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良い本は古本屋にしかない (No.1159 11/09/08)

良い本は古本屋にしかない (No.1159 11/09/08)_d0151247_2139557.jpg 「もう本は買わない。狭い家の中に置き場もないから読みたい本は図書館から借りる」と決めていたのに、近くで開催されている古本市についつい入って、あれもこれもと沢山の本を買ってしまった。いずれも定価の10分の1くらい、安いものでは一冊50円からあると言われ安さにつられたのである。ちょうど腹を空かせた魚がコマセに引き寄せられて、釣り上げられてしまうのに似ている。
 しかし、古本というのは小生のような偏った読書傾向のある人間には有り難い。癖の強い本は買う人も限られるから新刊書店でもなかなか取り扱わないし、仮に扱っても少しでも売れないとすぐに返本されてしまう。我々消費者の目にとまる前に消えてしまうのだ。そうした本は新たに古本として出回るのである。古本では返本という時間的制約がないから、我々も時間をかけて選ぶことができる。小生が好みの本を探すのに絶好なお狩り場が古本屋なのだ。
 今回買った掘り出し物としては「粟津則雄訳・ランボウ全作品集」「ポール・バレリー、ヴァリエテ」「足利紫山著・臨済禄提唱」「モンテニュー・随想禄1、3(残念ながら2巻は欠)」「フルトヴェングラー・音と言葉」「リルケ全集7・散文集」「現代思想・特集イスラムの世界」「同じく現代思想・特集ヴィトゲンシュタイン」「保育社・原色日本蝶類図鑑」など雑多なジャンルの他、安い文庫、新書本を約30冊ほどという超重量級の買い物をしてしまった。古本屋さんの方では心得たもので、5000円以上お買い上げだと、自宅まで宅急便で届けてくれる。
 ランボウは若い頃大学の同級生達が騒いでいるので自分も読んでみたが、何も引っかかるものを感じなかった。しかし、この年齢になって読み直せば新たな発見があるかもしれない。その意味でバレリーのヴァリエテやモンテニューの随想禄(エセー)も有名な古典だからどんなことが得られるか興味津々である。さらに臨済禄は碧巌録や無門関と並ぶ禅の公案集。全然分野の違う本だが、久しぶりに禅の世界に触れてみたい気持ちがある。
 しかし、今回一番良かったのはフルトヴェングラーの「音と言葉」かもしれない。あのまさにドイツ的な演奏をするフルトヴェングラーがこんな本を書いているなんて知らなかった。彼がどんな人で、何を考えているのか知りたいと思っていた小生は早速これを速読で読み始めた。しかし、歯が立たない。内容が難しくてとても速読で読めるものではないのだ。作者のフルトヴェングラーの文章が悪いのか、それともドイツ語の翻訳が悪いのか、読者である小生の頭が悪すぎるのか、日本語になっていない文章のようで速読では全然理解できないのである。ここは一旦速読で読むことは止めて、じっくり読みなおしてから彼の名演奏、とくにベートーベンの第九交響曲のことと一緒に独立したスレッドを立てて取り上げたいと思っている。
 その次はバレリーのヴァリエテについても書きたい。彼が言う「ヨーロッパ、精神の危機」もこのあと取り上げたら面白そうだ。こうした掘り出し物が見つけられたことは幸いだった。世に古本屋がある限り良い本はまだ生き残れる。古本屋の店頭では並べられても長い間売れなくて、表紙の紙がすり切れるほど古くなるかもしれない。しかし、いつか誰か買手が現れると信じて待ち続ける。彼らの努力が文化の根底を支え続けているのだ。
by Weltgeist | 2011-09-08 22:17


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