人気ブログランキング | 話題のタグを見る

尖閣問題、想定外の反応 (No.1458 12/08/23)

尖閣問題、想定外の反応 (No.1458 12/08/23)_d0151247_2150640.jpg
 香港の活動家が尖閣諸島魚釣島に土足で踏み込んで「ここは中国の領土だ。小日本は出て行け」と叫んだことにはひどく腹がたった。日本はもっと強硬に対応しなければなめられるばかりである。だが、強硬に出たときの中国の反応についてどこまで予想していただろうか。単なる小競り合いの段階で終わると考えていると判断を間違えると 軍事評論家の田岡俊次氏が今日のテレビで語っていた。
 挑発にしっかり反撃せよと言っても、それで中国と本格的な戦争にまで発展はしないと考える人が大半だろう。しかし、それは甘い。中国の歴史を見れば国境を接する国々と絶えず戦争を繰り返してきている国だからだ。
 先月、小生はインド北部に行ったが、ジャム・カシミール州ラダックの北側には「アクサイチン」という3万平方キロにも及ぶ広大な地域がある。ここを中国が武力で占領し、今は中国領として実効支配しているのだ。1962年、米ソがキューバ危機で緊張している隙に国境問題で対立していたアクサイチンに軍隊を派遣し、インド軍をけちらして自分の領土としたのである。中国は領土問題では本格的な戦争になることも辞さず、武力を使って強引に占領する国なのだ。
 例えば1969年にアムール川(黒竜江)支流ウスリー川の中州にあるダマンスキー島(中国語名珍宝島)の領有権を巡ってソ連との間で大規模な軍事衝突が発生している。このときは4,380kmの長さに及ぶ中ソ国境線の両側に、65万人のソ連軍と81万人の中国人民解放軍部隊が対峙し、ソ連軍側はダマンスキー島での武力衝突で31人の死者と14人の負傷者を出している。
 さらに中国は1984年にはベトナムとの国境紛争を起こしている。このときの戦闘でベトナム軍は推定3,700名分の遺体を残して敗退した。これ以降の中国は、ベトナム沖合の海洋利権確保を計画して南沙・西沙諸島への進出を図り、1989年3月にジョンソン南礁の衝突(赤瓜礁海戦)で再度ベトナムと交戦し、ベトナム水兵70名以上が死亡。海上の戦いでも勝利を収めた中国はこの海戦で赤瓜礁のほか、永暑礁、華陽礁、東門礁、南薫礁、渚碧礁と後に名付けられた岩礁または珊瑚礁を手に入れているのである。
 このような過去の実績を見れば、尖閣問題が先鋭化してくれば中国の思う壺で、本格的な戦争状態になる可能性が強いと考えざるをえないと田岡氏は言っている。尖閣問題で中国に憤りを感じている人は、こうした可能性をどこまで想定しているのか、しっかり考えておく必要があるだろう。
 2010年に起こった中国漁船員逮捕で、中国はレアアースの輸出停止、中国本土にいる日本人の拘束という対抗手段を講じた。その程度の危害でオタオタしているようでは相手に足もとを見られてしまう。戦争になれば国交断絶、中国に進出している日本企業の財産没収、さらに核ミサイルの照準を日本に合わせることくらいはやりかねない。7月13日の人民日報は日本の尖閣諸島国有化方針に対して「釣魚島問題を制御できなくなる危険性がある」「日本の政治家たちはその覚悟があるのか」と武力衝突に発展する可能性を示唆している。つまり日本は我々と戦争をやる気かと脅しをかけているのだ。
 日本は日米安保条約でアメリカと同盟関係にあるから、いざとなればアメリカが守ってくれるだろうと我々は考えているが、田岡氏によればこれも甘い幻想だという。もちろん中国の核ミサイルに対してアメリカは守ってくれるだろうが、領土問題のような微妙な地域紛争には中立を守り、日本に加勢してくることは期待できないだろうと言っていた。つまり、我々は尖閣問題で中国は戦争までしない、もし戦争になったらアメリカが助けてくれるといった希望的観測は全てを捨てて、現実的になる必要があるというのである。
 現実的とは、尖閣を日本領土として世界は認めているのだから、ここで中国を煽りすぎて戦争にまで発展させないということである。ナショナリズム的に考えれば腹の立つことばかりだが、ムキに感情的になることは、相手の手に乗ることになる。一番効果的な方法はやはり田岡氏が指摘するように、クールな戦略で挑むことではないだろうか。
by Weltgeist | 2012-08-23 22:53


<< 竹島問題についてはどう対応する... 異常気象の夏 (No.1457... >>