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不運な一日に出食わした人たち (No.1393 12/05/17)

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 前の山を散歩していたらどこからともなくホイッスルの音が聞こえてきた。道路の方で何か工事でもやっているのかと思ったが、それにしてはときどき人の叫び声まで聞こえる。これは変だと思って、山から下りて道路まで行くとパトカーが止まっていて、その先に赤い旗を持ったおまわりさんが木の陰に隠れるようにしている。ねずみ取りをやっていたのだ。
 こういう場合、散歩は好都合である。車に乗っていないので捕まる心配がない。気楽に歩いて行って取り締まりの現場を近くで観察できるのだ。早速近づいて「何やってんですかぁ」としらばっくれて彼らの仕事ぶりを見学させてもらった。おまわりさんは面倒な奴がきたという顔をして小生の問いには答えない。「何をやっているのかって? 見れば分かるだろう」という態度で小生を無視している。ここで小生と世間話でもしたら職務怠慢、規律違反に問われるのかもしれない。小生のことをうるさがっているのは見え見えだが、知らんぷりしてそれぞれ所定の配置についていた。
 そのとき突然ホイッスルが鳴って「ワゴン車・・」という大きな声がした。100mほど先でレーダーを操作しているおまわりさんから連絡があったのだろう。旗を持ったおまわりさんが道路の上に飛び出していって白いワンボックスカーを止めると、細い路地の方に誘導していく。
 40代後半くらいの運転手が「ああーっ、やってしまった。ツイテないなぁ」という顔をして、細い路地の裏手に留めてある警察の車両につれて行かれる。この中で彼は違反切符を渡され、罰金と行政処分を宣告されることだろう。きっと捕まる30秒前まで、鼻歌でも歌いながら気持ちよく運転していたのに、突然罠にはまった不幸なねずみになってしまったわけである。
 人間の運命とはこのように明日をも知れないものである。一寸先は闇なのだ。だが、物は考えようで、ここで捕まらなかったら、その先でスピード出し過ぎの事故を起こしていたかもしれない。罰金と免停程度ですんで良かったと考えた方が彼にとっては幸せかもしれない。
 するとすごい爆音を轟かせた改造車らしきものがまたまたレーダーの方に近づいてくるのが見えた。「これは絶対捕まるぞ」と思ったが、こういう走り屋は一枚上手のようである。レーダーの手前で急にスピードを落として何事も無かったかのように走り去っていくではないか。本当はこういう連中こそとっ捕まえて欲しいのだが、世の中悪知恵の働く者が得をするようにできているのだろうか。さきほど捕まった善良そうなお父さんと比べて何とも不公平である。
 そんなことを思っていると、また次のカモが来た。それを見学している小生、「捕まるなよ」と思いながら身を乗り出していたら、この車もセーフ。ドライバーは小生たちが集まっている異様な雰囲気を察知したのかもしれない。少しいらだったおまわりさんから「関係のない人は離れてくれませんか」と注意が出る。仕方が無い、これ以上取り締まりを邪魔するのもまずいと、現場を離ざるをえなかった。今日、小生は人間の運命の不思議さを改めて見させてもらったが、捕まった人たちには運命の厳しさを痛切に実感した一日であったことだろう。
by Weltgeist | 2012-05-17 23:31


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