間がいる繁華街を歩くこともできない。自分の背後にはすごい数の人間が歩いてる。その全てに注意を払うことは無理なのだ。
 人間である以上24時間、あらゆる方向に注意を向けていることなどできない。強い緊張はその前後に神経が緩んだ時間があるからできる。その時は逆に注意力を失った油断した状態であろう。これはどんな注意力のある人でも同じである。人は常に油断する危険性がある。ゴルゴがいつまでも死なないのは漫画の上だからだ。

 現在アップルとサムスンがスマホの特許問題で争っているが、サムスンは油断していたようで米国での裁判には負けてしまった。サムソンという名前は旧約聖書士師記に出てくる怪力の持ち主・サムソンから来ている。彼はものすごい怪力でユダヤ人を支配するペリシテ人をやっつけていく。その怪力の源は彼の髪の毛にあり、これを切られると怪力も失われるのだが、油断したサムソンはデリラという女に自分の急所は髪の毛だともらし、寝ているとき彼女に髪の毛を切られてしまう。怪力を失って捕らえられたサムソンは、目をえぐり取られるという残酷な目にあう。だが、ペリシテ人たちはやがてサムソンの髪の毛が新たに生えてくることを忘れていた。再び髪の毛が伸びてきて力を取り戻したサムソンは、ペリシテ人の前に引き出されたとき、宮殿の柱につかまりたいと頼む。油断したペリシテ人がそれを許すと、サムソンが柱を揺すって宮殿を破壊し、ペリシテ人をやっつけるという話である。
 漫画の上でゴルゴは失敗することがないが、現実にはサムスンはペリシテ人のように油断していた。どのような不備があったのか知らないが、きっとサムスンは床屋に行きすぎて髪の毛を短く切りすぎたのだろう。一瞬の油断で10億ドル(800億円)の賠償を命じられてしまった。だが、サムソンの伝説に従えば髪の毛はまた生えてきて、怪力は復活する。ビジネスの世界は食うか食われるかである。次は気をつけて油断しなければいいのだ。
by Weltgeist | 2012-08-29 21:08


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